第35話 MUSIC WAVE
『こんにちは。今日のMUSIC WAVE、ゲストはDANGERのギタリスト、カノンさんです。はじめまして』
『こんにちは。はじめまして。カノンです』
『もう…ラジオなんでね…リスナーの皆さんにお見せできないのが残念ですが……かっ………こいいんですよ~…』
『溜めましたね(笑)』
『それぐらいカッコいいって事で。今日は短い時間ですが、最後までよろしくお願いします』
『こちらこそ、よろしくお願いします』
~CM~
『それでは改めまして…今日のゲストは、先週シングルが発売されました。DANGERのギタリスト、カノンさんです』
『どうも、こんにちは。』
『すごいですね。このCDの売れない時代に…ダウンロード数よりCDの売り上げの方がいいアーティスト、珍しいですよ』
『そうですか?ビートランドは物販に力入れてますからね』
『そうですね。CDをお買い上げいただくと…』
『もれなくオリジナルフェイスタオルがついて来るという…(笑)』
『ん~!!ビートランド!!』
『でしょう?しかも結構いいタオル(笑)』
『いいタオルでした!!私も買いました!!』
『あざーす(笑)曲の方はどうでしたか?』
『あっ、それですよ』
『本題に(笑)』
『はい、本題です(笑)今作はカノンさんの作詞作曲ですが、熱烈なラブソングですね。これは誰かを想って書かれたのですか?』
『ご想像にお任せします』
『えー?それなら勝手に、彼女に捧げた曲だと想像して話を進めますよ?』
『いいですよ(笑)』
『彼女いるんだ…ガーン…ってリスナーの声が聞こえます(笑)』
『ノーコメントで(笑)』
『(笑)ボーカルのクミさんには、どう歌って欲しいっていうリクエストをされたのですか?』
『特にリクエストはしてませんが、歌詞を読んで思ったまま歌ってくれたらいいとは言いました』
『クミさんはシャウトも交えて、かなり熱くハードに歌われてますが…その辺は納得されてますか?』
『あー、最初はサビまでをアルペジオだけの静かな展開にしようと思ってたんですが、初合わせでいきなりギターを弾き殴りながらシャウトされて『それでいこう』って』
『クミさんの解釈が通ったと(笑)』
『カッコ良かったんで(笑)』
『それではここで、その新曲を聴いていただきましょう。I'd Come For You』
~I'd Come For You~
『…はい、お聴きいただきました曲は、DANGERで『I'd Come For You』でした。』
『ご清聴ありがとうございました(笑)』
『いや~…聴き入りました(笑)新加入のガクさんのベースワークも、かなり魅力ある楽曲ですね』
『特に注文はつけなかったんですが、あいつは頭がいいから。俺が弾いてるのを横で見て、適当に絡み始めてアレンジを進めていくんですが、本当に邪魔にならないというか他の楽器を殺さないと言うか。前任も優れたベーシストでしたが、ガクは違った意味で頼もしいです』
『前任のベーシストと言えば、今は世界で大注目されてますね』
『そうですね。アルバム買ってしまいました(笑)』
『今も連絡を取り合ったり?』
『してますよ。ついこの間も帰国して泊まりに来たし(笑)』
『脱退されても友情は変わらない、いい関係なんですね』
『家族みたいなもんですから』
『家族と言えば…』
『展開が激しい(笑)』
『あっ、すみません(笑)家族と言えば、ドラムのサヤカさんが二人目を年内に出産との事で、DANGERもお休みに入られるのですか?』
『ライヴ活動などはしばらく休みますが、俺とクミとガクは曲作りやサヤカが復帰してからのライヴの構想を練ったり…』
『メンバーの皆さんはお休みされない…と。』
『え?普通はメンバーも休めるんですか?(笑)』
『ごめんなさい。知りません(笑)ではここで一旦CMです』
~CM~
『はい。今日のゲストはDANGERのギタリストカノンさんです。引き続きよろしくお願いします』
『お願いします』
『DANGERは、アメリカでもデビューされましたね』
『そうですね』
『渡米される前に出された『I'm Hormy』という曲が話題になりましたね~?』
『あー、もう放送コードギリギリって感じでしたね(笑)』
『あれは…ボーカルのクミさんの作詞ですけど、ミュージックビデオの案は誰が出されたんですか?』
『俺とサトがクミに絡んでるやつですよね(笑)案はクミが出しました。兄弟でゴロゴロ転がってるようなイメージでしたが、出来上がった物見たらエロくて(笑)撮影班、すげーな…って思いました』
『えー?撮影現場は、そうじゃなかったって事ですか?』
『エロくないですよ。DANGERのメンバー自体、小さな頃から知ってる仲なので…それこそ泊まりに行ってトランプでもしながら話してたガキの頃と同じ感じで。しいて言えば、俺とサトが上半身裸だったのが違うぐらい(笑)』
『上半身裸…クミさんが羨ましい(笑)』
『二人とも粗末な体ってダメ出しされましたけど…』
『ええ~!!あの動画、すごくいい具合の…痩せマッチョに見えましたけど』
『映像班の腕が素晴らしいんです(笑)』
『では、その映像は各自ご覧いただくとして(笑)聴いていただきましょう。I'm Hormy』
~I'm Hormy~
『聴いていただいた曲は、DANGERで『I'm Hormy』でした。いや~…新曲と違って、クミさんの声が悩ましいですね~…』
『レコーディングの時に、もっとエロく!!って、みんなで言い合いましたね(笑)』
『どんなレコーディングですか(笑)』
