第268話大司教様とパトリック

「そうでしたか。良かった無事に皆に理解されて。本当に良かった!私もそのうち皆さんに暴露しますよ。」


ルナリーさんからの電話にホッとした。




「うーん?暴露して大丈夫?でも、言ったら楽にはなるなあ。」




「ですよね。ガードナー家の事は少し私に任せて下さい。根回ししてみます!」




「まじで?出来れば大司教さんの権力で御願いします!!」


実は少々考えている事がある。


「では、ちょっと頑張ってみますね。また!」


そう言って電話を切った。




思った通り。あの子達の仲なら大丈夫だと信じて良かった。本当に青春!羨ましい限り。キャサリンさんとジェファーソン様の件が1番ホッとした。




後は邪魔者か。



権利者としての立場は対等。でも、金持ちなんですよね。ガードナー家って。



失敗したら私もこの地位を脅される可能性が高い。



しかし、勝率は8割と思ってます!

私と記憶は多分、正しい。




ガードナー家に電話して教会へパトリックを呼び出した。




何も知らないパトリック。来ましたね。信用されているのか警護人も無しと。




「お呼び出しすみません。」




「いえいえ。良かった!教会修理完了ですね!」


ガードナー家も修理費用を出してくれたので修理完了の確認で呼び出した。


パトリックは嬉しそうに床を見て回っている。




さて、勝率8割に賭けますよ!!


深呼吸して背後から声をかける。


『タケちゃんだよね?』


勿論、日本語で。


パトリックは驚いた顔で振り返った。




『違う?合ってるでしょ?』




パトリックは目を丸くして小さく頷いた。




勝った!!


1977年生まれの東大生、4年生で死去。そう何人も居ませんよね。



『大司教様?何者ですか?』


パトリックも日本語で聞いてきた。



『タケちゃんって呼ぶ人、他に居た?』


ニッコリと微笑む。全く昔から弄れて自信家で。友達も殆ど居ない頭だけが良いのが取り柄の困った子だった。だけど・・・・。




『兄ちゃん?』


パトリックは驚きで口をパクパクさせて。そして目にはウルウルと涙が浮かんで来ていた。




『兄ちゃんだよね?兄ちゃん!兄ちゃん!』


ガシッと抱き着いてきた。


『久しぶり。』


頭を撫でると号泣し出した。




『兄ちゃん!会いたかった!寂しかったよお!』


あーあ。本当にブラコンなんですよねー。うちの弟。




タケちゃん事タケシは3つ下の私に取っては可愛い弟。


私が適当に大学行って普通のサラリーマンになったのに小さい頃と変わらず懐きまくっていた大学生時代。


ショックだったよ。亡くなった時。




あぁ。泣かないつもりだったのに。


共に号泣。




落ち着いてきた弟に一言。


『タケちゃん。兄ちゃんの為にフラームさんの事は諦めて下さい。』


弟は拗ねた顔をする。でも、パトリックの時の高圧的な態度は欠片も無かった。




『あのね。ノネット・クライムは兄ちゃんが御願いしてプロデュースしているグループなんです。だから壊しちゃダメ!』


そう言うと。また拗ねた顔をする。


『そうだったの?ごめん。知らなかった。』




今は弟と言うより息子くらい年齢の離れてしまったパトリックの頭を優しく撫でる。


『ごめんね。』


『ううん。別にキャサリンさんが好きって訳じゃ無いし。』


そうでしょうねぇ。財閥目当てだったのでしょう。


経済大国にしたいか。何か考えるかなあ。




『兄ちゃん、テレビが見たいです。作って。』


弟はうーん?と考え込む。




『テレビ。作れるかも!!』


弟はめちゃくちゃ笑顔を見せた。




そう。工学部でしたからねー。あー。エレキギターも作れるかもなあ。




「さて、ボードウェン語に戻しますよ。」


「はい!大司教様!」


素直にパトリックは笑顔で頷いた。




「全く、大変だったんですよ。野望は解りますがやりすぎです!」


私が注意するとパトリックは溜息をついた。


「解ってたよ。でも、良い婚約者候補が全然居ないし。」




「子供の頃ならまだ居たでしょうに。理想のタイプは?」


誰か良い令嬢居なかったかなあ。。


そう聞くと




「姉上・・・・。姉上より美しくて気品ある女性は居ません!」


と真剣に訴えた。


前世はブラコンで今世はシスコンか・・・・・。



「なかなか厳しいね。理想が高すぎるよ。」


呆れながらも良い相手が居ないかなあと頭を回転させる。


めっちゃむずーい!




「大丈夫。そのうち頑張るからさ。兄ちゃん。いや、大司教様。俺、どうしよう。キャサリンさんとルナリーさんに謝らないと。」


パトリックは唇を尖らせて本音は謝りたくは無さそうだ。


仕方ないなあ。ダメだけど甘やかしてしまう。



「私が先ずは話をしておきますから。それからで良いですよ。」


そう言うとパトリックは兄ちゃんごめんねとまた抱き着いてきた。うんうん。この性格にしたのは私にも責任があるなあ。




パトリックはそれから暫く客間でお茶を飲んで一頻り喋って帰って行った。その社交性を他人に向ければ友達も増えるんですけどねぇ。


今世は頑張って躾をしないと。兄として!


でも、また甘やかしちゃいそう。




明日、学校へ話に行きましょうかね。私も暴露の決意が出来ました。


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