第220話ミサコンサートが出来ない!?

レッスンルームで次のミサコンサートの話し合い中の出来事だった。私とルイスも今日は話し合いに参加中。




コンコン!


「すみません。入りますよ?」


大司教さんの声だ。




「大司教様、こんにちは!どうしました?」


皆で笑顔で迎える。


正月の餅つき以来だなあ。




大司教さんの顔色が優れない。


「大変申し訳無いんですが1~2ヶ月ミサコンサートを中止して下さい。」


大司教さんがそう言って頭を下げる。


「何で?誰か反対したの?」


そんな奴は居ないと思うんだけど。




「あのですね。。。床が抜けたんですよ。。」


大司教さんが大きく溜息をついた。




「床ーー?!」


皆、思わずハモってしまった。




「えっ?築何十年でしたっけ?そんなに老朽化してました?」


国立教会だ。王子がめちゃくちゃ焦っている。




「シロアリが原因みたいです。。床は木材ですから。」


大司教さんが再び溜息をついた。


そう言われると最近、ギシギシしていた気がする。




「大工事になりそうなんですよ。消毒もしないといけないし。」


床が抜けた部分だけではシロアリ被害は広がる可能性がある。


まさかの礼拝堂の半面剥いでの張り替え。




「王様には連絡済で工事も明日から決行します。取り敢えず王様はコンサートが出来ない事を心配されていたので学校まで出向いた次第です。」


大司教さんは申し訳無いと頭を下げた。




「いやいや、頭を上げて下さい。大司教様の責任では無いですし。」


王子が大司教さんにコンサートより工事優先と告げる。




「大礼拝堂はやっぱり使えないですよね?」


普通はクリスマスミサ等の特別行事しか使えない。1度利用させては貰えたが通常は不可なのだ。




大司教さんはどうしようと非常に困った顔をしていて聞いた王子が慌てていた。




ミサコンサートは2週間後の予定だった。


今から何処か借りてやるか?




「今月は中止にして来月場所を探してやりますか?」


「市民ホール?」




コンサートは私のコンクールが終わってからの4月にしようかと言う話を進めていた。


まあ、全然コンサートやっても構わない。収入有難いし。




王子が手を上げる。


「あの。この前から考えていたんですがレコード販売しませんか?」


と呼び掛けた。




「確かに売れそう。」


レコード販売は私も賛成。テレビが無い以上広めるには最適だと思う。




「レコードか私にもツテがありますよ?」


信者の中にレコード制作会社を経営している人がいるそうだ。




「採算取れますかね?」


クライスが大司教さんに尋ねた。問題はそこだろうなあ。




「制作費とジャケット撮影と宣伝費用を出さないとまだ解らないね。」


会長は大司教さんに詳しく話を聞きながらノートに計算を始めた。


レコード制作はやはり枚数が増えると値引きが入る。


「僕らの場合は自主制作になるから案外利益入るな。」


会長が計算途中だが手を止めて言った。




「クラシックと違って版権代がかからない。置いてもらう店に払う金額くらいかな。後は制作費より高く売れば売れただけ儲かる。」


なるほど!オペラ歌手と違って所属楽団にお金払う必要もないし版権は無いし。今、歌わせて貰っている曲は前世の歌だから勿論、版権なし!




「お詫びに詳しく話を制作会社に通します。それで決めましょう!」


大司教さんは明日連絡しますと言って工事業者と打ち合わせがあるので今日の所はこれで!と


また申し訳無いと謝ってバタバタと帰って行った。




「床かー。まさか抜けるとはね。」


大司教さんが帰って徐ろにキャサリンが苦笑しながら言った。


「これもレコード販売しろって神のお告げかもしれないですよ?」


王子が笑いながら皆を見る。


元々、販売も考えていたしちょっと早まったって事だよな。




「レコードの大きさと曲数も決めないとなあ。」


普通のクラシックは1番大きい12インチ?かな。




「10インチとか7インチで少ない曲数でも有りですよね。」


確かに。とカインの意見に頷く。




「やっぱり俺達の顔や振り付けが見えないから本当にウケそうな曲だけが良いんじゃねーかなー?」


ルイスが机に頬杖ついて皆に投げ掛ける。




「声と楽曲勝負ね。」


うんうんとキャサリンが頷く。




金額等と照らし合わせて楽曲は絞る。


話し合いは明日へ持ち越しとなった。

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