三十二曲目:Van Halen『Push Comes To Shove』

 エディ・ヴァン・ヘイレンの訃報からしばらくたち、ようやく私も立ち直ってきました。正直なところニュースを聞いてから数日間は失意の底にあって、とても明るく振る舞える精神状態にはありませんでした。

 私は彼らのアルバムを『A Different Kind Of Truth』以外全て揃えているので、少し調子が回復してきてからはひたすら彼らの作品群を聴き込みました。ファーストアルバム『炎の導火線』から『ヴァン・ヘイレンⅢ』まで、三回はリピートするという、そこそこに狂ったことをしていたわけです。

 それで、アルバムとしては最終的に『Fair Warning』に落ち着きました。私のベストは『Fair Warning』です。

 格好良く刻むギターのイントロからミドルテンポでノリ良く始まるどこかブラックミュージックの要素もわずかに含んだ『Mean Street』から、少し浮遊した雰囲気のギターソロと中盤のライブさながらの煽りが楽しい『“Dirty Movies"』、アップテンポで攻め立ててくる王道アメリカンハードロックサウンドでエディお得意のギターソロもキマる『Sinner's Swing!』、一転して柔らかいギターサウンドからスタートするどこか英国のような湿っぽさも持った『Hear About It Later』、と頭から尻まで非の打ちどころがないです。

 ……まあ、エディにばかり焦点を当ててDavid Lee Rothの漢臭いヴォーカルやMichael AnthonyのブリブリのベースやAlexの安定したドラムに言及していないのはさておいて。

 そんな中で、私が最も気に入っている曲はといえば『Push Comes To Shove』ですね。これは本当に良いです。

 この楽曲は彼らの中でも最も“黒い”楽曲です。このご時世でこんな言い方をするのもあまりよろしくないかもしれませんが、あえて言わせていただきます。この楽曲には“黒人のソウル”が宿っている。

 ベースラインが際立ったイントロ、そこからゆっくりと入ってくるしっとりとしたギター、湿っぽい歌い方のヴォーカル……とにかくファンキーでソウルフル、彼らの楽曲ではかなりの異色作です。

 中盤から後半のギターこそ白人のロックのノリがありますが、それ以外は完全にR&Bやファンクのノリです。本物と比べれば確かに“白い”サウンドではあるのですが、アルバムを通して聞くとこの曲はまるで黒人のミュージシャンが演奏しているように聞こえる。そのぐらいソウルフルで、独特な雰囲気を醸し出しています。

 彼らの代表曲である『Jump』『Panama』『You Really Got Me』『Runnin' With The Devil』『Eruption』などの派手さや煌びやかさはありません。そこにあるのはひたすらに泥臭くて情熱的な魂の音です。

 時代を塗り替える革新的なサウンドを世に放った伝説的バンドによるR&B、ファンクの再解釈的一曲、是非一度聴いてみてください。












 ちなみに私のVan Halen名曲十選はこんな感じ。

・Push Comes To Shove

・Eruption

・Runnin' With The Devil

・Hot For Teacher

・You Really Got Me

・(Oh) Pretty Woman

・Jump

・Mean Street

・Spanish Fly

・Not Enough










Eddie Van Halenのご冥福をお祈りいたします。素晴らしい音楽をありがとう。


I Really love you, Eddie!!!

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