『コンセプト通り、エロカッコいい感じに録れたので、あの曲は本当…文句なく代表曲になりました』
『確かにカッコいいですね。クミさんは身長も高くて…ね。すごくカッコいいですね』
『そうですね…175って言ってたかな』
『カッコいい…レザーのつなぎを着てる姿は、モデルさんみたいでした』
『褒め過ぎですね。俺に言っても何も出ませんよ(笑)』
『えーっ、クミさんにちゃんと伝えてください(笑)』
『聞いてるんじゃないかな?』
『そうなんですか?クミさーん、すごくスタイルが良くて羨ましいー』
『調子に乗るでしょう(笑)』
『乗っていいんです。カノンさんも身長高いですね』
『まだ伸びてます』
『えーっ!?』
『って、ずっと言ってます』
『もー!!騙されちゃいましたよー!!』
『いや、でもビートランドって高身長の人が多くて…』
『あっ、ですよね。以前ゲストに来ていただいたF'sのアズさんも、DEEBEEのキヨさんも高身長でした』
『今やジジイ集団ですが、Deep Redなんて全員が180前後でしたからね』
『お…大御所つかまえてジジイ集団なんて…(笑)』
『いや本当。カッコいいジジイ集団ですよ。みんな、あそこを目指して牛乳飲みまくりました』
『えー!!って…もう騙されませんよ~!!』
『いや、本当に(笑)おかげでみんな骨密度高いはず(笑)』
『ほんとですか?(笑)ビートランドって、本当に縦の繋がりもですが、横の繋がりも深いってよく聞きますが…尊敬する先輩はどなたか…』
『尊敬する先輩ですか?もう全員って言っていいですね』
『では、ギタリストとして…そうですね…師と仰いでらっしゃる方とか?』
『それはSHE'S-HE'SのSさんですね。もう、あの方の指運びの美しさと言ったら…レッスンつけてもらってても、見惚れる事はしょっちゅうです』
『SHE'S-HE'Sの方のレッスンを受けてるんですか!?わ~…少しだけ、チラッと…どんな方ですか?』
『一言で言うと、いい人です(笑)』
『…ですよね~(笑)いいなあ、SHE'S-HE'Sって私達からすると、本当に存在している人達なのかって思ってしまうんですけど』
『あはは。存在してますよ』
『ミュージックビデオも、シルエットやバックショットだけでしょう?だからあれはそういう役割の人が…って色んな噂がずーっと出てますよね』
『そうですね…色んな噂が出て消えていく中、SHE'S-HE'S幻説だけは長生きしてますね(笑)』
『その他のメンバーの方にも、事務所で会われる事はあるんですか?』
『毎日会いますよ。ボーカルは俺の母ですから』
『……』
『あと、ギターのRさんは叔父だし』
『…え…ええっ?ええええー…えーと…すすすみません、私…すごく動揺してしまって…』
『あ、爆弾発言でしたか(笑)』
『それ、出していい話…なんですか?』
『はい。ここぐらいまではいいだろう、と許可が(笑)』
『えーと…カノンさんのお父様は、F'sの神千里さん…ですよね?』
『そうです』
『で……お母様が…SHE'S-HE'Sの…Cさん…って事ですか?』
『はい。俺、めちゃくちゃサラブレッドです(笑)』
『うわ~…うわわわわ~!!どうしよう!!これって、大スクープみたいな話ですよー!?こんな小さなラジオ局で話すようなネタじゃないですよ~!!』
『しまった…俺らの話題が消えた…(笑)』
『あっ!!すすすすみません!!えーと…ここで、DANGERの曲をお聴きください。タイトルコール、お願いします』
『スクープの事は忘れて(笑)Let Her Cry』
〇桐生院華音
「カノンさん!!」
生放送が終わってブースを出ると、パーソナリティーの女性が。
「さ…さっきの、本当の話…」
しどろもどろに聞いてきた。
「本当ですよ。」
「うわあ~…どうしよう…あたし、SHE'S-HE'S全部持ってます!!めちゃくちゃ憧れてるんです!!ボーカルのCさんの声、毎日聴いてます!!」
大興奮のパーソナリティーに、一瞬ひるんだが…
「…それは…ありがとうございます。母に伝えておきます。」
母さんが褒められるのは、嬉しいもんだ。
「…あの、すみません…あたし、興奮して…DANGERの曲の事、もっと話さなきゃいけなかったのに…」
「いや、勝手にスクープをぶちまけた俺が悪いんですから、気にしないで下さい。」
それに…
紅美との事も、さらっと流してもらえたし。
昔、曽根に流されたゴシップのせいで、いまだに俺と紅美は雑誌取材はあっても…ラジオやテレビがなかった。
俺としては、もう公けにしたいが……まあ、気長にいこう。
「あ、あの、サイン…お願いしていいですか?」
ふいに、サイン色紙を目の前に出された。
「母のですか?」
「いえ…カノンさんの…」
「……」
そうか。
俺、ゲストで来たんだっけな。
「そう言えば、ブースにズラリと並んでましたね。」
そう言いながらマジックを手にすると。
「ええ…これはブースに飾るやつで…」
「?」
「これは…あたしが個人的に、お願いしていいですか?」
パーソナリティーは、自分のスマホケースを取り出した。
「…おかえり。」
「……ただいま。」
ラジオの収録を終えて事務所に戻ると。
DANGERのルームに、紅美がいた。
しかも…ちょっと不機嫌そうだ。
「どうした?」
座ってる紅美の頭をくしゃっとして隣に座ると。
「ラジオ聞いた。」
唇を尖らせた。
「…で?なんでそんな顔なんだ?」
あきらかに、不機嫌。
「すごく楽しそうだった。」
…もしかして、妬いてんのか?
