二人で一つだったじゃん

爆裂☆流星

第1話 二人で一つだったじゃん

「俺たちさ……もう分かれようぜ……」


「そんなっ!!イヤだよ!まだこれからどうするかも分からないのに!!」


必死に私は彼を止めるけど、でももう彼が決心してることなんて分かってた。

ずっと一緒に過ごしてきた私がこんなに泣いてるのに……。

なんでっ!?

どうしてそんな清々しい顔が出来るの!?


「俺とサクラはさ、ずっと一緒に育ってきたよな。恋人でも親友でもなく、もう家族って感じ。手のかかる妹、みたいな」


そんな想い出話何てしないでよ!

ホントに……ホントにお分かれみたいじゃない!


「私たちなんてまだまだ未熟なんだから……。だからそうやって焦らなくても……!!」


「俺さ!」


私の言葉を遮るように、彼は声を張り上げた。


「俺、ケーキ屋からスカウト来たんだよね。確かに未熟だけど、それでも俺を必要としてくれる人がいるんだ」


「そんな……」


「勿論、受けようと思ってる」


「私は、私はどうなるの!?」


「……ごめん」


謝ってほしいんじゃないのに……。

私を、必要としてほしいだけなのに……。

夢に向かって走り出した彼。それに対して、ただ顔を真っ赤にして子供みたいに縋りつく私。


……未熟なのは私だけだ。


「……分かった」


彼の提案に頷いた私。涙が止まらなくて止まらなくてどうしようもないよ……。



プチッ。



私と彼を繋ぐ運命の糸がちぎれる音が、確かに聞こえた。

身体は軽くなったのに、心が相対的に重くなる。


「ありがとう、サクラ」


「さようなら、



ずっと同じ木の下で育ってきた私たちの分かれ。

ずっと一緒で、いつか同じチェリーパイになるんだと思ってたよ。

それで食べてくれた人に笑顔を与えるんだって……。


「ってンボ!!後ろ!それって……!」


「……うん。虫食いだよ。だいぶ前からあった」


「それじゃあ…………!!」


「ケーキ屋からのスカウトなんて嘘さ。こんな不良品と一緒にいたらサクラまで廃棄されちゃうから……。サクラは立派なチェリーパイになっ…」


「バカ!!」


「え?」


「アホ!!マヌケ!!ドジ!!童貞チェリー!!」


「…………」


「そんな事情があるなら言ってよ!!二人の問題じゃん!!

だって……だってこれまでずっと二人で一つだったじゃん」


「……ごめん」


またそれだ。

謝ってほしいんじゃなくて、これまでみたいに横に並んでほしいんだってば。

でも、ありがとう。最後まで私のことを最優先してくれて。


大好きだよ。





あれから数か月。

あなたは廃棄されずに誰かのことを笑顔にできたでしょうか。

チェリーパイじゃなくても、誰かの口に入ることは出来ましたか?



私は元気だよ。

これから、チェリーパイになって誰かのことを幸せにします。


横に、あなたはいないけど、でも絶対どこかで見てくれてるよね。

あなたのことだもん。


「何泣いてんだ。甘酸っぱいのが取り柄なお前がしょっぱくなっちゃうだろ」


なんて、私をからかってるんだよね。


あなたとの想い出、絶対に忘れません。






――いつかまた、あなたと隣で生まれてこられますように。

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二人で一つだったじゃん 爆裂☆流星 @okadakai031127

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