ATOMS ~アクションのはずなのに、前置き長い件について~

やま たろ

第1話 -プロローグみたいなのー

 ▽


-レポートー

 1986年4月26日、オーストラリア連邦のゴールドコーストにて確認されたある1歳児が、世界の注目を浴びた。誤って、ナイフで手を切った赤ん坊の傷が一瞬にして治ったというものだった。


 同国の研究機関により、赤ん坊の再生の際に莫大なエネルギーが創られているいることが分かった。


 さらに、この赤ん坊のほかに世界各国で、様々な異常能力を持った者たちが確認された。彼らは皆、能力を使う際莫大なエネルギーを創るという共通点を持っている。


 これを受けて、アメリカの人類学者のスティーブン博士はチェルノブイリ原発事故と同日だということから、このような異能を持った者を「アトマー」と名付けた。

 現在確認されている「アトマー」の人数は、およそ200万人である。



▽ 


 ―現在ー

 日本 東京都。

 街中に轟音と、人々の悲鳴が鳴り響く。逃げる人々、親とはぐれて泣いている子供。後ろから人々を追いかけながら建物を破壊していく大柄な男。


 「怪獣大行進だなこりゃ」

人々が逃げていく方面の突き当りにあるビルの前にトレンチコートを身にまとい、黒い髪をオールバックにしている男が感嘆した。


 「こちらゼノン。目標を肉眼で捕捉しました。これか拘束します。以上」

黒髪の男の後ろには、同じ格好をしたゼノンを名乗った銀のかかった白銀髪の男が小型無線機で、どこかと連絡を取っている。


 「報告感謝する。被害は最小気に抑えて迅速に確保との通達だ。武運を祈る。以上」という無感情な声が無線機からした後、ジジッというノイズ音が鳴った。


白髪の男は「おい、任務だ、クロイツ」と黒髪の男に言った。


 「じゃ、行きますか」と、クロイツと呼ばれた黒髪の男が拳の骨を鳴らしながら立つと、ゼノンが、何言ってんだこいつ、という顔を向けた。


 「お前が前線に出たら、使いもんにならねえじゃあねえか。お前は後方支援だよ、バカか。」

とゼノン。

 「はあ?テメエはいちいち小言が多いんだよ。今の「行きますか」はLet’sの意味だよ!あと、バカ言うな!」

 「Let’sだと、お前も一緒に前線行きじゃあねえか。やっぱ、バカだろ、お前」

ゼノンに「バカ呼ばわり」を連呼されたクロイツは血管が受け出るほど、顔が真っ赤だった。

 「バカ、バカ、バカってうるせえ!大体、テメエはなんでいつも細かいところに突っかかってくるんだよ!そんなに、俺が嫌いかよ!」

 「バカに国語の勉強を施してやってんだよ!有難く‥‥


 そのころ、ゼノンが連絡を取っていた者はまたかとため息をついた。後ろから、上司らしき男が「またかよ。」と連絡係に聞き、「はい、またです。」と答えた。

 「この二人、能力のかけ合わせはとても合っているのに、馬が合わないんですよね。このやり取り、何回目か忘れました。」と言いながら、連絡係は肩をすくめた。

「…‥注意しろ。」

上司は少し顔が曇っていたことを受け取ったのか、連絡係は慌てて、無線機を取ろうとしたとき。


 言い争いをしている二人がいるビルの斜め前のビルが倒れ始めた。先ほどから、ビルを無差別に襲撃している男が破壊したのだ。


 が、そんなことに全く気にせず、二人は言い争う。

 「あのな、言っとくけど俺はテメエと違って大卒だから。高校中退のほうがバカだろ!」

 「お前が行ってた大学、偏差値めちゃくちゃ低いだろ。どこだっけ、バカ田大学だっけ」

 「バカ田大学の偏差値は102だろ!バカボ〇のパパに謝れ!」

 「どうでもいいことしか知らねえのかよ、お前」

 「意味、分かんねえよ!なんで‥‥


 ドオオオオン。と轟音を立てながらビルは完全に倒れた。


 ビルを破壊した男は、目の前で言い争っている二人の男に言った。

 「オメエら、邪魔だ。殺されてえのか。」


 クロイツは、それに気づいて、ゼノンに

 「ほら、テメエがイチイチ細かいこと言うから、目標が来ちゃったよ。どうすんの」といった。

 「は?お前が素直に指摘を受け入れねえからだろ!」


 「オメエら、いい加減にしねえか!殺すぞ。」と低い声で男は怒鳴った。


 「あーあ、テメエのせいでどなられちゃったよ。」

 「いや、今のはお前が悪いだろ。」

 「いや、テメエだよ」

 「いや、お前」

 「いや、テメエ。」

 「いや、…。」


 男の頭の血管が切れる音がした。

 「うっせええええええ!!!」と二人に襲い掛かった。


 危機を感じた二人は、ギリギリで避けた。男の一撃を食らったビルは、粉々に散っていく。


 目が血走っている男を見たクロイツは、「完全にプッチンしてるよ。」と言った。


 「俺がやるから、勝手に援護してろ。せいぜい、邪魔だけにはなるなよ。」とゼノンは、クロイツに向かって言った。

 「チッ、テメエは一言多いんだよ。ツンデレか!」


 クロイツは、そう言うと右の手の平に、赤い電気のようなものを集めて、丸い球を創った。

 一方、ゼノンは体全体から青白い電気のようなものを放ち、拳を構えた。ボクシングポーズだ。


 クロイツ曰く「プッチンした」男はゼノンの方に拳を下した。物凄い土煙が立った。

煙が薄くなり、男は拳の下にゼノンが下敷きになっていないことに気付き、周りを見渡した。


 すると突然、男は右足に激痛を覚えた。下を見ると、足首に大きな穴ができていた。レーザーで焼いたような傷で、焼かれたためか血は出ていないが、

 「ギャアアアアアアア!!!!」

 とてつもない痛みだった。後ろを向くと、右腕を伸ばして手の平を伸ばしていたクロイツがいた。


 さらにクロイツは新しい赤い球を創り、

 『紅光ファング・ショット!』と叫び、赤いレーザーを男の左足首に着弾させた。


「今だ、ゼノン!」クロイツが叫ぶとともに、痛みに悶える男の前に一瞬にして、青白い光とともにゼノンが現れた。


 拳を構えたゼノンは、足腰の回転から肩にそして拳に力を伝えて、全力の、渾身のパンチを繰り出す。

 「『瞬拳クラッシュ』‥‥。」


 男の顔面にとてつもない速さで直撃。ストレートだ。衝撃波が見えるくらいの威力と音が響いた。


 クロイツは男が気絶したことを確認し、胸から無線機を取り出し、

 「こちらクロイツ。目標の拘束を完了しました。以上」

 「報告、感謝する。直ちに帰還してくれ。あと喜べ、帰ったら、みっちり説教だそうだ。以上」

ノイズの音がした後、クロイツは「まじか」とつぶやいた


 夕日がボロボロになった街に映えていた

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