第260話輸入決定

朝から帰国前にラジオ機器の制作販売会社へ交渉へ。




朝食には二日酔いなのかアルマーニ王子は来なかったが外交担当なので着いてくるらしい。レコード販売の件もあるので着いてきて貰う必要はあるのだが困った次男だ。


「昨夜はすみません。私も同行しますので。」


とデイビス王子が苦笑い。苦労する三男坊。王位継承権は無いに等しいが彼が1番向いている気がする。




出発直前にアルマーニ王子と専属警護人達がゾロゾロとやって来た。


「あー。おはようございます。」


やはり二日酔いらしいアルマーニ王子は不機嫌な顔。




私達とデイビス王子はバスへ乗り込むがアルマーニ王子達は前世で言うリムジンに近い形状の車に乗り込んだ。


車も高級車がもうあるのか。やはり先進国だ。




城から車で30分程のやや郊外に工場と会社はあった。




社長らしき方が車まで出迎えに出てきた。


解らなくも無いが買う側の此方よりもアルマーニ王子へのゴマすりが半端ない社長さん。




社長さんに着いて社内へ入る。そうだなあ。工務店て感じの社内。平屋の事務所。


そして社内の応接室に案内された。




「ボードウェン国マッケンジー財閥のグレン・マッケンジーと申します。本日は宜しく御願いします。」


グレンさんと社長さんは握手を交わしていた。




応接室ソファに社長さん、アルマーニ王子、デイビス王子。向かい側ソファに王子とグレンさん。




私達は入口付近のテーブル席へ座って交渉を眺める感じ。




ラジオの値段は小型ラジオで100万円、大型の鉱石ラジオは10万円。それに関税がかかるのは変わらない感じ。




グレンさんは輸入数に応じての値引き交渉を始めた。




なかなか値引きには応じない。と言うより横からのアルマーニ王子が煩い。


「部品だけを輸入してこちらで組み立てる方法もあるけれど如何ですか?」


グレンさんの問に何故かアルマーニ王子が答える。




「そんなに目先の利益を優先しない方が良いですよ?そのうち我が国でも国内生産になると思いますよ?」


グレンさんは怒りもせず余裕の笑み。これはレコード販売の為の布石だろうなと昨日の話から察せる。




「いやいや、我が国の開発品はどんどん進化していますから、結局の所、パルドデアからの輸入品に勝るもの無しなんですよ。」


アルマーニ王子は自国至上主義なんだなあ。




「そうですね。パルドデア国の技術は素晴らしいです。」


グレンさんそろそろでしょうか?




「我が国も一方的輸入だと利益が無いですからね。」


一呼吸置いて




「この子達のレコード販売をパルドデア国で御願い出来ませんか?それと公演も行える様にして頂きたい。」




アルマーニ王子はん?と首を傾げる。




「良いじゃ無いですか!レコード販売!」


デイビス王子が笑顔で後押し。


アルマーニ王子は少し考えてから




「なるほど。子供の活動を応援するって事ですね。良いんじゃ無いですか?」


と軽くOKした。


アルマーニ王子は明らかに理解されていない。それで良いのだ。


彼は音楽を解って居ない。




ラジオは後々には自国生産をするのでそれまでは輸入。新商品のラジオが完成したらまた話し合うと言う事になり相手の良い値で輸入となった。


先ずは音響機器の設置。これは技術者をパルドデアへ派遣。




そして勿論、こちらのレコードもパルドデア国へ販売決定。


何と次回作も販売決定。の契約書を結ぶ。


公演は後日此方の予定も考慮して決定すると。




レコードに関しては最初は予約販売する事になりラジオ局で曲を流して貰うことも決まった。




販売のレコード店にも少々の利益を出す事と関税をかける事になるので販売価格はボードウェン国より高く4000円程度。




小さな利益だと思っているだろうが甘く見てはいけない。


ときっとアルマーニ王子はそのうち解るだろう。




ラジオ局の管理はデイビス王子が行っているそうで彼はしっかりと流しますと約束してくれた。




契約完了。




「ありがとうございました。」


社長さんにグレンさんは笑顔で握手を交わしていた。


アルマーニ王子もまあ嬉しそうだ。




弾丸ツアー終了。


空港への見送りはデイビス王子だけだった。




「兄が御迷惑おかけしました。」


デイビス王子は頭を下げる。




「いえいえ。こちらこそ。レコード販売引き受けて頂けて良かったです!」


王子は嬉しそうに微笑む。




「実はこのレコード売れるって解っているんです!噂は大使館職員から聞いてます!めちゃくちゃ名曲なんですよね?!」


デイビス王子は聞いて見たかったので嬉しい!と笑顔。




「兄上もハマると面白いんですけどねぇ。」


とニヤっと悪そうな笑みを浮かべた。デイビス王子も苦労しているのだろう。




また次回とデイビス王子に別れを告げ飛行船へ乗り込む。




「今回、出番なかった。」


会長が残念そうに呟く。


グレンさんは笑いながら


「面倒事と面倒な人物は任せときな。」


と優しく会長の頭をポンと撫でていた。






・・・・・・・・・・・・・・・・・




後日談になるがパルドデア国からレコードの発注が初回5000枚来ました。嬉しい悲鳴だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る