第245話絡まった糸を解いていこう
客間に王子以外は揃って居た。
「どうだった?」
会長が聞くのでキャサリンと顔を見合わせる。言っても良いのだろうか?言わないと何も始まらないか。
「先ずエリザベス様は衆道が好きな女性でした。」
皆の顔が驚きで口がポカンと開く。詳しく話すと男性陣は苦笑い。
「でも、皇太子の事は大好きみたい。趣味の話は本人にはしていなくて拗れている。」
会長は笑いながらなるほどねと言う。
「やる事沢山だねえ。」
そうなのだよ。
会長は腕組みして悩み出した。
王子と皇太子の仲直り。皇太子とエリザベス様の仲直り。
「シャッフルダンスしようか!」
会長がクライスの顔を見る。クライスは一瞬焦った顔をしたが頷いた。
「先ずはエリザベス様の趣味を披露しよう!そして皇太子様に打ち明けて貰う!」
うんうん。
「そして?」
会長はまた悩み出した。ブツブツと考えながら。私の傍に寄ってきて耳元で囁いた。
「いとしのエリーの楽譜書ける?」
「勿論!エリー?エリザベス?」
そうそうと会長は頷く。皇太子に歌わせよう!
果たして上手く行くかなあ?でも、楽譜を書き出す私。
「よし、皇太子に1曲披露させる!」
皆はうーん?と首を傾げながら頷く。歌ってくれるかなあ。
後はジェファーソンと皇太子か。会長が難しい顔をして唸る。
「エリザベス様とダミアン様が上手く行ったら流れで何とかなるんじゃないかなあ?」
カインも考えつつ意見。多分、皇太子は愛されていないと思っている訳だから愛されてると解れば懐柔しやすくなるよ?と言う。
「一理あるな。」
会長が頷く。
なかなか名案が浮かばず時間だけが経過してしまった。楽譜は完成したけれど。
「見せて。」
クライスがそう言って楽譜を受け取る。横からカインやジョージ達も眺める。
「へー!これエリザベス様の事だね!」
「姐さん流石だねー!」
感心した様にこれ歌わせたら確かに良いかもと納得してくれた。
「晩餐会始まりますよ。」
王子が憂鬱そうな顔で客間に迎えに来た。
やっぱり話し合いとか無理なんじゃないですかね。と言いながら苦笑い。
大丈夫!僕らが何とかしますよ!と会長が王子の肩を優しく叩く。王子は溜息をつきながら助けて下さいねと言って私達に懇願するような笑顔を向けた。
「1つだけ。食事が終わったら王様達には退出を御願いします。僕らだけで話しましょう。」
その提案に王子は頷いた。
晩餐会会場の席は少人数用になっていた。
座席は王様と王妃と王子、キャサリン、ダミアン皇太子、エリザベス様の席が上座に横並び。そして私達7人の席が長テーブルで前にある形。
王様と王妃を挟んで王子と皇太子は並ぶ形なので会話はこの場では難しそう。
「本日はお越しいただきありがとうございます。コンサートも行って頂き嬉しい限りです。」
王様が皇太子に話かけている。皇太子は愛想笑いを浮かべ素晴らしコンサートでしたと述べていた。
その後の食事中は無表情。エリザベス様とも話もしていない。
食事が終わり王子は王様に耳元で話をしている。退出の御願いだろう。
王様と王妃様は笑顔でお友達同士で仲良く交流されて下さいね。と退出された。王様達の退出で皇太子が不安そうな顔をしている。自分も退出しようかと立ち上がった。
「さあ、楽しいパーティーの始まりですよ。どうぞお掛け下さい。」
会長が皇太子に向かってニッコリと微笑んだ。ちょっと企んだ様な微笑みだが。
「ダンスでもしましょうか?!」
会長が声をかける。皇太子は無表情のまま取り敢えず席に付いた。
「シャッフルダンス!!」
そう声をかけると王子がぷッと吹き出し
「あれをやるんですか?いいですよ!」
