嘘をつくJK

ダンチ

第1話

僕は失敗した記憶を忘れない。

成功した記憶はほとんどない。

だからだろうか。

何をやっても成功しない気がするのは。

何も叶わない気がするのは。

この恋は成就しないと思うのは。


「小田切、この問題わかるか」


小田切と呼ばれたその子は髪が長く綺麗な銀髪で、まるで透き通ってみえる。

どこかミステリアスな雰囲気があり、誰もが彼女の噂をする。

彼女が休み時間に一人で本を読んでいる姿に僕は見入ってしまう。

一つ一つの動作に僕は意識を奪われる。


「おい、バカ。ちゃんと授業に集中しろ」


後ろから僕の事をバカ呼ばわりしてくるのは、幼馴染の天童佐奈。

最近になって僕へのあたりが強くなった。

昔は君付けで呼んで可愛らしかったのに。


「僕の名前はバカじゃないよ。サナ。僕には佐伯真司って名前があるの知ってるでしょ」


僕は完全には後ろは向かず軽く顔をサナの方へ向けて返事をした。

授業中は話しかけないで欲しいもんだが。


「はいはーい。でさ、さっきから何、華さんの事みてんの?そんな好きなの」


「うるさいな。授業に集中しろよ」


「えへへ、はーい。わかりましたよ」


昔からコイツは僕が誰かに恋をするとやたら突っかかってきて、僕の妨害をする。

僕の失敗歴の三分の一ぐらいはコイツが原因な気がする。

もうコイツと一緒にいるの辞めようかな。


「少し早いが今日の授業はここまで。あと今日はHR無しで。チャイムが鳴ったら帰っていいぞ」


うちの担任は大分適当だ。

自分のクラスが6時間目の授業だったらHR無しとか言う独自ルールを使っている。

生徒からも大分慕われている。

もちろん僕もあの先生の事を慕っている。


「ねぇ今日さ、駅前のカフェ行かない?なんか新作のヤツが出るんだって。行こうよ」


「今日は由依に勉強教える約束してるんだ。明日でもいいか?」


「えー」


「明日は土曜だし朝から付き合うぞ。あとカフェ代は奢ってやるよ」


「ほんと!?なら良いわ。じゃあ明日の10時に私の家来て」


サナは手を振りながら教室を出た。

カフェ代が、少しいたいがあいつが不機嫌でいる方が嫌だからな。

サナは怒ると怖いしな。

よしっ。僕はさっさと由依の所へ行こう。

僕は机の横にかけてあったバックを掴もうと手を伸ばした。

ふと、小田切がこっちを見ている事に気がついた。

僕が気づいた途端に小田切は目を逸らした。

な、なんだったんだ。



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