第170話9月の予定
翌日は王子も学校に来たので昨日のうちに曲決めを済ませといて良かった。
「えっとですね。ミサコンサートは来週。そして新学期。僕は誕生日前であんまり練習出来なくて申し訳ない。」
王子のご報告。宿題終わるかな。それだけが不安。王子は誕生日パーティーまでは暫く招待状を出したり忙しいらしい。
「そして!!9月末に市民ホールでコンサートを開催します!!」
突然の発言に皆、固まった。
「えっ?金取るの?」
「はい!取ります!何故なら会長のタイムリミットは9月でしょう?」
そうだった。先行きが見えなければ会長は音大へ行くか楽団へのオーディションを受ける立場になるんだ。
「市民ホールか、あれ何人収容だっけ?」
「大ホール、中ホール、小ホールで違いますよ。」
市民ホール自体が国立ホールに比べたら本当に小さいんだけどそれでも大ホール500人、中ホール300人、小ホール150人くらいだそうだ。
無言の時間が続いた。教会は無料だから皆、集まるんだよなあ。
「教会のミサで100人くらいは来てるかな?」
「軽く100人は来てますね。先月は立ち見が居たから150人くらいかな?」
そうか。小ホールくらいは埋まるのか。お金を取ってでも来るかって事だよね。
「はい!チケット代はいくらにするんですか?」
エミリアが挙手。
「30ボードウェンドルくらい?」
3000円くらいか。
「庶民の意見としては微妙に高いかと思う。」
エミリアと私は同意見。
「会場を借りて僕らに還元するのを考えたらそれが妥当なんです。稼ぎが無いと会長の御家族が納得されない。」
「僕の事は気にしないで大丈夫だよ。まあ、納得させるのは大変かもしれないけど。」
会長は申し訳なさそうにしている。
ボードウェン国立管弦楽団のチケットが80ボードウェンドルから120ボードウェンドルだっけ?
約3分の1の値段か。
開催まで1ヶ月しかないから集客が厳しくないか?
高くないか?兎に角、徹底討論。
「はい!大ホールで行けると思う!」
カインが考えた末にそう意見した。
「何故なら!アリア学院の生徒に最終的に売りつければいける!」
各科20人の4クラスの3学年。240人ね。
「全員買わなくても校内だけで100はいける筈だよ。」
やるか大ホール500人?
気は大きいのだが金の事になると庶民は気が小さい。
不安で仕方ない。
「そう言って貰えて良かったです!実は大ホール予約しちゃったんですよ。」
王子?まじかー。相変わらずだな。
「ジェファーソン。そんな事だと思ったわ。」
キャサリンでさえ苦笑いしていた。
「やりますか!こうなったらやりましょう!」
会長が決意した様に大きな声を出す。
「やりましょう!本当のデビュー戦ですよ!」
9人で円陣を組んでエイエイオー!!と一声上げて気合いを入れた。
「8月のミサコンサートは1曲にしましょう。後の新曲は市民ホールに取って置く。」
「Jupiter、宇宙のファンタジー、サマーバケーションが現在の披露曲。それに異国の友へ、島唄。ルナリーのソロ曲のワダツミの木。」
「ミサでも披露するから完全新曲は2曲。」
皆、ブツブツ独り言を言いながら考え事をしている。
「8~10曲は入りますよね?」
「足りるかな?」
「クリスマスミサの曲も入れる?」
「うーん?そしたら2曲は埋まるか。」
討論が止まらない。
「ソロ他に歌ってみたい人いる?」
会長が提案するが誰も手を挙げない。
「じゃ、男性だけと女性だけに分けて1曲ずつ作ろうか。」
面白いかもなあ。
「後はプラゲ国の楽器演奏とかしても良いかもですね。」
エミリアが提案する。
午前中は全部討論会になってしまった。
お弁当を食べながらも話し合いが続く。
「もう、新しい曲が思い付いたら順番気にせず作って行く方が今後の為になるかもしれないですね。」
王子がハムを乗せたバケットを食べながら。
「作詞でも作曲でも良いですよね。何かプラゲ国に行ってからちょっと出来そうな気がしてきた。」
野菜たっぷりサンドイッチが溢れそうなジョージ。
結構、皆自信が付いて来たのかもなあ。
新たな楽器や音楽に触れると固定観念が崩れる。
「話し変えて済みませんが。9月で僕、生徒会長引退なんですよね。」
えー?!忘れてた!
「でね、今後の遠征に知らない人を連れて行きたくないからこの中から誰か会長になりませんか?」
皆、顔を見合わせる。
会長の言う事は最もだ。音楽関係の遠征は生徒会長が同伴しないと学校が煩い。
「会長のあだ名どうしよう。元会長?」
私がボソリと呟くと会長は爆笑していた。
「いや、大事ですよ!ケビンが良いですか?でも会長は会長だー。」
クライスもちょっと真剣。
もう会長で良いですよと会長は笑い続けていた。
「で、生徒会長誰か立候補して下さいね。」
うーん?生徒会長ねえ。
「カインが良いと思う!」
ジョージがニヤっと笑ってカインを見た。
「うん。カインですね。」
「ぴったりだ。」
本人だけが嫌そうな顔をしていたが最終的には納得していた。
新曲作って曲練習とミサコンサート。
宿題する暇あるのかなあ。
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