と笑いだした。皇太子はそんな王子を不思議そうに眺めている。
「余興です。面白いので楽しんで下さいね。」
会長が皇太子に一礼。
クライスが立ち上がって会長の手を取る。ルイスと王子が立ち上がりルイスが王子の手を取った。私もキャサリンの手を取り淑女と紳士の礼をする。
音楽がかかりダンス開始。
「わー!!素敵!」
エリザベス様がそれはそれは嬉しそうな微笑みを浮かべる。
それを皇太子はええ?!と言う驚きの顔で見ている。
笑えるくらいハマっている。クライスと会長の密着感はまさに男女。ルイスと王子は何と言うか笑える。
キャサリンと私はチラチラと皇太子とエリザベス様の様子を伺う。めちゃくちゃ幸せそうなエリザベス様。手を胸の前で祈る様に組み恍惚の瞳。
ダンスが終わって皆でお辞儀。
「あぁ。やっぱりお似合いですー!」
エリザベス様が堪らず叫んだ。
「ダミアン様もジェファーソン様と!!踊って下さい!」
無茶振りの懇願。御願いします!ぜひ是非!とエリザベス様に御願いされて皇太子は顔をヒクヒクさせながら立ち上がった。
「あの。うちのエリザベスが・・・・。」
断われ無いんだろうなあ。王子の前に気不味そうにやって来た。
「あはは。これ楽しいですよね。やりましょー!」
王子はスっと手を出した。
会長は今度はカインを呼び一緒に踊ろうかと声を掛ける。カインは笑いながら会長の手を取った。
私もエミリアを呼んでもう1回。
曲がかかり複雑そうに踊る皇太子。
幸せそうなエリザベス様。もう先程よりも視線が熱い。
「尊いですわー!」
ダンスが終わり祈るエリザベス様。
「やっぱりダミアン様とジェファーソン様はお似合いー!」
エリザベス様が止まらない。
「エリザベス?あの。お似合い?」
皇太子はエリザベス様に苦笑しながら尋ねる。
「ええ!本当に長年の幼なじみの愛情ってやつでしょうか?もう見ていて幸せ。」
そう言った後で皇太子の複雑そうな顔を見てハッとした顔になった。妄想から戻ってこられた様だ。
「あの。その。私、男性同士の素敵な関係を見るのが好きでして。いっ・・今まで黙っててごめんなさい!」
エリザベス様は皇太子に頭を下げる。顔をあげて涙目で
「御願い。嫌いにならないで。婚約破棄とか言わないで!私、本当にダミアン様が大好きで。でも、この趣味も止められなくて。」
うぅぅ。涙を流し一生懸命訴える。
皇太子はポカーンと空いた口が塞がらずに立ち尽くして居た。
王子は察した様で愛想笑いを浮かべながらそっとキャサリンの元へ移動した。
「えーと。君は王妃になりたくて?その僕の地位が目当てで婚約したんじゃ?」
皇太子は戸惑いながらも苦しそうな顔でエリザベス様に尋ねる。
「まさか!違います!ダミアン様ほど聡明で可愛らしい方なんて国中捜してもいません!」
可愛い・・・。そう見れなくもない。顔は童顔だし。日本人が外国人から幼く見られるのと同じ感じだな。
皇太子はそれでも信用出来ない様な複雑そうな頑なな表情。
まあ、5歳からずっとひねくれたままなんだろうからなあ。
会長が皇太子の傍に寄って行く。また企んだ様な笑顔で肩をポンと叩く。
「さあ、愛があるならこれを一緒に歌いましょう。」
皇太子は楽譜を見てこれは君らが作った歌?と聞く。会長は笑顔で頷いた。
皇太子は歌詞で恥ずかしくなったのかちょっと顔を赤らめていたが会長が歌えますよね?と脅すようにまた肩を叩く。
「まあ、はい。歌います。」
皇太子が頷く。会長が目配せでクライス、カインと私を呼ぶ。
さあ、歌を披露しましょう。
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