Dear -another-

槻坂凪桜

第1話

「新進気鋭の二刀流」と謳われた伝説のギタリスト・『Red Lily』が、三味線一族・九十九つくも家跡取りの璃梨りりと同一人物だと知ったのは、二年前…とある雑誌に掲載された特集記事を見た時だった。

『璃梨に迫る!』と掲げられたフォントの下に写っていたのは、白百合の振袖を纏った、目付きの鋭い少女。


『記者(以下、記)「璃梨さん、全国優勝おめでとうございます!三連覇ですね!」

璃梨(以下、璃)「有難うございます」

記「では早速、幾つか質問して行きたいと思います。『璃梨』って素敵な名前ですが、由来は何ですか?」

璃「この名前は、英語の『Lily』…私の誕生花の白百合から来てるんです。私の振袖にも描いて貰ってて、とても思い入れのある大好きな花です」…』




 それから一年が経った、初夏の近付いた雨の日。「ヤンキーの溜まり場」と恐れられる校舎裏で。

 

 案内してくれた不良達が「姐さん、客人です」と声を掛ければ、傘もささずに座り込む少女はゆっくりとその頭を上げる。



「俺達の仲間にならないか?」


「…んだよ、あたしに何の用だ」



 真っ赤に塗った口紅にポニーテール、そして俺を睨みつける鋭い双眸。






 それが、俺と璃梨…本名・九十九べにの出会いだった。

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