第162話会長の歌いたい曲
早朝にガタガタと揺れる窓の音で目が覚めた。
「台風か!」
キャサリンは眠そうに何ー?と起きた。
「起こしたか。ごめんな。何か外がゴォーって言ってる。」
「あー。台風。こんなもんよ。」
とまた布団を被ってしまった。
エミリア起きないし。
6時か。あと1時間寝るか起きるか。起きよう!
暇だしルイスでも起こすか。ドアをノックすると会長の声がした。
「あれ?会長も起きたんだ?」
凄い嵐だと思って目が覚めたと言っていた。大司教さんもすっかり目覚めていて、ルイスはベッドでぼーっとしている。
「おはよう。」
「はえーな。まだ眠い。」
だろうな。1時間寝れる所を起きたんだ。
「起きたてだけど歌っていい?」
会長、元気だなー。沖縄の曲作るって張り切ってたけど。
あんまし声出ないけど。そう言って会長は比較的高音の歌を歌い出した。大司教さんは知っている様だ。
ワダツミの木。奄美の民謡の曲調らしいその曲は初めて聞いた私の心をガッチリ掴む。
また聞きたい。いや、私が歌いたい。
「これがルナリーのソロ曲だよ。」
会長はもう少し声が起きたら楽譜に起こすからと言ってくれた。
「私に歌えるかな。結構難しいっすよね?」
だから今日は民謡の練習するんじゃないか!と会長はめっちゃ笑顔だ。大司教さんは元ち〇せさんの曲でしたかと嬉しそうだ。
「良い曲じゃん。」
曲を聞いてルイスも目覚めた様だ。
「後は島唄だなあ。」
外の風が更に強くなって来た。
窓の外の音が激しい。
そろそろ皆も起きた頃だろうと客間へ向か、、えない。
外廊下は暴風雨。
城って離れが多過ぎるんだよね。
外廊下に皆も集まってきて濡れない距離で外を眺めている。
「嵐ですね。」
王子が言った。
「こんなに酷いとは。」
初めて見る台風に皆、唖然としている。私自身もこんな勢力も弱まっていない直撃は初めてで。前世の事だけどニュースでしか知らないと言う事が恥ずかしくなった。
「民間の方は大丈夫なんですかね?」
カインは昨日訪れた家の方の心配をしていた。本当に大丈夫なのかな。猛烈な暴風雨だ。
女官達が此方にいらっしゃいましたかとバタバタと寄ってきた。
外廊下を通らずに行ける別の廊下もあるらしい。
「すみません。知らなくて。」
「こちらこそすみません。」
と案内される。逆方向に進んで曲がると別の棟に行けたんだ。
ボードウェン城も迷いそうな広さだけど首里城も迷うな。広い。
朝食を軽く済ませて一部屋お借りして民謡の稽古、三線の稽古、作詞に分かれて台風の過ぎるのを待つことにした。
歌詞担当はキャサリンと会長とルイス。
私はひたすら歌の練習。勿論、カインとクライスも。
ジェファーソン達は三線の稽古。
ジェファーソンが作曲した亊の曲。華やかで雅。
亊を五線譜の楽譜に起こす作業は既にジェファーソンが済ませていてくれたのでキャサリンとルイスが試行錯誤している模様。
会長は首里城の護衛の人に琉球言葉を習っていた。
「ビブラートが独特で難しいですね。」
「そーなんだよなあ。声楽と違う。」
「黒人霊歌を学んだ時よりも固定概念を捨てなきゃ歌えない。」
私達もなかなか苦労している。今日でマスターする気なのでかなり本気モードなのだ。
元々3人とも耳コピーが得意なのだが言葉にも苦戦中。
「1回、楽譜にして見よう。」
民謡の先生に御願いして歌ってもらう。
裏声からビブラートも歌い回しも全部音符に起こしてみた。
うん!歌えそう!
本来はこういう風に歌う物では無いかもしれないが、楽譜があると落ち着く。
歌いながら細かくブレス位置やクレッシェンド、デクレッシェンドも記入。
「ほい、クライス、カインも見て歌ってみよー。」
渡すと流石、姐さん。と笑いながら試して見た。
おお!歌えるじゃないか。
「どうですか?!」
民謡の先生は凄く良くなったと褒めてくれた。
難しいけど楽しい。会長が沖縄好きって言うのが解ってきた。
「ルナリー、ちょっとこっち来て。」
会長に呼ばれたので行くと
学んで歌詞を作ったアピールのワダツミの木が出来て居た。
「後は楽譜に起こすだけ。」
会長はニヤりと笑う。朝からだいたい聞いたから覚えているけど。
「会長はなんでこの曲好きなの?」
綺麗な曲だけど。
「心が病んでる時に癒されたんだよね。そんな思い出の曲。」
と言った。
それは心を込めてそして会長の思った通りに歌える様にならないとね。
音域は私の声で問題ないけど歌い回しや民謡独特の感じが厳しいなあ。
楽譜を作り更に注意点を書き込んで。
良し!歌ってみよう!!
「赤く錆びた 月の夜に 」
「そこの錆びたの部分はもっとビブラート気味。」
出だしから突っ込まれる。むーずーかーしー。
「夜にの部分は素直に音階を歌うんじゃなくて。習った民謡を思い出して。」
むーずーかーしー。
原曲を聞いた事無い私にマスター出来るんだろうか。。
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