第353話閑話 間もなく卒業

年が明けて段々と卒業シーズンとなってきた。

私達は次のコンサートの曲を決めたり結婚式の準備をしたりと何かと忙しい毎日だ。


「答辞って王子?」

成績1番だもんなあ。


「ピアノ何弾きましょうかねぇ。卒業式ってやはりクラシックですもんね。」

と言いつつ何か私達へ期待している。


「会長、何かピアノ曲って何か無いんですか?」

会長がまた難しい事聞くねーと苦笑した。


「超絶技巧曲とか弾いたら?」

ジョージに言われて王子は黙る。

「良いよなあ。たまには真面目にそう言うのも。」

私も昔は結構良い感じだったけどとピアノに触れる。

パガニーニ超絶技巧練習曲。


ぐはっ。指訛ってるなあ。

「姐さん、流石だね。」

「全く、声楽科の癖に。」

カインに褒められキャサリンに嘆かれる。

「いやー?昔はもう少し弾けた記憶が。ダメだな。」


こんなレッスンルームでの日々がもう少しで終わると思うと寂しいものだ。


「まあ、ジェファーソンの答辞は後回しで卒業後のコンサートはやっぱり卒業ソングにしたいよね。」

会長は幾つか考えているんだ。と嬉しそうに言った。

「私も考えたわよ。栄光の架橋!」

会長は来たー!名曲と満足そうだ。楽譜と歌詞を見せて貰うとこれは感動するなと想像がついた。


「僕はね。中島みゆきの糸。後、時代。」

「それは解るかも。やっぱり知ってる。名曲だ。」

うん。コンサートにぴったり。


「あんまり泣かせる曲ばかりも何だから後は明るめの曲かなあ?」

春の曲とかも良いかなーと会長はウキウキしている。


そうか。何か会長が嬉しそうだと思って見ていたのだが。

私達が卒業したら同じ立場だもんなあ。

もっとコンサートも地方公演や海外公演も出来るし。

レコード販売や曲作りも何時でも出来るようになるし。


「あっ。森山直太朗のさくら独唱も追加しよう。」

「良いわねー。」

会長とキャサリンがコンサートの新曲を着々と進めるのを王子が詰まらなさそうに見ている。


ピアノ曲か。悩むよなあ。

前世ではピアノのピの字も弾いてなかったし。

「あっ。待てよ?」

記憶にある曲があるある。


戦場のメリークリスマス?映画はそうだったが曲名は記憶に無い。

試しに弾いてみる。


「何のピアノ曲?!」

王子は食いつく。

「あー。懐かしいねー。映画見た事無いけど。曲は知ってる。」

と会長とキャサリンはそう言った。


「それ。弾こうかな。」

王子が皆が知らない曲って良いですよねぇとしみじみと言うが。

「卒業って言うか?戦場のメリークリスマスって話の曲なんだけどな。」

場違いと言えばそう。戦場だしクリスマスだし。

王子なら難しい難曲も弾けるんだろうけどね。


王子は悩みながら少しアレンジして題名は誤魔化したらいけるかなあ?と決断。


「後で大司教さんに題名聞いとくよ。あの人なら何でも知ってそうだし。」

「お願いします。」

うん。大司教さんなら知ってるだろう。


「本当にもう直ぐ卒業ですね。」

エミリアもちょっと寂しそうにレッスンルームを眺める様に見渡した。


日常が変わる事への不安と期待。

皆、そんな思い。


卒業まであと少し。

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