第345話凱旋公演

朝食を済ませてノネット・クライムとグレンさん達も一足先に歌舞伎座入りした。


凱旋公演、夢舞台だな。ってそう言えば。

「なあ、夢芝居も歌えば良かったな。」


会長は忘れてたねと苦笑した。

「歌うか。結構この舞台で歌うってそそられるよね!」

と言う訳で急遽ルイスメインの夢芝居も追加する事にした。


「歌えるけど。また急に決めるよなあ。でも、あの歌はプラゲ語の方が歌いやすいよなあ。」

ルイスもブツブツ言いつつも納得してくれた。


今回の楽器は基本は三線と三味線、ピアノが無いので亊や後は龍笛や小太鼓や大太鼓で伴奏は乗り切る。


本当にプラゲっぽくて良い感じになりそうだ。


ゲネプロをやっていないので少し練習。

観客はグレンさん、ローズさんに大司教さんとパトリック。

「懐かしいですねー。僕も歌えそう。」

「バッチリですよー!」

大司教さんとパトリックからOKと桟敷席から声がかかる。


暫く舞台裏でお茶を飲んで休憩。

「ねえ。この緞帳って面白いですよね。」

王子がこの横開きのカーテンみたいですよねーとヒラヒラと触って言った。

「確かに降りてくるタイプじゃないよなあ。」

独特かも。

この緞帳は王子の私設兵が裏方で開けるのはやってくれる事になった。


館内アナウンスは無いがザワザワと観客席が騒がしくなってきた。

チラッと見てみる。

「おー。桟敷席満員御礼ですね。」

「アルマーニ王子とデイビス王子はど真ん中真ん前か。」

そして横には吉宗殿まで居らしている!

すげー。ちょっと緊張する。


武士の皆様で埋め尽くされた桟敷席。

さて、凱旋公演のスタートだ。


緞帳が開くと拍手が起こった。


『本日はこの様な場を設けて頂き誠に有難う御座います。』

「パルドデア国の皆様もプラゲ語の歌を楽しんで下さいね。」

会長と王子がそれぞれ御挨拶。


再び拍手。


『1曲目、私の城下町。』

メインは私とキャサリンだ。


思ったより武士達もノリが良い。手拍子で歌に合わせてくれる。

何よりもアルマーニ王子とデイビス王子が嬉しそう。

歌い終わるとちゃんと拍手くれるし。


『ありがとうございました!次はルイスとケビンで夢芝居。』

何だかんだで会長はハモると言い出した。


この曲は知ってる!!とデイビス王子がめっちゃ拍手している。


『よっ!!ルイス殿!!』『ケビン殿!』

掛け声がプラゲ的だー。懐かしくて笑いそう。


歌い終わるとだんだん皆様のテンションも上がってきたのか拍手や掛け声が増えてきた。


『3曲目、愛燦燦。』

わっと拍手が起こった。

いーねー。だんだん盛り上がってきた。

エミリアの龍笛と王子の亊の音がより曲を美しく引き立てる。


『よっ!ルナリー殿!』

光国さんの掛け声デカい。


「ルナリー様!!」

「キャサリン様!」

この声は負けないくらい大きいアルマーニ王子とデイビス王子だ。


さあ、盛り上がっていこう。

お次も私達。


『お次はしっとりと。川の流れのように。』

優しい手拍子。

聞き入る様に感動される顔が嬉しい。



次はノリよくいこう!

『盛り上がって行きましょう!!祭り!』


伴奏から武士の皆様のテンションも上がったのが解った。


ルイスと会長がカッコよく歌い上げ、ジョージとカインが小太鼓、王子が大太鼓。

エミリアが龍笛、クライスも亊で盛り上げる。


手拍子も段々と大きくなってきて皆、舞台を楽しんでいる。


良かった。一体感が生まれた。


一段と大きい拍手喝采。


『良いぞ!!ノネット!!』

『天晴れ!』

いやー。嬉しい。


『最後となりました。』

そう言うと残念そうな声が聞こえた。


『最後はカインのソロ曲です。昴。』

アルマーニ王子が大きな声で

「カイン様!!」

と叫ぶ。

「カイン様!!」

デイビス王子も負けていない。

『カイン殿ー!』

これは光国さんだ。


カインはしっかりとプラゲ語で昴を歌う。


アルマーニ王子がうっとりと聞き入ってくれていてラストにカインにして良かったなあと思う。


終わると拍手喝采が鳴り止まないくらい大きくて私達も感動した。


『ありがとうございました!』

『ご清聴ありがとうございました!』

「パルドデアの皆様もありがとうございました。」

皆で舞台に上がってお辞儀。


再び拍手のうちに私達の凱旋公演は終了した。


舞台裏で恒例のハイタッチ。


「ありがとう。凄く嬉しい。」

キャサリンが満足そうに笑顔を見せた。

「プラゲ語で歌うのも良いね。何か僕も歌えて良かった。」

カインも嬉しそうだ。


「次は全員、プラゲ語で色んな曲を披露したいですよね。」

王子がまたやりたい。と言った。


うん。次もやりたい。


「本当にまたやろう。」

会長が次は金を取れるくらい知名度を上げる!と意気込んだ。


「プラゲ語のレコード作るか?」

「良いわね!」

そんな案も考えながらパルドデア国の皆様が帰られるので急いで皆さんの待つ歌舞伎座の外へ出た。


「カイン様!!」

早速アルマーニ王子に見つかった。

歌舞伎座前にはパルドデア国の皆様と夏目さんと光国さん。そして大司教さん達。


カインはほっといて。


『どうでした?』

光国さん達にコンサートの事を尋ねる。


『素晴らしかったぞ!吉宗殿はそれは感動されておった。』

『良かったですよ。武士の皆様は口々に褒めていらっしゃいました。』

2人は満面の笑みだし。こりゃお世辞じゃなさそうだ。


名残り惜しそうなアルマーニ王子達を見送りに空港まで付き添う。


バスの中でもアルマーニ王子はカインの横に座り。デイビス王子はうちの王子の隣に座った。

ルイスは真面目に最後まで通訳のマシューさんに解説中。


パトリックは次の冬休みにパルドデア国で研究のお手伝いに行く約束になった。

ラジオの小型化をするらしい。


空港では光国さんや夏目さんにもアルマーニ王子達はしっかり握手していた。しかも凄く笑顔だった。


プラゲ国とパルドデア国の今後の外交が上手く行きそうで嬉しい。


最後まで私達は手を振る。

「次は結婚式でお会いしましょう!」

「ご招待お待ちしてます!!!」

本当に賑やかな結婚式になりそうだな。


パルドデア国の飛行船は青空に飛び立った。

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