十八曲目:Treow『Drain』
新譜が出た影響か、MARETU氏の『しう』の記事の伸びが半端ないですね。これまでの十七曲で、二番目に伸びているレッチリの『True Men~』に倍以上の差をつけて伸びてますよ。すごいなあ。
……とはいっても、今回はMARETU氏の楽曲ではないのですが。ただ、知った経緯はMARETU氏が絡んで来たり。
今回紹介するのは、ボーカロイドプロデューサーの一人、Treow氏の楽曲『Drain』です。
この曲、最初に聞いた時はまさか十年も前のだとは思っていなくて、一聴後に投稿日時を見て目を剥きました。
仕上がりがその頃とは思えないほどに素晴らしいのです。それこそ、2019年の曲だよと言われても信じてしまうでしょう。
曲の全体的な雰囲気でいえば、簡単に言えばUnderworld meets Portisheadと言った感じでしょうか。もしくは、単純にMassive Attackと言ってしまってもいいかもしれません。
この楽曲に出会ったきっかけは、MARETU氏の新曲『マジカルドクター』についていた【感性の反乱β】と言うタグの大百科でした。そこに関連楽曲として張り付けられていたのを見て、気になって聴いたのです。
……いやはや、大当たりでしたね。ここまで私の趣味ど真ん中の楽曲があったとは。
さて、与太話はこの辺にして、楽曲の解説を。
かなり落ち着いたピアノとヴォーカルから入り、胸を締め付ける様な切ないメロディが奏でられるのですが、ここで入るレコードのノイズの様な音がまた雰囲気を作っていて良い。
一瞬ヴォーカルがバグを起こしたかのようになった後、ほんの少しビートが入り、ブレイク、そしてそこから爆音のビート。カッコいいです。
MVも中々個性的で、サイケデリックと言ってしまえばそれまでなのでしょうが、ただ幻覚の様であるというだけでなく、どこか神秘性も持ち合わせており、楽曲の独特な雰囲気――世俗的なビートにどこか神秘的なメロディ、そこに幾ばくかの狂気を孕んだ歌詞――にあっています。
これしかない、とこちらに思わせる、説得力があるのです。
そしてこの楽曲、三分ほどたったところで雰囲気が変わって、抑え込んでいた狂気が外にぶちまけられたように、ビートが一段とヘヴィになります。ここもカッコいい。
歌詞も『君✠*アイ❅×☩たい』『僕✠*コロ❅×☩て』とかなり危ない方向に振りきれ、これの絶叫じみた声がまたえげつない。一回目の絶叫の直後、メロディが不安定になってくるのもまた狂った雰囲気を醸し出しています。
間奏部分は、圧巻の一言。かなりの重圧で、こちらの鼓膜を蹂躙してきます。MVが楽曲に反して繊細なのも、奇妙な調和を生んでいて、これがまた良いです。
そして、二度目の絶叫の後、楽曲は本格的に壊れていきます。ビートは苛烈を極め、ノイズが走り、メロディも段々調子外れになって……。
最終的に、『抜け落ちた言葉 ヲとシた言葉』と言う歌詞と共に、単音の行き急いだようなメロディと共にあっけない幕切れ。すごく奇妙で、神秘的で、しかし不気味な終わり方です。
正直、この楽曲はかなり人を選びます。多分四分の一ぐらいは脱落するのではないでしょうか。飽くまで憶測ですので、全員平気と言う可能性も大いにありますが……。
何にせよ、聞くときは気を付けた方がよいかもしれません。私自身、中学時代に聞いていたら『なにこれ』で終わっていたでしょうから。
楽曲の雰囲気の説明で上げたUnderworldやPortishead、Massive Attackが好きな方は、恐らく(気に入るかどうかは別として)普通に聞けるかとは思います。
……ではこの辺で筆をおかせていただきましょう。
神秘性と狂気に彩られた幻想的で奇妙な世界を持つ名曲。ぜひ一度聞いてみてほしいです。
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