第235話キャサリンの家に招かれて・・・

練習が終わり校門までいつもの様にキャサリンと話しながら歩く。


今日は皆に沢山、気を使わせちゃったよね。


「今日はごめん。キャサリン。」


電話の件とかその後の事とか。


キャサリンはきょとんとした顔で僕を見る。


「え?どうしたんですか?」


気にしてないのかな。




「いや、大司教様からの電話の話とか。その後の事とかさあ。」


本当に大人気無かった。


深く反省中。本当にあの皇太子の事になると頭に血が上る。


イライラの根源。幼少期から世界で1番苦手な相手。




「たまには!我が家に来ませんか?ゆっくりお話しましょ!」


キャサリンがニッコリと笑う。


僕はその申し出にちょっとびっくりしたけど頷いた。




キャサリンの家、久しぶりだなあ。皆で来て以来かも。


最近は城に来て貰う事が多かったし。




警護人に話をつけ運転手にフラーム家に向かうように伝える。


フラーム家から城には電話しよう。




フラーム家は警護もしっかりしているから家の中では自由だし何か考えたら少しストレスが軽減してきた。やっぱりキャサリンって僕の事、良く解ってくれている。




フラーム家に到着!


フラーム家は門構えがお洒落。お義父様の趣味なんだろうなあ。


屋敷の中も内装が凝っていてクライスやルイスの家とはまた違う雰囲気なんだよね。警護人に電話をする様にお願いして僕とキャサリンは家の中へ。


執事がこれはジェファーソン様!お久しぶりですと恭しくお辞儀して迎えてくれる。




「ジェファーソン。ちょっとお父様、お母様に挨拶したら私の部屋に・・・どうぞ。」


キャサリンが照れた様に微笑む。


キャサリンの部屋!!僕も照れる!




いつも優しそうなキャサリンの御両親に挨拶。2人とも突然の訪問なのに嬉しそうで僕も嬉しくなる。


「ジェファーソンと部屋でお話したいので。お茶をお願いしますね。」


キャサリンが使用人にお願いしている。御両親も娘の部屋に僕が入ると言うのを嫌な顔もせず寧ろ笑顔で婚約者として歓迎されているんだなあと安心感。


あー。嬉しい。




キャサリンの部屋は2階。小学校以来か!?


「どうぞ。」


キャサリンが部屋のドアを開け招き入れてくれる。


「ありがとう。本当に久しぶりだね。」




わー!あの頃はぬいぐるみとかがいっぱいあった子供部屋だったのに今は大人な感じの部屋になってる!




あのベッドでキャサリン寝てるんだ。


って何を考えているんだ!もう何だかアーシェンバード皇太子の事なんか忘れそうになるくらい舞い上がっている自分が居て。取り敢えず落ち着こう。


「ジェファーソンどうぞ座って。」




女の子らしい可愛い丸テーブルと椅子のセット。


いつもここでお茶飲んでいるのかなあ。




座るタイミングに合わせる様に使用人がお茶とお茶菓子を運んでくる。少し甘い物も食べたいと思っていたから嬉しい。




「ありがとうね。」


紅茶の香りが癒される。




「ううん。私、謝りたくて。」


キャサリンは大司教様からの電話の内容に焦ってしまって皆の前で話してしまったことを本当にごめんなさい!!と謝ってきた。




「キャサリンは悪くないよ。僕は本当に大人気無かった。」


お互いにごめんなさい。


目が合って笑い出してしまった。




「コンサートに来ると決まった以上は皆に隠す事なんて出来ないししたくないしね。」


当日に解るよりも構えられる分ましだ。


突然、出会ってしまったら今日の様な状態になっていただろう。




「何であんなに絡んで来るんでしょうね。」


キャサリンが溜息をつく。




「解らない。これは本当に見当もつかないよ。」


僕も溜息をつく。




「出会った時からかなあ。剣技の自慢、ピアノの自慢、何かにつけて対決しようとしてくるんだよね。」


剣技は勝てなかったけど、音楽対決では負けた事は無い。




「音楽対決でいつも僕が勝つから気に食わないのかもね。」


負けず嫌いなんだろうなあ。




「ピアノでジェファーソンには勝てる訳無いですもんね。」


キャサリンもそれが絡む理由かなっと頷く。




5歳。初めての取っ組み合いの喧嘩。理由は確か?僕の玩具を壊されたからだった。


7歳。クライス、ルイス、キャサリンも交えて遊んでいる最中に大喧嘩。3人の悪口を言われたからだったかな。




その後はイマイチ多すぎて理由を覚えていない。




「喧嘩になるのに何故来るんでしょうねぇ。」


キャサリンが言うのも最もだ。そこが1番の疑問!!




「多分、コンサートを馬鹿にしたいんだよ。新しい音楽を馬鹿にしてそれでスッキリ帰る気じゃないかな。」




「例え馬鹿にされても僕は言い返さない。彼に理解される必要は無いし認めてくれるファンが沢山いるし。」




あっ。またイライラしている。この12年の喧嘩の蓄積か。


10歳くらいから対決はしても喧嘩にならない様に避けてきたストレスか。




キャサリンが立ち上がって僕の頭をギュッと抱き締めてきた。


「ジェファーソン。皇太子か馬鹿にしてきたら皆で文句言っちゃいましょ。我慢し過ぎですよ。」




「そうだね。言ったら楽になるか。」


キャサリンの腕が優しい。




「外交は対等の関係ですよ。ジェファーソンだけ我慢する必要は無いです。」


確かにその通りなんだ。ボードウェンとアーシェンバードは立場は対等。引けを取る必要なんて無いのに。




「キャサリン。」


抱き締められたままキャサリンの顔を見上げる。


「キスしたい。」


そう言うとキャサリンはもう!と言いながら微笑んでそのままキスをしてきた。




もっとしたい。


「膝に座って。」


キャサリンはジェファーソンの膝に!?と驚いたけど。頷くと頬を赤らめて恥ずかしそうに座った。




そのまま抱き抱えた状態でキスをする。


密着で体温が伝わる。僕の膝の上に座り腕の中にいるキャサリン。


ダメだ。興奮する。


触れたい。


首筋にもキスをする。キャサリンがビクッと跳ねて小さく声を上げる。


「ジェファーソン、ダメ。」


うん。解っている。でも、もう少しだけ。




赤くなった頬と潤んだ瞳を見ると愛おしくてもう一度唇を重ねた。




「ごめん。どうしてもしたかった!」


キスした首筋を抑えて恥ずかしそうに僕を見詰めるキャサリンに謝る。


「いえ。あの。えと。。」


オタオタするキャサリンの頭を優しく撫でる。


しまった。やり過ぎた。




まだルイスにその手の話も聞いて無いし。ダメだ。本当に気をつけよう。




「ジェファーソン。その。する時はジェファーソンのお部屋が良いです・・・。」


キャサリンが恥ずかしそうに俯く。


そうだよね!御両親も居るし。本当に暴走に気をつけよう。




「うん。キャサリン、大好きだよ。」


何時の時も僕の1番の理解者で1番大事な人。


「ジェファーソン、私も大好きです。」


微笑むキャサリンに誓う。




コンサート、絶対成功させて奴をギャフンと言わせる!と。

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