第367話主役はカインとジョージ?

「突然ですが!!カインが主役で活動写真を作る事になりました。」

朝の何時もの会議。

王子が結構深刻そうな顔でそう言った。


「活動写真って映画か!そういや開発にパトリックとルイスのお兄さん達が関わっていたね?」

会長がなるほどと頷く。


「だからって僕が主役ってどういう事?」

カインは首を傾げて王子の顔をまじまじと見た。

大方予想は着くけれど。


やっぱりアルマーニ王子の御要望だった。


「話の内容はお任せなのですが。問題は何にするか?オペラでもやりますか?」

それはちょっとなあ?と皆も嫌そうな顔をした。


恐らく私達の居た世界よりは進化して映画に近い活動写真。

だが、まだ音が悪い。

歌が命のオペラもコンサート風景の映像をやるにもイマイチ。


「今日の会議のお題。何を撮るか。」

王子もそう言っても思いつかない感じだ。


「恋愛物とかにしたら?」

キャサリンに言われてカインはめちゃくちゃ嫌な顔をして首を横に振った。


「相手役は?まさかキャサリン?ルナリー?エミリア?無理だろ?恋愛物はボツ!!」

カインは他の誰かと撮影はしたくない!と頑なに拒否。


「そうだなあ。知り合いならまだしも知らない奴と撮影は気を使うよな。じゃあ!喧嘩とか?マフィア物の映画にしたら?!」

ルイスが嬉嬉として手を挙げた。

「面白そうだな。バトル物。」

私もそれはちょっとやりたい。


「却下だよ。もう少し緩やかに穏便なのにして。」

王子が苦笑する。


「そうだ!!僕が脚本を書くよ!」

会長がパンッと手を打ち1人納得した様に頷いた。


「まあ、ちょっと待ってよ。あらすじとか書くからさ。」

会長は凄く良い事思いついた!とニヤニヤ笑う。



『アリア学院・ラブストーリー』


主演・カイン

ヒロイン・ジョージ

悪役令嬢・キャサリン

カインのライバル・ジェファーソン、会長、クライス

教師・ルイス

ジョージのライバル・ルナリー

ジョージの親友・エミリア



舞台はアリア学院。

庶民出身のジョージ(女装)は高成績でアリア学院に入学。

主役のカインはそんなジョージに一目惚れ。


でも、可愛いジョージにジェファーソン、会長、クライスもちょっとアプローチをかけて行く。


担任はルイス先生。


ジェファーソンの婚約者キャサリンに虐められたり、ルナリーとライバルとして演奏対決。

エミリアと親友になったりして最終的にはカインに告白されて2人はハッピーエンド。


会長はどうだ!!!

とそれは嬉しそうにあらすじを見せてくれた。

これ、アリラブでは?と私やキャサリンは思った様で目が合って苦笑い。

カインとジョージが良いなら面白くなるかも。ジョージ可愛いし!


そして当の本人達。

「えー?また女装?!」

ジョージはそりゃ不服だろうけど自分がメイド服を着た時の反応を知っているだけに苦笑い。


「相手はジョージかあ。知らない人と演じるよりはマシかな。」

カインは大きな溜息をついたけど反対はしなかった。


「キャサリンが悪役?」

王子が不服そう。


「んー。そうなるね。ジェファーソンの婚約者の設定だし。ルナリーを悪役令嬢にしても良いけど。婚約者ルナリーで良い?」

会長はちょっと意地悪そう。


王子はキャサリンは優しいんですから控えめにね!虐める感じは殆ど無しですよ!

と、念を押していた。


こうして脚本が出来上がり。


撮影はアリア学院で。

まあ、映画としての出来は悪いが私やルイスの時代のアイドル映画っぽい感じかなあ。


撮影は入学式から。

他の生徒役は在校生をエキストラで少し参加してもらった。


アリア学院の女子制服を着たジョージが可愛い。


出演・演出と監督は会長がやる。本当に楽しそう。


「はい!先ずはカインとジョージの出会いから!」


おー。笑えるくらいぎこち無い。


「可愛いね。君の名・・名前は?」

カットー!!と会長が叫ぶ。

何度か練習すると自然になってきた。


そう言えば。女性名とか偽名の配役名にするかと思っていたが今回の映画は全員、本名だ。

女の子だがジョージ・・。


ファンにとっては解りやすいんだけど。


撮影は順調に進んでいく。

教室に入ると懐かしーい!

またこの学校で授業とか制服着るとも思わなかったし。


「はい。担任のルイス・マッケンジーです。宜しくお願いします。」


教師ルイスがカッコいい。

見惚れる。


休み時間。

カイン以外のメンバーがアプローチ編。


「初めまして。ジョージ?だよね。僕はクライス。宜しくね。」

「あっ。初めまして。ジョージです。」

少し俯いて照れながら挨拶するジョージが!!可愛い!


主役はカインでは無かったか?

まあ、最終的にアルマーニ王子が満足すれば良いのか。


「やあ、この国の第2王子のジェファーソンです。さっきの授業のピアノ演奏は素晴らしかったよ。」

王子登場。


会長は生徒会長役。そのまんまだ。

隠しキャラ?らしく廊下ですれ違って会釈しただけの登場。


暫く授業やカイン達の男性役との仲良くなる会話のシーンが続き明日の撮影は悪役令嬢の御登場だ!!



