第1話 神面接

「というわけで、こっちの世界に移ってほしいんだけど、いい?」


 長々と理不尽な内容の、非常に明瞭な説明があった後、神を名乗るその少女は訊いてきた。拒否権はあるのか。


「あるよ。じゃないと、わざわざこんな場を設けたりしない」


 なんと、頭で考えたことが聞こえてしまっているみたいですね。恥ずかしい。


「悪いね。神同士なら聞かせた方が悪いのが普通なんだ」


 僕はただの人間ですが。


「異世界転移するともなれば多少は神性が付くだろうし、そもそも神格と対面することは神格化ルートの一つだからな。もうすでに君は少しばかり人間から外れている。でなければ、思念を飛ばすこともないだろうさ」


 じゃあ、そちらの世界に転生した妻も?


「まだ待たせているがね。でもまぁ、何かしら得るものがあるだろう。こちらとしてもそれを目的にしているわけだし」


 目的?


「言ってみれば、神の仕事なんてものは世界創って魂の栽培なわけだよ。で、転生ってのは他の畑で採れた種を持ってくるわけで、それ自体よく育つし、畑も肥沃になるしで万々歳」


 つまり、そちらの世界が豊かになるように協力しろ、というわけですか。


「そゆこと。ま、強制はできないけどね。見返りは用意してあげるけど」


 それは?


「何でもいいよ。ボクが用意できるものなら」


 転移後もお話しできる機会はありますか?


「んー、こうしてボクが話すのは珍しいだろうね。だからまぁ、代理を傍に置いておくつもり」


 代理ですか。


「そ、君と、君の転生した奥さんをサポートさせるつもりだ。その代わり、こちらのお願いも聞いてほしいって魂胆なわけだが」


 では、言伝などあれば、その方にお願いすればよいのですね。


「そだね」


 わかりました。では、妻の許に送ってもらってもいいですか?


「おや、もう質問はいいのかい?」


 ええ、まぁ、ひとまずは。

 早く、妻に会いたいですし。


「なるほど、それは待たせてすまなかった」


 いえ、詳細に説明いただきありがとうございました。


「ふむ、まぁ、お礼はいいが、ボクはちゃんと説明したからね」

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