第238話お泊まり2日目

練習が終わりマッケンジー家に帰宅しご飯も済ませた。


今日はグレンさん達も酒は飲まずにリビングルームで寛いでいると思わぬ訪問者がやって来た。




トントン。リビングルームの部屋がノックされる。


「旦那様、大司教様がお見えなのですが。」


執事さんの声だ。




皆で顔を見合わせる。


レアな客だなぁとグレンさんは小声で囁き


「出迎えるよ。」


と声を掛けていた。


「大司教さんどうしたんだろうなあ?」


「アーシェンバードの件だろ?」


状況確認かもなあ。と4人で立ち上がり玄関まで出迎えに行く。




「これはこれは大司教様良くお越し下さいました。」


グレンさんは使用人の手前、形式的に挨拶をし大司教さんをリビングルームに通す。


今日の大司教さんは何時もの司教さんの服では無くてスーツ姿に鞄とサラリーマンの様な格好でちょっとびっくりした。でも、似合う。




「夜に突然すみませんー。もう気になって仕方なくて!あっ格好はプライベートスタイルですよ。司祭衣装は目立ちますから。」


と言いながら席についた。やはり大司教さんはチケットを売ってしまった事を非常に気にしていた様だ。




「そう言えば、御結婚おめでとうございます。」


ありがとうございます。とお辞儀。




大司教さんの分のお茶とお茶菓子が運ばれてから本題に入る。




「すまねーな。この状態の俺達を知ってる使用人ばかりじゃなくてなあ。」


グレンさんが笑いながら大司教さんにお茶を勧めた。


「いえいえ。そんな事は気になさらず。」


大司教さんは笑いながら私何て教会関係者には威厳ある大司教しか見せてませんよ?と言っていた。




「チケット販売の初日朝イチにいきなりですよ。アーシェンバード教会から電話連絡が入りまして。」


大司教さんは呆れた様なゲンナリした顔で溜息を付いた。




「前から5列目のど真ん中!3席。」


1番見やすい良い席を!と今度は憤慨しながら。表情が忙しい。


3席って事は皇太子と婚約者と警護人か?皇太子と警護人2人だろうな。




「真ん中3席盛り上がらないのは舞台から見ていてムカつくな。」


ルイスが不愉快そうな顔をした。


「だよなあ。まあ、皆スタンディングするから見えないんじゃないか?」


そう言うとそーだよなーと笑い出した。もう皆立って見えない状態にしてしまえー。ファン達頑張ってくれよー!




「それでそのー。ジェファーソン様は?大丈夫です?」


大司教さんは不安そうに聞く。




「最初は酷かったぞ。」


でもその後はなあ?大丈夫になった。と話すと良かったと安堵の表情に変わった。




「大司教さんはどう思う?俺はダミアンが不細工でジェファーソンに突っかかって来てるんだと思うんだよなー。」


グレンさん言葉悪いっす。




大司教さんは言っていいのかな?前世仲間だから良いですよねー。と言いながら話出した。




「正確にはアーシェンバードの次男、皇太子の弟ですね。弟は王妃にそっくりで。明らかに可愛がられているみたいです。」




「家庭内の揉め事かよ。」


ローズさんが兄弟を差別して可愛いがる親は許せん!と怒り気味。


弟は6歳下だそうだ。5歳の王子と初喧嘩の時に王妃のお腹にいたって事かな?その辺から王子に絡みだし今に至ると。


「何か気の毒になってきたよ。」


私がそう言うと


「ジェファーソンには悪いけどちょっと可哀想だよな。」


ルイスも同意してくれた。


親に可愛がられない子供は弄れる。


それは根が深いコンプレックス。愛されたくて仕方ない。王子が羨ましい。弟が羨ましい。




「コンサート後に本音でぶちまけあおうか?」


「そうだな。腹に溜まったものを出させたら仲直り出来るかもな。」


うんうん。そうしたい。


大司教さんが何とか御願いします。と頭を下げる。




「取り敢えずジェファーソン様が大丈夫で良かったです。本当に私、責められるかとヒヤヒヤしてました。あー良かった!」


大司教さんはホッした顔で所で飲みませんか?と言いながら鞄から酒瓶を取り出した。




「昨日、飲みすぎて朝、二日酔いだったんだけどなあ。」


と2人は言いながらも何の酒?と聞く。




「プラゲ国産の芋焼酎です!」


大司教さんがニヤっと笑うと2人は


「飲む!!」


と声を揃えてガッツポーズ。


でしょ?飲みたいですよねーと大司教さんも嬉しそう。


大司教さん個人輸入しまくってるな。




「やっぱり焼酎良いですよね。一緒に飲みたかったんです。」


王子の件よりこっちが本題だったのかもしれないな。




今日の大司教さんはサラリーマンにしか見えないし。




グレンさんはグラスとおツマミなりそうな物を持ってきて乾杯と飲みニケーションが始まった。




大人はほっといて寝るかとルイスと交代で風呂に入る。




「若いって良いですねぇ。」


「だろー?やり過ぎるなよー!」


「大司教さんも総長もおっさん!!」


言い返すと2人は大笑い。


おっさん2人に見送られてルイスの部屋に向かう。全く困ったおっさん達だよ。






トントン。入るぞー!と声をかけルイスの部屋に入る。


「全くー!おっさん達にいじられたー!」


嘆くとルイスにやっぱり精神的には若いけどおっさんなんだよなあと笑った。




ベッドにゴロンと寝っ転がる。


「大司教さん、サラリーマンにしか見えなかったなあ。」


「うん。似合うなあ。流石営業マン。」


最近、ルイスとゆっくり話す機会が増えて嬉しい。


寝っ転がって頬杖ついて。




「私は一人っ子だから解らないけど親に比べられるって辛いって言うよな。兄弟とか姉妹とか。」




「俺もジェファーソンも平和な家族に恵まれてるんだよな。」


難しい問題だよね。親も万能じゃない。聖人でもないし。平等ってきっと思う以上に難しいんだ。


ふと前世の私の母親を思い出した。親子らしい事した記憶無いな。




「私らも将来は良い親になれると良いな。」


そうだな。将来なとルイスが頭を撫でる。


愛する人が居て。愛されて。それがどれほど幸福な事か身に染みる。




「ルナリー。」


「ん?」


ルイスが優しくキスしてくる。




「今日も?」


するのか。


「うん。」




「あのさあ。まだ恥ずかしいんだー。照れるんだよ。」


「こうやって押し倒してる俺も本当はめっちゃ照れるんだけどな。」


そうか。お互い照れてるのか。ちょっと安心した。




明るいと本当に照れるので電気を消す。




長いキス。


それだけで身体が火照る。




顔はきっと照れて赤いだろう。暗闇で顔色は見えないけれど。




やっぱり恥ずかしいです。自分の反応に慣れない。。

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