第91話大司教様の企み

ルナリーがスミスさんから特訓を受けている間の暇なある日の昼休みの事だった。




大司教様から学校へ個人的な電話が入ったと言う事で職員室に向かう。


「もしもし?フラームです。」


「あー!フラームさん!お久しぶりです!暇ですか?」


大司教様は唐突に聞いてきた。前世が日本人と解ってからすっかり私の中で威厳が無くなっている。




「そうですねー。ルナリーだけはコンクールがあるから忙しいんですけど。私達は特に何もしてないです。」


また共演とかの話だろうか?




「そろそろ前言ってた話を実現しませんか?!」


「え?何でしたっけ?」


何か約束したんだったか?思い出せない。




「フラームさん!私がプロデュースしたいって言ってたでしょ?」


大司教様はクラシック以外の音楽を兎に角、ボードウェンに広めたいと考えていると言っていた。


日本の歌謡曲を広めたいと言うのが彼の野望。




「秋〇康とか小〇哲〇みたいな事したいんです!」


うわー。アイドル作りたいのか。困ったおっさんだ。




「いやいや。それはちょっと。。」


この前のミサコンサートでさえ躊躇する内容だったのに。今度は何を歌わせる気なのか考えたら頭痛くなる。




「お願いしますよー。フラームさーん。」




多分、ジェファーソン様に話してしまったら1発OKが出てしまう。ゲームでは全然わからなかったけど、ジェファーソン様ってお祭り好きなタイプなのだ。




「何を歌わせる気ですか?」


「考えたんですけど。いきなり、ロックやアイドルは受け入れられないかもしれないので。先ずはゴス〇ラーズ辺りを目指しませんか?」


大司教様なりの妥協着地点なのだろう。




「私、1番有名な曲しか知らない。。」


前世の私が1番好きだったジャンルはボカロだった。




「洋楽とかでも良いですよ。なるべくしっとり系の曲で少しずつ布教したい。」


布教ね。うん。この表現懐かしいわ。




「ちょっと、私の一存では決められません。相談してまた電話します。」


取り敢えずルイスに相談しよう。ルナリーにも相談したいけど絶対こちらの話を優先してしまうタイプだし。今はコンクールに専念して貰いたい。




「じゃあ、もしOKだったらデビューは日曜の教会の礼拝でやりましょう!お願いしますね!やりましょうね!」


大司教様。歌謡曲に飢え過ぎだよ。




電話を切ったら深い溜息が出た。


まじで困ったおっさんだよ。




職員室を出て管楽器科の教室へ向かう。ジェファーソン様にはまだバレてはならない!




教室を覗くとルイスは特に誰ともつるまず1人で居た。


「ルイス!ちょっと来て。」


呼び掛けると、ん?とこっちを見てやって来た。


「おーす。どうした?」




「大司教様がまた教会で歌謡曲歌わせたいって言ってるのよ!」


小声で言うとルイスはプッと吹き出して笑い出した。


「あの、おっさんにも困ったもんだ。」




「どうしよう。ジェファーソン様に言ったら即OKしそうでさ。迷ってる。」


「あー。だよなあ。」


ルイスもそれは解る様だ。




「ここじゃ話にくいから移動しようぜ!」


ルイスに言われて確かにと納得した。前世系の話って場所を選ぶんだよね。




ルイスの後ろを付いて廊下を歩くと何故か生徒会室に連れて来られた。


トントン!


「会長いるー?」


ルイスが生徒会室の扉をノックして叫ぶ。


「ルイスか?居るよ!」


中から会長の大きな声が聞こえた。この2人意外と仲良しだったのね。てか、前世の話出来ないんだけれど。


でも会長に相談するのはちょっと解る。冷静だし。




生徒会室に入ると会長は何時もの生徒会長席に付いて仕事をしていた。




「会長ー!大司教さんがまた何かやりてーんだとよ。」




「あっ大司教さんも前世は日本人なんだけどよ。歌謡曲を教会で歌って欲しいって。困ったおっさんなんだよなあ。」


ルイスの爆弾発言に私がドン引きしていると会長の顔も同じくらい引いていた。




「ルイス!!もー。キャサリンには内緒ってルナリーに聞いてないの?」


私は目が点になる。




「え?多分、聞いてねー。すまん。」


軽く謝るルイスを会長がブスっとした顔で睨みつけながら最後には大きく溜息をついた。




「ごめん。キャサリン、僕も前世持ち。日本人。」


俯いて項垂れる。




「えー?!嘘!会長?!」


全く気が付かなかった。しかも会長には気づかれていた。




会長は前世ではアリア学院ラブソングの経験者でしかもフルコンプユーザー。そして会長が伝説の隠しキャラだと言う衝撃の真実!!


かなり動揺したがとても嬉しくなった。




「嬉しい!!アリラブ仲間!」


思わず会長の手を取ってブンブン振って握手をした。




「キャサリン。ダメ!そう言う態度。」


会長は何時もの冷静な顔と厳しい口調でそう言った。


「僕は今は男なの!解る?ジェファーソン様に嫌われるよ?浮気を疑われるよ?」




私はあっ。。と思い会長の手を離した。


会長は先の先まで考えて内緒にしていたのか。


「気をつけます。」


私は頭を下げた。




「絶対、距離感気をつけてね!さて、本題に入るか。大司教様も前世が日本人ってこの世界って本当に適当だな。」




会長はまた大きな溜息をついた。

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