第92話キャサリンと会長とルイスの企み


「なるほどねー。大司教様は歌謡曲に飢えてるって事か。」


会長はペンをクルクルと指で回しながら考えている。




「権力者ですからある程度の事は許されるとは思うんですけど。最終的には秋〇康さんみたいな事したいみたい。」


私がそう言うと




「おニャ〇子か!?」「A〇B48?!」


2人が同時に叫んだ。世代差が面白い。




「絶対嫌だ。無理。」


「同感!アイドルは無理だ。」


でしょうね。私もちょっとその路線はキツイもん。




「この国でウケる歌謡曲ねえ。」


会長は腕組みをして考え込んでしまった。




「あれ?止められるかと思ったけど会長やる気なんですか?」


と言うと


「あー。次は3年になるからさあ。卒業後の進路悩んでて。まだ会社継ぐ気はないし。声楽家で食べて行くのか?何処か楽団に入るか。音大に行くか。で、この話が来た訳だよ。成功したら楽しそうでしょ?」


会長は笑いながらそう言った。




「進路か。確かにめんどくせーよなあ。音楽やり続けてーけど。兄貴が財閥は継ぐけど全く関わらない訳にもいかねーし。」


ルイスも考えてるんだなあ。私はジェファーソン様と結婚!としか考えていなかったなあ。




「この大司教様の計画が成功したらずっと皆と遊べるしねー。」


会長の一言が大きかった。


そうだよね。本格的にやれたら皆と卒業後も一緒に居られるのか!




「やりましょうか!!」


「進路変更が可能な9月まで。」


会長は冷静に言って微笑んだ。


了解!私もルイスも微笑んだ。




デビュー曲か。全然思いつかない。


「あるじゃないか!!」


会長がバンと机を叩き立ち上がった。




「ホルスト!惑星!!」


会長は叫んだ。




「あっ。。Jupiter!」


超流行ったぁ!そして原曲がクラシック!




ルイスだけは解っていなかった。そうだよね。


「ホルストは知ってるし惑星も解る。それ流行ったのか?」


会長と私は大きく頷いた。




「良いヴァイオリンにチェロもピアノもいるし、後のメンバーは歌えば良いし。」


「なるほど。今回はヴァイオリンで良いんだな。楽勝だな。」


解らないままルイスは納得した様だ。




私と会長は歌って聞かせた。


前世は難しくて歌えなかったんだよねー。今は歌える身体が嬉しい。


「良いアレンジと良い歌じゃん!これはウケる!」


3人は悪巧みの様な笑いを浮かべ放課後レッスンルームで!と一時解散した。






放課後。


やる事が無くて集まる私達。ルナリーだけは頑張っている。




私は大司教様からの依頼を伝えた。


話をしている最中からジェファーソン様の目がキラキラしているのが解った。うん、やっぱり。




話が終わるや否や


「皆、やろうよ!大司教様のお願いだしね!」


ジェファーソン様は立ち上がりそれは嬉しそうな笑顔で微笑まれた。


「俺は賛成ー!」


ルイスが手を上げた。


「僕は卒業後の進路をどうするかまだ決めていないので9月頃までなら参加します。」


会長が賛成する。後の皆はどう考えたかなあ。




「退屈してたんだよね。」


クライスがニッコリと微笑んだ。


「同感。暇だなーって。」


「僕もやりたいです。皆と立つ舞台が楽しくて止められない!」


「私も!一緒に何かやるのって本当に楽しい。」


カインもジョージもエミリアも。


皆、何かに飢えていたのね。




「ルナリーのコンクール後の5月くらいを予定で良いかしら?」


ジェファーソン様が真っ先に大きく頷いた。




「新しいジャンルの曲はキャサリンにお願いして良いのかな?」


本当にジェファーソン様が嬉しそうだ。ここ最近、何かやりたいってずっと言ってたもんなあ。


待って、今、歌った曲を楽譜に起こすプロがコンクールで忙しい。


私だけでやるのー?会長も曲を知っているけれど。


絶対2人でやるとか言わないだろうな。


「取り敢えず考えて見ますね。」


そう答えるしか無かった。




「楽しみですね。クラシックでは無い新境地か。」


「ウケる曲ってどんな感じが良いんだろうなあ。」


クライスとカインがのほほんと話している。決まってはいるのよ。問題は楽譜よ楽譜!!




明日は1年の終わりの終了式。明後日からは春休み。




確実に皆、やる気満々だ。




私はその夜、ルナリーに泣きの電話を入れた。

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