第24話 地下攻略戦

 真司は考える。

 今までの経験から考えて、階を下りた後の最初の攻撃が一番激しい。

 それさえ凌いでしまえばあとはそれほど厳しくない。

 今度も最初に戦いやすい場所からということで、突入口は1階攻略時と同じ城の正面から見て左手前側の階段。

 ただ今回は1階より遥かににゴブリンの数が多いと予想される。

 そこで一応それなりの準備をしてきた。

 と言っても予備のエアガンを全部持ってきただけだが。


 作戦は単純。最初は真司と五月、通路の封鎖魔法を解いたらユーエンも前衛でゴブリンを掃討する。

 弾が切れたらすぐ後衛と交代。

 撃ち尽くしたエアガンを置いて新しいエアガンを所持する。

 2人交代したら隙を見て真司が後衛に入り、弾倉の交換と弾の補充をする。

 つまりはとにかく撃ちまくるという作戦だ。

 バッテリーの持ちとモーターの過熱が心配だが、問題が表面化する前にゴブリンの数が尽きるだろう。


 地下への階段を気配を殺してゆっくり降りる。

 既に空間がわさわさしているように感じられる。

 階段の踊り場、ここから正面方向に廊下が見える。

「照明の魔法と同時に正面の封鎖を解きます。用意お願いします」

 ユーエンの台詞で真司と五月が前に出て構えた。

 今度は真司も使い慣れた中華AKだ。

 ハイサイクル改造は威力も大きいが弾の消費が激しすぎる。

 中華AKの秒間10発でもゴブリン相手なら充分だ。

 まあ実情は予備のエアガンを1台多く確保するためなのだけれども。


 地下1階が明るくなる。

 既に目の前の通路にゴブリンが近づいてきているのが見える。

 真司と五月のエアガンがBB弾を吐き出し始めた。

 ゴブリンは最初急に明かりが点いたので何事かと戸惑っている様子だった。

 その隙に一気に見えている5頭を始末する。

 見ると壁沿いに板を立てかけたり箱を置いたりして所々に棲処を作っている。

 BB弾にはあの障害物ごとゴブリンを退治する威力は無い。

「マーロンさ……」

 真司が頼むまでもなかった。

 ドーン! という破裂音。

 障害物が一気に吹っ飛ぶ。

 マーロンが風操作で障害物を一気に排除したのだ。

 そうしてできたのは直線15メートルの障害も脇道もない一本道。

 ここまでくれば必勝パターンだ。


「自分の担当区域のゴブリンだけでいいからな。連射しすぎるなよ」

 真司もゴブリン1頭あたり5発程度で仕留めるように間を切りつつ撃つ。

 何せ五月のPS90HC改は1500発、マーロンとユーエン初期装備のM4CRW改は900発の弾倉を装備しているのに対し、真司の中華AK改は300発。

 漫然と連射していればいかに連射性能がこの中で最低だといっても30秒で弾倉が空になる。

 サバゲーなら300発も装備していれば1ゲーム余裕で持つのだが。

 今回は五月もユーエンも大分落ち着いて撃っている。

 1階の攻略で慣れたらしい。

 今回のゴブリンは1階と違い倒れても消えずに屍体が残る割合が多い。

 見る間にゴブリンの屍体が積み重なる。

 ゴブリンはそれを乗り越えててくるが、仲間の屍体が障害になって隙が出来る。

 結果、弾を打ち尽くした者がいない状態で第一波の攻撃は終わったようだ。

 ただ、同じところに積み重なったゴブリンの屍体を踏み越えていくのはちょっとぞっとしない。

「どうします」

「後で魔法で片付けます。とりあえずは別の階段から進みましょう」

 ユーエンの判断で、一行は階段を引き返して今度は左手奥の通路へ。


 1階で真司が各エアガンにBB弾を補充。

 M4はバッテリも交換した。

 ちなみに五月のPS90HC改は冗談みたいな大容量バッテリを搭載しているので心配ない。

 真司の中華AKは使う人が注意するという事で。

 今度の階段は先程の階段のちょうど正面にあたる。

 さっきマーロンが風操作で飛ばした障害物が大分こっちに溜まっている。

「ユーちゃん、封鎖といたら合図よろしく」

「ええ了解です」

 真司と五月がエアガンを構える。

「どうぞ」

「了解~」

 ドガーン!

 景気よく派手な音を立ててごみや板切れが吹っ飛んでいく。

 ゴブリンは現れたが先程より数が少ない。

 すぐに打ち止めになる。


「さて、ここからが面倒かな」

 マーロンの言葉に真司も頷く。

 魔物の気配は消えてはいない。

 つまりまだ至近距離にもゴブリンがいるのだろう。

 襲い掛かってこないのは上位種か、それとも別な理由か。

「とりあえず、あそこの角の死角にいそうだからぶっ放すぞ。出て来たら宜しく」

 マーロンがそう言って右手を軽く横に振る。

 ズゴゴゴーン!

 左側に伸びている通路2本から板やら箱やらが吹っ飛んできた。

 その中にゴブリンの姿もある。

 だが当然、立ち上がる前に五月のエアガンがとどめをさした。

 続いて通路右の方からドーン! ドーン! と破裂音。

「今のは」

「面倒だから障害物を一気に排除した。今なら通路はクリーンだぜ」

「ありがとうございます」

 真司は軽く一礼して五月とユーエンに合図。

 壁側から銃を構えたまま前進して中央通路に銃を向ける。

 確かにクリーンになっていた。

 板切れや箱やらの残骸が遠く通路の反対側の方へ吹っ飛んでいる。

 所々にゴブリンが倒れているが、既に死んでいるか瀕死の状態だ。


「これって、僕や五月必要でした? マーロンさん1人で十分何とかできたんじゃ」

「最初の集中攻撃をかわすのが大変なんだわ。俺の魔法は連射がきかないしな」

 はーさいですかそうですか。

 なんだかなあという目で真司は中央通路を見る。

「あとは地下全域を調べてゴブリンがいないことを確認します」

「この時間で上がったら申し訳ないしね」

 腕時計は午後2時30分を指している。

 地下1階の攻略を開始したのが午後一時過ぎ。

 だからまだ1時間半しか経っていない。

 一方でゴブリン討伐数は優に100匹を超えているだろう。

 五月も同じくらいは行っているはずだ。

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