第356話レッスンルームともお別れ

「卒業おめでとう!!」

先ずはジュースで乾杯だ。


「腹減ったあ!」

王家の料理人の作ったサンドイッチは何時も美味い。パクりと1口。やっぱり最高ぉー!


「それにしてもプレゼント貰いすぎたね。」

「予想以上過ぎてびっくりしたよ。」

クライスとカインは本当に山の様に貰った。


「クライスとカインとジョージはまだ解るけど私まで沢山貰ったわ。」

「そうそう。私もですよ。」

私を含めてキャサリンもエミリアも女生徒からの人気が想像を軽く超えた。


「まあ、良いじゃないか。これから沢山、コンサートやったり?レコード出したり。ラジオだろ。沢山恩返し出来るじゃないか。」

会長が笑顔でクッキーを摘んで食べる。


「社会人スタートだなあ。」

ルイスがしみじみとそう言った。


「本当に頑張りましょうね!!」

王子の気合いそして私達も気合い。


「明日からはラジオ局に集合だぞ。間違えるなよ。」

そう。ラジオ局のビルの空き部屋にノネット・クライムの事務所と練習部屋を作った。


事務所には売上管理にカインの弁護士事務所とジョージの病院から改めて事務職として4人雇う事にした。

雇わないと会長が全部やってしまいそうだったしね。


「ダメですよ。ルナリー。明日から僕らは結婚式の練習ですよ?」

王子に言われて思い出す。


「あー。そうだったー。何か仕来りとか入場とか王家の拘り多すぎるんだよ。」

国賓達が来る結婚式は1つのミスも無く行う必要がある。

王子とキャサリンは当然だが一緒に式を挙げる私達も同じ行動をする事になった。


「結婚式楽しみにしてるよ。頑張って予行練習してきなよ。」

会長がクスクスとからかう。


「うん。まあ、頑張るよ。」

折角の豪華な式をだし。何よりも王子とキャサリンが遂に結婚!だもんな。


腹も満たされた所で何か歌うかとなった。


Jupiterを全員でハモリで歌う。

今も人気の私達の言わばファーストシングル。

最初に作った時は燃えたしミサで歌う時は本当に緊張した。


「本当にレッスンルームって思い出あり過ぎよね。」

キャサリンがちょっと寂しそうに微笑んだ。

「1年の文化祭からだもんな。」


「毎日。此処に来るのが楽しみだった。」

クライスも思い出す様に室内を見渡す。


「ルナリー。ありがとうな。」

突然、ルイスに言われて

「え?何で?」

と聞いてしまった。


「全ての発端でしょ?ルナリー。」

会長がクスっと笑った。


あー?確かにそうか。

「やりたかったしなあ。実際にやったら楽しかったんだもん。」

うん。そりゃ本当にそうだ。


「全員、ルナリーには感謝してますよ。勿論、僕も。」

王子に改めて言われると何か恥ずかしいな。


思い立ったまま楽しくやってきた。

文化祭もクリスマスミサコンサートも。

そしてノネット・クライムも。


それが仕事になる。


夢が仕事になる人は少ない。

それはこの世界でも前世でも知っている事だ。


今、私達は夢を。やりたかった事を仕事にして生きていこうとしている。


「これからも楽しくやって行こう。」

全員で頷き合う。


ずっと売れ続けるとは限らない。

挫折や喧嘩もあるかもしれない。


でも。私達は同じ方へ進んで行こう。


「撤収しましょうか。」

「名残り惜しいけど。」

置きっぱなしの楽器も楽譜も全て持ち帰る。


最初に此処に入った時のピアノと机と椅子だけの1番広いレッスンルーム。


「じゃあ。皆で!!せーの!」


「3年間ありがとうございました!!」

そう誰も居ないレッスンルームに叫んだ。


扉を閉めて鍵をかける。


寂しさと新しい希望へ。私達は明日からまた進んでいく。

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