第37話ゴスペル

翌日。私達3人は小さなレッスンルームを借りて曲決めを始めた。


王子達には賛美歌の選曲とアレンジを御願いしている。ちなみに今日もエミリアは来ていない。


「エミリアどうしたんかな?強制じゃないけどさあ」


「明日は迎えに行ってみたら?練習もしないといけないし」


だよなあ。迎え行くかーと考える。




「で、どーするよ?クリスマスソング」


「そーなんだよ。大司教さんはああ言ったけど弾け過ぎたらまじで不味い予感しかしない」


溜息が出る。




「ねぇ。聞きたかったんだけど。ルイスとルナリーの指輪って子供のよね?いや、可愛いんだけど」


そう聞いてきたキャサリンにふふふっと見せる。


「露店で買ったのだよ」


「外すなって強制中」


ルイスは少し顔が赤い。恥ずかしいだろうけど外さないってのが律儀で好きだ。


「私も露店でジェファーソン様に買ってもらったの!」


キャサリンは嬉しそうにネックレスを見せてくる。


「おお!進展!おめでとう!」


私も嬉しくなる。


「キャサリンってガチでジェファーソン好きなんだな?」


ルイスは鈍感なのでイマイチ解って居なかった様だ。


私はうんうんと頷く。キャサリンは照れている。




「雑談はさて置き!曲どーしようか。」


「いやー。日本のクリスマスソングってラブソングばっかじゃね?」


「冬系の歌でもいいのか?てか、俺、前世はロックしか聞いてねぇ」


歌の記憶を思い出すがピン〇レ〇ィーとか中森〇菜とかしか出ない。


「あっ!ゴスペル!!」


キャサリンが突然叫んだ。


「ゴスペル??ん?」


1980年代の日本ではゴスペルはメジャーではなかった。


キャサリンが映画の話やゴスペルの歴史的な事も話してくれた。


なるほどアメリカで黒人差別的な事からの発祥か。賛美歌をR&Bの様な感じで歌うそうだ。


勿論、この国にゴスペルは存在しない。




「面白いかもなあ。」


ルイスも賛美歌をノリ良くした様な物と理解した様だ。


「歌詞解るんか?英語だろ?」


この世界でもゲーム設定上だろう日常使わないが英語や和製英語は通じる。




「私、このゴスペルの映画5回は見てるから行ける筈」


とキャサリンは歌い出す。




「ちょい待ってなー」


私はノートとペンを出して歌うキャサリンの声を聞いて楽譜を作って行く。


ルイスも歌を聞きながらサラサラと音階を書いていた。




歌い終わったキャサリンに


「このハイスペックめ!」


と憎まれ口を叩かれたので笑ってしまった。聞いたらだいたい書けるんだよ。


歌詞を改めて教えて貰い楽譜に沿って歌ってみる。


訂正をしながら主旋律完成。うん。楽しい曲だ。


上流階級を怒らせない程度の弾けた感じで行けそうな気がする。




Oh!happy day!と言う曲だそうだ。


国立教会に出向いて断られたら面倒なのでキャサリンに電話をかけてもらった。前世の事情を知った途端のこのいい加減さ。




「ゴスペルですかー。確かにこの国には無いし面白いかもしれないけど。歌謡曲が恋しい」


と大司教様は我儘を仰っている。


「じゃちょっと3人で歌うから聞いといて下さい」




主旋律をキャサリンに任せて楽譜を見ながらハモっていく。


ルイス、歌も上手いなあ。と改めて惚れ直しそうだ。


大司教様が喜ぶ様にノリ良く!ノリ良く!楽しく!


即興だったがそれもゴスペル的には良いようだ。




「この映画見たー!!!」


歌い終わると大司教様は電話口で興奮していた。


「懐かしー!これ2のやつですよね。1も良かったもんなー。両方歌って下さいよ」


と更にリクエストが来た。まあ、これなら神様への歌なので歌謡曲よりはマシだろう。




ちなみに歌謡曲が恋しい大司教様に電話口で松〇聖〇ちゃんの赤いス〇ートピーを熱唱して上げたら非常に喜んでくれた。




「さて、戻って皆様に発表しよか」


私達はレッスンルームに戻った。




レッスンルームでは既に曲も決まり編曲アレンジと進んでいた。


賛美歌は「もろびとこぞりて」とてもメジャーで良い選択だ。高音張り切って歌おう。綺麗な曲だもんなあ。




私達も先程の電話口の様に皆に歌って聞かせる。


歌い終わると拍手をされた。


「凄く斬新!でもこれなら行けそう!」


と納得してくれた。なんだかんだで大司教様がどんなに推してくれても周りの反応が悪いってのは怖いものだ。




「どうなるかとドキドキしましたが。この前の誕生日パーティーの曲の様に斬新でもあり神への冒涜ではない。これは思ってたよりウケるかも」


王子もワクワクしている様だった。




そろそろ暗くなるので帰宅せねば。


明日は編曲やアレンジをしよう。




エミリア?明日は迎えに行くよ。彼女が居ないのは寂しいもんだ。

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