WHITE ALBUM

とめちり

第1話 note

マウスをカチカチとクリックしながら、最近開設されたばかりの音楽専門のSNS "chord"《コード》に自分で作詞・作曲した楽曲をアップしていく。


そのchordの中では、エビチリという名前で投稿を続けている。エビチリが特別好きって訳でもなく、名前を考えるのが面倒で、飼っている猫の名前をそのまま使っただけだ。猫にエビチリって名前をつけるなんて、なんてセンスがないんだとか、反論は受け付けないし、何度も言うがエビチリが特別好きな訳ではない。何となく語感が可愛いい感じがして、それにいくつか候補の名前を呼んだ時に、一番反応を示したのが、このエビチリだったからだ。


ほかの候補は?だって?中華料理が多かったのは言うまでもない。言っておくが中華料理はまぁまぁ好きだが、ラーメンとかチャーハンとか、それを選ぶほど、センスは腐ってはないと思っている。うん、例えエビチリという名前をつけたとしてもだ!ちなみにカニタマも最終候補に挙がっていた、二匹目を飼うことがあるなら多分....


さてこの物語の主人公「奏多奏かなたかなで」は、ミュージシャンを夢見る大学生、と言っても飯が食えないと困るからという理由で音楽のみに命をかけるほど、過信はしていない。保険として唯一人並み以上と友人にも褒められる絵を武器に、美大に通っていた。


絵が上手って言っても、これも音楽と一緒でどうやって生計を立てていけるんだろうな...と将来に不安を覚えつつ今日も課題の背景画をキャンバスに描いていく。


「ニュースの時間です。」なんとなくつけていたTVからニュースが流れ始める。「本日未明、N市の河川から男性の遺体が発見されました。男性の身元は....」


「おいおい、ここから結構近いな」


TVを見ていると見たことのある景色が映り、何となく今キャンバスに描いている背景と見比べてみる。

「まさか....な」


猫のエビチリが目を細めながら、僕の描いているキャンパスの方をジッと見ていた。


「引っ掻くのだけは勘弁してくれよ!」キャンバスに白い布をかけて、TVを見ながら昼食を取ることにした。



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