「じゃあ、キャサリン登場シーンからねー!」

会長の合図で開始。



「あなた?庶民の癖にジェファーソン様と仲良くなるなんて生意気よ!」

女生徒を引き連れてキャサリンがジョージに因縁を付ける。


上手い!!何か1年の頃の私を思い出す。イジメられず逆に脅したけどな・・・。


「そんな、ジェファーソン様と仲良く何て・・・。」

「あら?口答えする気?」


ここでカイン登場!!


「何してるのキャサリン?僕のジョージにイジメ?止めてくれるかな。」

おー。ドSの時のカインだ。


「覚えてらっしゃい!!」

そんな捨て台詞を言いながらキャサリン退場。


「大丈夫だった?ジョージ。」

「ありがとうございます。カイン。」

見詰め合う2人。

芽生える恋心。


「はい!OK!次はエミリアね。」

初めての友達エミリアのシーンっと。


「あなたも庶民なの?私もよ!お友達になりましょう!」

「本当に?私、ジョージ。」


楽しいなあ。私の出番はもう少し後か。


全員同じクラスの設定なので顔は映る。だんだん仲良くなるカインとジョージ。そしてクライスと王子と会長もラストまでジョージを取り合う感じだ。


「はい。次はルナリーとジョージのピアノ対決ね。」

会長監督が合図。


「はーい。」

やっと出番だ。


「今日はピアノコンクールのクラス代表を決めます。」

ルイス先生が説明を始める。


「今回はジョージとルナリーのどちらかを代表とします。」

うんうん。

セリフ言わなきゃ。


「私かジョージですか?」

チラリとジョージを見るっと。そしてニヤっと笑った。


よし!完璧!!


後はピアノ演奏。

実際対決したらジョージと私って似たり寄ったりだと思うんだよなあ。


でも、ジョージはピアノ科だし難曲したら負けるか。


曲は超絶技巧練習曲。また面倒な曲にしたもんだ。


先ずは私からと指動くかな。

「私からね。勝つわ。」

何て似合わない言葉使いをしながら演奏。

まあまあ?だった。


「頑張ります。」

ジョージの演奏。これ得意って言ってたしな上手い。


結果はジョージの勝利。


その後はカインとジョージの仲が深まり卒業式でカインが告白してハッピーエンド。


「クランクアップ!!」

カットー!と会長が声をかけた。


夏休みをまるまる利用して地道に撮影して本日漸く撮影が終わった。


初回なのになかなかの長編映画1時間30分くらいになりそう。



「この後の編集などはパルドデアでやるそうですよ。初回映画鑑賞会もパルドデア国です。」

その声は?


「兄貴とブレンダさん!!」


「久しぶり。見に来たよ。」

2人は最近はパルドデアとボードウェン、ダナブルランドの3カ国で研究している。


撮影機材等はお兄さん達が撤収作業をして後は映画が出来るのを楽しみに待つ事になった。




1ヶ月後。



パルドデアには映画館が既に完成していた。

元々あった劇場を改築したのかもしれない。

昔ながらの映画館って雰囲気はパトリックやルイスのお兄さん達の意見が取り入れられたかもなあ。


「皆様!!ようこそいらっしゃいました!」

テンション高いアルマーニ王子が此方を見付けた瞬間に飛んできた・・。


映画館は試写会の様な感じで王族と財閥少々とノネットメンバー。


「恥ずかしくなってきた。」

「うん。何故、ヒロインとか引き受けたんだろう。」

まだ映画が始まる前からカインとジョージの顔は引き攣っていた。


「今更だろ?いやー!楽しみ!」

会長はケラケラ笑いながら2人の背中をポンポンと叩いた。


「私、話の内容は知らないんですよ。本当に楽しみです。」

アルマーニ王子だけでなくアンドレ王子とデイビス王子も嬉しそうに隣に座って来た。


ドキドキと言うか自分が映画に出る事になるとはね。

恥ずかしながらの映画上映が開始された。


モノクロ映画だけど。

明らかに映像技術は初回とは思えない出来栄えだ。

そうだな。私の生前の親世代くらいの映画って感じがする。


スクリーンの中で動く私達に周りの反応が凄い。

映画初のノネットメンバーもだ。


食い入る様に皆、身を乗り出して見入っている。


そう言う私も楽しい。

結構、全員演技力あるなあ。流石だ。



「ジョージ。僕は君が好きだ。付き合って下さい。」

ラストのカインの告白シーン。


「カイン様。私で良いの?」

見詰めるジョージ。それに頷くカイン。


「一緒に幸せになろう!」

「嬉しい。」

2人で抱き合って。


無事映画は終了した。


「ブラボー!!!」

アルマーニ王子が叫ぶと館内は拍手喝采に包まれた。

何かコンサートみたい。

「カイン様カッコいい!!」

「ジョージ様可愛い!」

と言った声が沢山聞こえた。


嬉しいが照れる・・・。


この映画はパルドデアで今後上映されてその後は我が国でも上映される事も決定した。


また儲かりそうだ。

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