第4話 ーそれぞれの対決ー

敵陣に飛び込んだローグ達はローグ・エイシャと、アラビス・ユリアンに分かれて敵衆に突っ込んで行く。


「はっ、屋敷では散々だったのに何を!」

と、敵の一人が言う。


ローグは、通行書を持っているあの少年を目掛けて突き進む。

しっかりエイシャが、並走しているのを横目に見て、懐から紙束を出しながら声をかける。

「エイシャ、行くよ」

「はい、ローグ様」

エイシャも鎌を構えて敵の只中に飛び込んでゆく。

「ははっ、また倒してあげるよ」

少年も戦闘態勢をとる。

しかしその間に屈強な男が立ちはだかる。

「サイレン、助け立ちする」

「分かった、ナリガ。でも一人でも大丈夫だと思うけれど、ね」

「まあ念には念を、だぞ」

「はいはい」

そんなやり取りの中でも二人の視線はこちらにずっと向いていた。

ローグは、紙を取り出すと、ナリガと呼ばれていた男に放つ。

その紙が男の直前まで飛んだ瞬間、

「破っ」とローグが叫んだ。

紙が粉々にちぎれてナリガの周囲に飛び散る。

「なんだコリャ。発動失敗ってやつか?」

と、ローグ達の方へと踏み出したその時。

ちぎれた紙屑に触れた。

その時、紙屑から光が放たれ、ナリガの体の表面を覆ってゆく。

「なっ、これは、動けない!何をした!」

ローグは努めて冷静で、

「貴方の動きを封じてもらいました。さあエイシャ、トドメを」

とローグが言うと、エイシャは、

「はい、ローグ様」

鎌を振り上げて、エイシャはとどめとばかりに振り下ろす。

勿論その間、ナリガはただ黙っていた訳ではない。力一杯身体を動かし逃れようと必死だった。

が、何も出来ずにエイシャの鎌の餌食となる。


筈だった。

鎌はナリガの表面に当たると、それ以上食い込みもせずに止まった。

しかも、ローグの拘束の術も紙屑が鎌に斬られた弾みで切れてしまった。

「はは、自分達から拘束を解いてくれるなんてな」

先程の表情から一転、ニヤリと言う。

そしてナリガが効力を失った紙屑を振り解きながら、湾剣を抜いてエイシャに切り込んでゆく。

エイシャはローグを守りながら鎌で剣を受ける。

ローグは紙をナリガに飛ばすが、

「同じ攻撃を食らうかよ!」

と、湾剣の腹で紙を押し返て、エイシャの方へと返す。

ローグは咄嗟に術式を変える。

すると紙に触れたエイシャの体が一瞬光る。

エイシャは身体が軽くなった様な感じがして鎌を力強く相手の剣にぶつける。

「身体強化の術か。俺に貼り付けても味方に付けても良いという訳か。なかなか厄介だな」

と、ナリガが鎌を受けつつ呟く。

「サイレン、応援を頼む」

それを受けて少年は、

「はいはい。まぁ様子見でスキを見て攻撃しようかと思ってたけど、ナリガだけじゃ鎌の少女と、時間を費やすだけだからね」

と、ローグ達に電撃を放とうとした時、

「!」

投げナイフが飛んできた。

咄嗟に躱したが、ローグはその間に手に紙を補充して少しの距離を取る。

サイレンがナイフの飛んできた方向に視線を向けると、女がジェイルと剣を合わせていた。

「あの女、危険だな」

と心に留めて置く。

「まずはこちらから、だな」

と再度電撃を放つ。

今度は周りにも気をつけていたので、カウンターを食らう事は無かった。

電撃は、紙に防がれたが、少女の足を止めるのには充分だったようだ。

そこに、ナリガの剣が、振り下ろされる。


その一方。

とアラビスとユリアンも、敵衆と交戦していた。

ユリアンは先程、ローグ達の方で戦っていた少年の電撃をナイフで防いだが、それで眼の前の男が警戒して、援護が難しくなった。

ローグ、エイシャ。後はそちらでなんとかして頂戴。こっちも終わったら援護に行くから。

と、自身に発破をかけて男に向き直る。

今は、アラビスが男と剣を交わしていた。

技量的に五分五分の様だ。

ナイフを投げる時にアラビスとスイッチした後ずっと男とを打ち合っている。

ユリアンは髪からナイフを3本程取り出し、凍術を付与する。

そしてアラビスと打ち合っている男の後ろ、氷漬けの男を盾にして此方をうかがっている相手を見る。

戦闘の最初、ユリアンが先手必勝で放った冷凍術には一人しか巻き込まれなかった。

まとめて全員巻き込まれていればな、という甘い考えがあったものの、一人は少ない。

結果アラビスは目の前の敵と打ち合っているし、その背後では太っている男が凍り漬けの男を盾に此方の動向を探っている。

とりあえず後ろのを片付けるか。

後ろの太男にナイフを放ち足留めさせる。

そこにユリアンは走って行く。

途中アラビスと対峙している男にナイフを2本放ってアラビスの援護をすると髪の中に手を伸ばす。

ずるり、と引き出す。

そこからどうやって入れていたんだと思える程の巨大な鉄鎚を取り出した。さらに速度を増して背後の太男に迫る。

そして勢い良く振り下ろす。

グシャっと、凍り漬けの奴は砕け散ったがそばの太男は避けていた。

「もう一丁!」

今度は横殴りに男を巻き込む様にスイングすると、今度こそ殴られて扉にぶつかって止まった。

そこに追撃しようとした時、倒れて地面に手をついている太男が、もう片方の手を此方にかざした。

すると

ボンっと音がして鉄鎚が砕け散った。

しかしユリアンは躊躇せず残骸を手放し、髪の中から新たな武器を取り出した。

ーー>続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る