第17話 スライム退治(2)
スライムを十七匹退治した。体感的にレベルは4を越えている。
けれど、
「……2?」
魔導書に刻まれた数字は紛れもない「2」という数字で、ユイは両目を瞬かせた。
『基本ステータス
レベル:2
体力:9
魔力:189
攻撃力:15(+8)
防御力:5
知力:10
運:8
所持品:鉄鋼の
「……なんで?」
その独り言に答えてくれる人間は誰一人いない。ここが草原の中央だからだ。
何度読み返しても、魔導書を上下反対にしたり、振り回してみたりしても書かれている数字は紛れもない、2。それ以上でもそれ以下でもない、2という事実。
「あれだけ頑張ったのにたったの1しか上がってないの?」
泣きたくなった。スライムを十七匹も倒したのにステータスがあまり向上していない現実に。
しかし、悲しんでばかりはいられない。今日中にレベルを5まであげなければならない。レベルを上げて、調理系スキルを手に入れて一ヶ月後は娼婦デビューではなくコックデビュー。
ユイが考えた道筋を正しく辿るにはどうにかしなければ、このままだと娼婦デビューは免れない。
唸りながら魔導書を睨み付けているとスキル欄のページに新たな文章が綴られているのに気付く。
「スキルが増えてる?」
従来の二つのスキルの他にもう一つ、スキルが加わっていた。思わぬ恩恵に期待を膨らませる。
『【スライムハンター〈C〉】
習得方法:スライム十体、討伐する
必要レベル:1
必要魔力:−
効果:スライムを討伐した際の経験値が通常の1.2倍になる』
その期待は無惨にも砕け散った。
あってもなくてもいい、微妙なスキルだ。経験値が1.2倍になるからなんだというのだろうか。もう少しキリがいい数字なら嬉しいのに、なぜに1.2倍なのだろうか。そこは2倍でいいだろう。
魔導書を閉じるとユイは肺の中の空気を空っぽにする勢いで深く息を吐き出した。
「……スライム以外にも挑んでみようかな」
アスリア草原にはスライム以外に緑色の肌を持つ小人やタランチュラのような蜘蛛型モンスターも存在していた。小人は人間に見た目が少し似ているので退治するのは気が引けるが蜘蛛など虫に似た魔物なら叩き潰しても良心は痛まない。スライムよりもそれらを退治した方が貰える経験値は多く、レベル上げの効率はいいはずだ。
そろそろスライムから鞍替えしてみようかと考え——やめた。
スライム退治のコツは掴んだがそれでも退治するまでけっこうな時間をかけてしまう。それなのに他の、弱点も分からない魔物を退治するのはメリットよりもデメリットの方が大きい。
「もう少し、スライム退治してからだな」
せめてレベルが3になるまでスライム一本で頑張ろうと誓った。
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