罰点淘汰

いつみきとてか

第1話 罰点

 努力ができない人間がいる。それが仮に私だったとして何事にも価値ややる気を見いだせず刹那的な快楽や脊髄反射のような発言に依存し生きている。

 そんな人間がもし生き続けるとどうなるのか。至極簡単な結論に至る。

 どこかで躓いて死ぬのだ。冒険も努力もなく生きた人間は死ぬ。

 社会のうねりに飲まれたり、人間関係に嫌気がさしてしまったりして命を手放すことに躊躇いを覚えつつも死ぬ。生命的に命を絶ったり人間的に思考を閉ざし流動的に訪れるタイミングに身を任せる。

 人は死ぬためには三つのアンカーを外さなければならない。

 一つは欲求、あそこまでは生きる。あれが欲しいからそれを購入してから買う。

他のアンカーに比べて比較的外れやすいアンカーだが、一番外れてからまたしがみつくまでの復帰が早いものでもある。

 二つは恐怖、死ぬ怖さがこの二つ目にあたる。手首を切ること睡眠薬を多量に服用すること、高所から飛び降りること。

 痛いのや、つらいのは誰だって嫌悪する。できればそんなことはしたくないとふつうであるならば思う。一番外れにくいアンカーだと私は思う。

 最後に人間関係のしがらみ。これはこれまでにその人がどれだけの人間にかかわってきたかに依存するため個人差が一番でるアンカーでもある。父、母、兄、姉、妹、弟、祖母、祖父。親友。親戚。

 自らかかわってきた人間がアンカーに代わってしまう。

 個人的に私はこのアンカーが一番力が強かったりもする。

そして、外れたアンカーを見つめては醜く醜悪にのたうち回り来世だなんだと喚き散らして死ぬ。

 こんな人生を歩むのだ。

熱中したこともない人間は馬鹿だ。熱中もできないで苦労も疲労も忘れられるものか。

挫折しないものは大人の社会では生きられない。壁に当たった時の対応法が確立できないままでどうするのだ。お前の横に仲間もいなければ助けてくれるものなど一切いないぞ。

 人は一人じゃ生きられないと語るものがいる。確かにそうだと感化されるのもいいが現実問題。人は一人だ。生まれた時も一人で泣き一人で喚いている。誰一人も泣いている理由も知らなければ知ろうともしない。

 毛と革と爪によって梱包される心の中には誰も立ち入れない。

 父がお前のやさしさを理解できたことがあるだろうか?

 母がお前の気持ちを理解できたことがあるだろうか?

本当の一人はそれらのことを知りえたお前のことを、私のことを言う。

未来を考えると不安になるか?

子供の頃の正義感を持ち続けてはいないか?

誰かに甘やかされてはいないか?

それらのレ点のチェックシートがお前と私の罰点の数である。



 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

罰点淘汰 いつみきとてか @Itumiki_toteka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る