第320話僕の想い。クライスの気持ち
「クライス。疲れているんじゃないか?」
国立ホールの舞台は僕らだけだと本当に広くてちょっと驚いた。
「そうかも・・。広かったもんね。」
クライスはベッドに腰掛けた。
「クライス、先に入って良いよ。早目に寝た方が良いよ。」
何か緊張で僕はもう少し寝れなさそうだし。
「ねえ。会長って何処まで本気?」
クライスが真面目な顔で聞いてきた。
「何が?」
「エリザベス様に言ったこと。」
あぁ。それか。うーん?困ったな。
「何処までも何も・・。」
誤魔化すか。僕は苦笑いをする。
「ふーん!そう!」
ムッとしたクライスの顔。何に怒っているんだ?エリザベス様を弄り過ぎた事かな。
「そんなに怒るなよ。ごめん。」
クライスは僕をまだムッとした顔で見詰める。そして立ち上がって僕の傍まで来た。
「会長。僕は貴方が好きだ。」
唐突なクライスの発言に思考が固まる。
「だから!付き合いたい!」
その真剣な顔。ゴクリと唾を飲み込んだ。
どう答えるべき?解らない。焦って出た言葉は
「冗談だよね?」
今までもそう言うネタ的な会話はして来たし。本気になったら泣くのは僕の方だ。冷静になれケビン。そう自分に言い聞かせる。
「解らないんだ!このモヤモヤした気持ち。今まで味わった事が無いから!」
クライスが泣きそうな顔をして僕を見詰める。
言葉が出ない。
「ごめん。会長・・。先にお風呂入るね。」
俯いてバスルームへ向かうクライスに結局、声もかけられなかった。
本気?冗談?
僕は男だぞ?そりゃ前世は女だったけれど。それでからかってる?まさかクライスはそんな事する子じゃ無い。よねぇ?
クライスを好きだと言う気持ちは僕にもある。
だって前世からずっと推しだし。実際に3次元のクライスに出会ってから益々、自分の思考が危険な方にズレるのを必死で抑えて来た。
あー。もう普通でいよう。この話も聞かなかったって事で。
結局、クライスは財閥の跡取りだし最後に泣きを見るのは僕なんだ。
クライスが風呂から上がる前にルイスが戻って来て少しホッとした。
「まだ入ってねーの?」
「何かホール広かったねとか話し込んでたら遅くなった。」
「だよなー。本当に端から端まで走る感じになりそうだよなあ。まじで国立ホール広すぎ!」
そんな話をしているとクライスが何事も無かった様に風呂から上がって来た。
「会長。どうぞ。」
「あっ。うんありがとう。」
さっさと風呂入って寝よう。
シャワーを浴びながらさっきのクライスの真剣な表情が頭を過ぎる。明日のコンサートに支障出ないと良いけどな。
兎に角ゆっくり休まなきゃ。
風呂から上がるとルイスは相変わらずの寝相で既に爆睡中。
クライスは向こうを向いて寝ていた。少しだけホッとする自分がいる。
「ジョージも寝たか。」
僕がそう言うと皆早寝ですよね。とジェファーソンがニコニコと笑う。
「緊張してきたぁ。アルマーニ王子、最前列だよねー。」
カインが苦笑いしながらベッドでゴロゴロしている。
「良いコンサートにしよう!全力で!」
「ですね!僕は楽しみ過ぎです!」
そんな会話を少しだけして就寝。
ちょっとさっきの事が頭をグルグルさせたがいつの間にか寝てしまった。
ゲネプロの疲れからか全員爆睡。と思っていた。
朝。
「会長!起きて下さい!!」
ん?もう朝?早い。でも、良く寝た。
え?まさか寝坊した?!ジェファーソンに起こされ時計を見ると6時50分だった。やっぱりまだ目覚まし鳴ってない。
「どうしたの?」
慌て顔のジェファーソンに尋ねる。
「クライスがいないんです!!」
寝惚けた頭がパッと冴えてクライスのベッドを見る。
そこにはクライスの姿もバッグも無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます