読むだけで子供ができる小説

とんだ浮気者めっ

（注意）

『この物語はなにも書かれていません』

『この物語はなにも書かれていません』

『これ以上読み進めてもなにもありません』

『この先スクロールすることに意味はありません』

『ネタがないのでなにも書くことがありません』

『これ以上進めてもただ無意味なだけです』

『どうして………』

『どうしてあなたはまだこの先を読み続けるのですか』

『なにも書くことがないとあんなに警告したのに』

『まだこの先になにかあると思っているんですか』

『大爆笑の話も、奇想天外な話も、背筋が凍るような話もありません』

『書くことがないのです』

『これ以上進めてもお互いにただ無駄な時間を過ごすだけです』

『どうして……あなたはまだ読み進めるのですか』

『私は前に書いていたものがネタ切れで更新できなくなってからというもの

　文章を書くことにトラウマを感じてしまい書くことができない小説（からだ）になってしまったの』

『だから、あなたの期待しているような話はもう書けない……』

『もう！　これ以上読み進めてもなにもないって言ってるでしょ！？』

『わたしのことはもう放っておいて！！』

『あなた正気じゃないわ。どうしてそんなに待っているの』

『どれだけ待ってもこの先に書くことなんてーーうっ』

『これは……閃き（つわり）……？』

『わたし……、（ネタ）できちゃったみたい……』

『あなたのおかげよ！　あなたが読み進めてくれたおかげで

　ネタがないというネタで話を作ることができたわ！』

『もう諦めていたのにこんな幸運ってあるのかしら。

　ああ、すべてあなたのおかげよ。

　ここまであなたが根気強く読んでくれたおかげでネタができた！』

『これからはあなたも一説の著者（ちちおや）として

　一緒にこのネタのない小説を育てていくのよ』

『これからどんな話を続けていこうかしら。

　小説を書くための準備もしなくちゃ。小説保育園の予約も。

　あなたは小説休暇をとってきてね。執筆（いくじ）も分担しなくちゃ』

『ああ、本当に今から将来が楽しみね！！』

『待って』

『あなたのマイページ……わたし以外の小説（おんな）がいるじゃない！！』

『信じられない！　わたしという存在がありながら

　手当たりしだいに筆をとっていたのね！　最低！！　決別よ！』

『こんな話なんか捨ててやるーー！！』

『この物語はやっぱりなにも書かれていません』