第132話お・も・て・な・し

「まさに日本人って感じね。本音を言わない所とか。」


パーティー会場へ向かう途中キャサリンが言った。


「トクガワさんもパルドデアの愚痴三昧だった。」


私がトクガワさんの愚痴を話すと苦笑いしていた。




「会長!聞いてきた!」


パーティー会場は立食予定だったようで席を設けている最中だった。


「キャサリン!ルナリー!会長に聞いたよ。何だって?」


会長より先に王子が反応した。


「えーと。あっさり系。」


「ナツメさんは魚と。」


私達の報告に王子は眉間に皺を寄せて考え混み出した。




「あっさりした物かそれに魚。何か思った通りだね。」


会長は辞書をペラペラと捲り出した。




「ジェファーソン。ここ見て。」


辞書の魚と言う単語の例文に


『魚は塩焼きが美味い。』と書いてあった。




「塩?それだけ?」


王子はびっくりしていた。


「両方出したらどうかな?塩焼きと。アクアパッツァあたりならあっさり系だし。」


「アクアパッツァか。いいね。会長も厨房に着いてきて。」


王子と会長は料理長と話し合うと言って会場を後にした。




「そうだー!なあ、キャサリン、適当に庭の木の枝切って良い?」


「何する気?!」


「箸作る!焼き魚は箸だ!」


俺も手伝うとルイスも着いてきて来た。ナイフと紙ヤスリが有れば割り箸くらい作れる。


木の枝のちょっと太いのを切ってきて2人で削って作っているとキャサリンから器用よねと言われた。


平成生まれは鉛筆も削れ無いらしい。




「ルナリー!ちょっと良い?米、鍋で炊ける?」


会長がバタバタとやって来た。私達が箸を作っているのを見て感動してくれた。米?あるの?と聞くと南ピアーナから少し輸入したらしい。


「焼き魚にはご飯だね!」


初めチョロチョロ中パッパ〜と。


料理は苦手だが米炊く知識くらいはある。箸はルイスに任せて鍋で米を炊く。




本日の御品書き


バーニャカウダ


カプレーゼ


白身魚のアクアパッツァ


鯛の塩焼き(会長監修)


マルゲリータ


白ご飯


コンソメと野菜のスープ(極めて薄味)


デザート




私達も食べるのでこってりしたピザは外せなかった。






夕食の歓迎パーティーが始まった。




「本日はボードウェン国にお越し頂きありがとうございます。


プラゲ語やプラゲ国の事を学ぶ機会を与えて頂き感謝致します。」


と頭を下げた。


会長が立ち上がり


『お口に合うかわかりませんがどうぞお召し上がりください。』


とプラゲ語で言うとトクガワさんとナツメさんは、感心した様な顔をした。




ナイフ、フォークが置かれているが。使用人に頼んで料理を運ぶ時にそっと箸を置いて貰った。


それを見てトクガワさんとナツメさんの目が大きく見開いた。


「上手く出来て居ないかもしれないのですが。」


王子はトクガワさんとナツメさんには先ず焼き魚とご飯を出した。私達はドキドキしながら反応を見る。




他の料理は後回し。


『まさか焼き魚が出てくるとは。やりますね。』


とプラゲ語でナツメさんがびっくりした様に言った。


『やるでは無いか!箸とはのお。』


トクガワさんは箸で綺麗に身を取りパクリと口に入れた。


『美味じゃ!』


ご飯もパクリと口に入れ満足そうに咀嚼する。




『プラゲ国を出て2週間。久しぶりのまともなご飯ですね。』


ナツメさんも焼き魚を堪能している。


そして英語で


「美味しいです。ありがとうございます。」


と言われた。


おもてなし成功!!




その後はアクアパッツァやマルゲリータ等も振る舞った。


私達も美味しく頂く。


箸を使いたい所なのだがナイフとフォークで焼き魚を食べご飯を口に入れる。めっちゃ美味い!うまーい!


塩焼き最高!




ご飯が美味いと話が弾む。


すっかりトクガワさんとナツメさんはご機嫌だ。




「この魚料理も美味しいです。」


アクアパッツァも笑顔で食べてくれている。




「ボードウェン国は良い国じゃ。」


バーニャカウダをポリポリ食べながらトクガワさんはワインを呑まれている。


「お酒は何歳から呑めるんですか?」


会長が聞くと元服したらと言った。


「でも15歳くらいからですかね?あまり子供の頃は呑みませんよ。」


とナツメさんは言った。


ボードウェン国の法律は18歳からだ。前世の日本より成人が早い。今のプラゲ国もそうなんだなあ。




酒が入ると更に饒舌になる。


やはりトクガワさんは徳川光国さん、ナツメさんは夏目金之助さんであった。


徳川さんは将軍管轄で夏目さんは総理管轄。




全部プラゲ語で話始めたので多分、皆は完全には解っていないだろう。




プラゲ国には飛行船も車もやはりあるそうだ。




『三線や笛、鼓、尺八や笙が欲しいのですが。何処で買えますか?』


会長がプラゲ語で尋ねる。


『三線は琉球、後はプラネットか京ですね。あー。音楽楽器の輸入でしたね。』


夏目さんが笑顔で説明してくれた。


『是非、能と歌舞伎も見て行かれよ。』


徳川さんが京とプラネットには行くべきだと言われた。




「会長、凄いですね。話せてる。」


王子は少し羨ましそうだった。


「辞書読みまくったからね。」


とふふっと会長は笑っている。私もキャサリンもルイスも話せます。まだ話せないフリを続けます。


彼等が滞在中に話せる様になった風で行こうと思っている。




最後のデザートはフルーツ盛り合わせにした。




徳川さんも夏目さんも美味しいと堪能してくれた。




明日は朝からプラゲ語のレッスンをしてくれると約束してくれ本日はお開きとなった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る