「って…俺は、じーさんに言われた通りに、行ってやって来ただけだぜ?」
だいたい、ラジオの収録はビートランドに所属してるパーソナリティーと、事務所内にあるスタジオから中継する事が多いが。
今日の放送はすべて外部。
年に数回しかない枠を、奇跡的に俺がもらえたという。
「でも…楽しそうだった。」
「…なんだよ。」
妬いてんのか?
そう言って抱きしめようとすると…
「あたしだって、SHE'S-HE'SのギタリストRは、あたしの父ですって言いたかったのに。」
「……」
…そこかよ。
「パーソナリティー、めっちゃ驚いてたじゃん?あんなふうに、あたしも誰かにサプライズしたいよー。」
「……ま、そのうち…じーさんが何か企んでくれるんじゃねーかな。」
せっかく隣に座ったし。と思って、紅美の肩を抱き寄せる。
「…今日、飯食って帰るか?」
耳たぶを甘噛みしながら言うと。
「…うち、今日誰もいないよ…?」
「…マジかよ…行こうかな…」
「来る?帰って来ても、スタジオで練習してたって言えばいいかなって…」
ついばむように、小さなキスを繰り返して。
「…じゃ…帰ろっか…」
紅美が立ち上がりかけて。
「もう少し…」
俺が離れがたそうに紅美の腰を抱き寄せてキスを深くしていくと…
コンコンコン
「!!!!!!!!」
慌てて離れて、椅子を蹴飛ばした。
「いって…!!」
「な…何やってんのよ…もう…はーい。」
紅美がドアに向かう。
ドアを開けると…
「はっ…ち…ちさ兄…何?」
…親父らしい。
「華音いるか?」
「いるよ。ノン君、ちさ兄。」
「ああ…何。」
ぶつけた右足を引きずりながらドアに行くと。
「おまえ、今日何時上がりだ?」
「……」
「ん?」
「えーと…今日は遅くなる。てか、なんでわざわざ?」
LINE覚えたクセに。
「近くまで来たから。遅くなるのか…じゃあいい。」
「…何か?」
「いや、早乙女と飲みに行くんだが、おまえもどうかと思って。」
「えっ。」
早乙女さんと親父が飲みに行く?
「それはー…珍しい組み合わせだけど、そんな余裕あんのか?ライヴまですぐだぜ?」
「俺はもう曲は書いた。」
「…周りは地獄だな…」
早乙女さんと飲みに…
すげー興味深い。
てか…行きたい。
でも…紅美とも一緒にいたい。
あ゛ー!!
若干葛藤に揺れ動いてると…
「ちさ兄、その飲みはあたしも行っていいの?」
紅美が、顔をのぞかして言った。
「……」
親父は俺と紅美の顔を交互に見て。
「やっぱり今日は早乙女と二人で行く事にする。」
そう言ってドアを閉めかけた。
「なー…なんでっ。」
俺がドアを開けて言うと。
「…二人でいる時間を大事にしろ。」
「……え。」
「じゃあな。」
パタン
ドアが閉まって、俺と紅美は…
「……」
「……」
顔を見合わせて。
「…俺は言ってないぜ?」
紅美に言った。
「…あたしも言ってないけど…」
「なんでバレたんだろな。」
「…早乙女さんにはバレてたけど…言う人じゃないしね…」
「……ま、いっか。」
別居して一ヶ月以上。
親父は少し変わったと思う。
二人でいる時間を大事にしろ…か。
母さんも早く…父さんと一緒にいた気持ちに、素直になってくれたらいいんだけどな…。
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