第7話 ハーレム勇者 お姫様のお願い

 とりあえず、町に戻ったサイトウたち。重体の騎士は病院へ入院させて、一行は町で一番のホテルへ宿泊することにした。マルガリータ姫の依頼は一応、冒険者ギルドに届けてある。事が事だけに、多くの冒険者の協力が必要と思われたからだ。

 しかし、相手が伝説級の化け物であるリッチと聞くと、この町にいる冒険者たちでは荷が重すぎた。誰もが興味をもつが引き受けるなどという命知らずはだれもいなかった。

 トントン……。

 サイトウがベッドで横になって休んでいると、部屋の扉をノックがする音がした。部屋はサイトウが1人部屋。ジャスティとルミイが2人部屋。公女マルガリータが一人部屋でエルフのジゼルも一人だ。

全員、サイトウがお金を出している。町で一番高いホテルだから、サイトウが遠慮する女の子たちを説得し、費用はサイトウ持ちで宿泊しているのだ。

 一人金貨1枚の宿泊費も初期設定で十分なお金を持っているサイトウなら、せいぜい500円程度の感覚だ。

「どうぞ、鍵は開いているよ」

 2回目のノックの最中にサイトウは答えた。その声に応じてドアがゆっくりと開く。

「あれ、マルガリータ姫じゃないですか」

「しっ……。静かにするのじゃ」

 そうマルガリータは人差し指を自分の口につけた仕草でサイトウを制した。マルガリータの格好は、透けるような薄いネグリジェを着ただけの姿。恐ろしいことに下着は何も付けていない。薄いドレス越しにその白い裸体が見える。

「ひ、ひめさま……その格好は……」

「黙るのじゃ……」

 そう言ってマルガリータ姫は、サイトウのベッドに上がり込む。驚くサイトウの手を取ると自分の胸にそれを押し付ける。ジャスティほど大きくないが、まだ発育途上のぽにゅが両手に伝わる。

「勇者サイトウよ……どうか、わたくしの依頼を受けておくれ。城へ行ってリッチを倒し、公国を再興しておくれ」

「そ、それは……」

 一応、サイトウは考えると言ってこの依頼を保留にしている。ギルドの指定した難易度は最高等級に認定された。報酬についても、公国解放後に応談ということだから、公国を救えば莫大な報酬は期待できるが、一度はリッチに滅ぼされた小国だ。

そう考えると報酬については期待したほど得られないリスクもある。そしてリッチの手下であろう強いモンスターを倒す必要があることを考えると、普通の冒険者レベルでなんとかできるものでもない。

(マルガリータちゃん、俺ならたぶん簡単にできますよ~。たぶん、この世界じゃ俺しかできないですよ~。あなたを救えるのは俺だけ~)

 そんなことを心の中でアピールしていたサイトウ。リッチ退治については、サイトウは自信があった。これはサイトウにとっては楽勝だと思われるクエストである。

喩えるなら、一度クリアしてレベルカンスト状態で、2週目の中ボス退治イベントのようなものだ。

 ただ、仲間のジャスティとルミィが一緒に行くかどうかは気になった。まだ、駆け出しの冒険者レベルの彼女らが行くのは危ないと思ったからだ。冷静なエルフの少女ジゼルはたぶん行かない言うだろうが。

 だから、最終的に引き受けるつもりだったが、一応、よく考えたふりをしてからと思った程度で保留にしたが、この公国再興に燃えるお姫様としては、不安になったのだろう。その結果、このような格好で迫ってきたわけだ。

「のう……お主よ。その力をわたくしに使ってたもれ。お願いじゃ……確かに報酬は期待できないかもしれない。リッチに財産を全て奪われてしまったからじゃ。だから、今、わたくしがお主に与えられるのは、わたくし自身だけじゃ」

「え……お姫さま……マルガリータ姫さま……」

「お願いじゃ……公国を救ってくれたのならわたくしはお主の妻になろう」

「つ……妻~っ!?」

「わたくしを妻にすれば、お主は王となるのじゃ」

「お、王~っ」

「王になれば何でも手に入るぞよ。金も女もじゃ。わたくしは寛大だから、お主が側室を何人もとうが許すぞえ」

「いや、でも……」

「据え膳を食わぬのは、勇者じゃないと思うのじゃ」

 サイトウはどうしていいのか分からなくなった。そもそも、女の子の方から結婚してくれと言ってきたことは今までにない。マルガリータ姫は可愛い。こんな可愛い娘から求婚されて、断る勇気がサイトウにはなかった。

「わ、わかったよ、マルガリータ姫」

「では約束じゃぞ。約束の代わりに……」

 そっと目を閉じたマルガリータ姫。その初々しさに抗うことができない元31歳のおっさんサイトウであった。

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