二十五曲目:Metallica『St. Anger』

 この曲名を聞いて悪感情を抱く人は、恐らく生粋のスラッシャーでしょう。私にはわかります。私も半年前まではスラッシャーでしたから。

 ……なんて、適当な書き出しで初めてみましたが、実際の所当たらずとも遠からずなのではないでしょうか。ネット上での評判を見ているとそんな気がしてきます。

 実を言うと、ほんの一月前まではこの曲について書く事になるとは思いもしませんでした。私自身、Metallicaはファーストの『Kill 'Em All』からサードの『Master Of Puppets』まで、十歩譲ってフォースの『…And Justice For All』とフィフスの『Metallica』も認める、といった具合で、それ以降の『Load』『ReLoad』『St. Anger』は大嫌いでしたから。

 まだ『Load』は聴けなくもなかったのですが、『ReLoad』は本当にひどかったですね。一曲目の『Fuel』の冒頭、ジェームズの「ギミギューギミギャーギミダヴザリ゛ア゛ーヴッ」でもう駄目でした。一回目はそれでも頑張って途中まで聞いたのですが、腑抜けたロック調の捨て曲ばかり、正真正銘の駄作でしたね。これに関しては擁護のしようもありません。

 『St. Anger』はそれに次いで嫌いなアルバムで、最初に聞いた時は兎に角スネアが五月蝿くてたまりませんでした。どうしてこんなにも耳障りなミックスにしてしまったのかと本気で考えたぐらいです。

 ……だったのですが、先日気まぐれで聞きなおして、ハマりました。それはもう見事に。

 まず一曲目の『Frantic』のイントロ、ザクザクしたギターフレーズのねちっこい絡みあいと強烈なドラムから一気に引きずり込まれ、『Keep Searching, Keep On Searching……』の部分で一瞬のクールダウン、からの『Frantic, Tick, Tick, Tick, Tick, Tick, Tock!』での爆発でノックアウト。続くタイトル曲『St.Anger』はシステム・オブ・ア・ダウンを彷彿とさせる複雑な曲展開で魅了してくるし、その後もとにかくヘヴィでアグレッシブな楽曲で埋め尽くされておりで、もうヤミツキです。

 個人的には二曲目の『St. Anger』が一番好みですね。やはりイントロのじわじわと盛り上がっていくような入り方、そこから一気にクールダウンしてのジェームズの『Saint Anger Round My Neck……』というメロディアスなヴォーカル、続く『Fuck It All I No Regrets……』の畳みかけから『I'm Madly In Anger With You!!』の絶叫と言う一連の流れが本当に完成されている感じがします。

 初めて聞いた時はスラッシュメタル時代のMetallicaばかり聴いていて固定観念がありましたから、この音が受け入れられなかったのだと思います。ですが、一度距離をとった後に聞き直してみると、時代に流されたこの頃のMetallicaの三枚の中では一番完成度が高く、暗黒時代(一般的には、ですが)のMetallicaの象徴として中々優れたアルバムだと感じます。

 今回はここまで。

 世界中で人気のメタルバンド、その暗黒期とされている時代の象徴的な一曲、ぜひ一度聞いてみてほしいです。


















 ちなみに私のMetallica名曲十選はこんな感じ。

・Phantom Lord

・One

・Creeping Death

・Hit The Lights

・No Remorse

・Master Of Puppets

・Battery

・St. Anger

・Enter Sandman

・Fade To Black

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