第39話 お願いします
ユーエンと五月は部屋に帰ってきた。
正直やっとという感じである。
今後も出演予定多々の黒ドレスを丁寧に掛けて清浄魔法をかけて仕舞った後、交代でシャワー浴びていい加減な普段着に着替え、二人は一息つく。
「今日は疲れた」
「そうですね。でも肝心な所は大体シンジさんにサポートしていただきましたから」
「泣いていたけど大丈夫? シンジまた余計な事言った?」
「いえ、私が勝手に昔の事を思い出してしまっただけです。シンジさんのせいではありません」
「奴は時々とんでもない言葉を吐く。天然だけに避けられない。でも」
「ええ、やっぱり本調子ではないようです。何か引っかかったままの状態のようで」
五月は頷く。
「なら話が早い。解決策の準備してみた」
五月は何枚かの紙片を取り出した。
「これは?」
「疲れているところ悪い。魔眼使用頼む。無理ならいい」
前に真司が相談の時に使ったように、一言位ずつ書かれてた紙片が十数枚ある。
「あれから考えた。土曜日に何が起こるか。情報不足だが調べたり手助けしたりする方法はある筈。私はシンジ程頭は良くない。だから真司の物真似で選択肢を作った」
五月は幾つかのグループに分けて紙片を置く。
1つ目のグループは、『人、もの、ニュース等の情報』
2つ目のグループは、『見守る、手助けする、妨げる』
3つ目のグループは、『8時以前、8~12時、12~16時、16~20時、20時以降』
四つ目のグループは、『カフネルズ城塞、毛無峠、それ以外』
五つ目のグループは、『ユーエン・シンジ・メイ ユーエン・シンジ ユーエン・メイ ユーエン』
「これで土曜日の方針が決まる。それぞれ説明する。選択基準はシンジの満足度。この前の様に体に異常が出たら中止。いいか」
ユーエンにも五月が何をしたいかが理解できた。
だから頷く。
「その1。土曜日にシンジに影響を与えるのは何か。この3枚で真司に最も満足度を及ぼすものは何か」
ユーエンは人と情報でちょっと迷い、『人』を選ぶ。
「ごめんなさい。ちょっと自信ないです。この人という項目と情報という項目が同じに見えます」
「それも結果。その2。私とユーエンは真司が満足するために、それについてどう対処すべきか。次の3つから」
今度はユーエンはあっさりと『手助けする』を選ぶ。
「これは間違いない。大丈夫です」
「その3。その手助けを開始する時間はどれが適切か」
今度もあっさり判断できたようだ。16時~を選ぶ。
「その4。それを為すにはどの場所が適切か。最初に向かうべき場所はどこか」
毛無峠があっさり選ばれる。
「最後。その毛無峠に向かうべき人間で適切なのは誰か。歪曲移動が必要だからユーエンは必須とする」
メイとユーエン2人のカードが選ばれた。
「以上。ユーエン大丈夫か。体の調子は」
「大丈夫です。選択肢がこうやってきちんと明確であれば負担は少ないようです」
確かに以前の時と比べ顔色が悪いこともないし呼吸も平常に見える。
大丈夫だろうと判断して五月は口を開く。
「まずはその1。人と情報で迷って人、多分何らかの情報を持った人でいいと思う。
手助けするということは積極的に私達が手出しをすべきだという事。
時間は16時からで場所は毛無峠。行くべきなのはユーエンと私。
つまり土曜日にやるべき事は、ユーエンと私とで16時から毛無峠で人探しをすること」
ユーエンは頷く。
「ユーエンも私も顔バレしている。長時間外をうろうろ出来ない。でも支所からバス降車場は見える。明日県庁の連中にお願いして支所の部屋を借りる予定。でも探すのはユーエンの魔眼頼り。頼む」
五月は深く頭を下げる。
「私にはこれ以上手が無い。ユーエンに頼むしかない。何でもするし約束する」
本気なのはユーエンにもわかる。
魔眼を使うまでもない。
だからユーエンは考える。
そんなのいいよなんて簡単な言葉は言いたくない。
多分最初に逢った時から彼女の一直線さはユーエンにとって救いで憧れだから。
「ひとつ聞きます。メイにとってシンジはとっても大切なんですよね」
ためらいなく五月は頷く。
「なら一つ約束して下さい。本気で大好きならあなたからシンジさんをを逃がさないで下さい。もっと執着してもっと縛り付けてやって下さい。全力でシンジさんをを捕まえていて下さい。それが今回の条件です」
五月が一瞬間をおいて、怪訝そうな顔をする。
「いいのか、それで」
ユーエンは微笑む。
「ええ、勿論私も負けないですから」
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