第2話 太陽へ向かって飛べ!

「スパーコメット号発進。ビューティーファイブ、アーゴーAre Go


 義一郎の号令でスーパーコメットは加速し始めた。

 宇宙ステーション大鳳の巨大な格納庫から銀色に輝く船体が躍り出る。


 その姿はマッコウクジラに似たシルエットをしている。そして、光の反射によっては銀色から七色へと輝きを変化させていく。


 見方によっては虹色の彗星。


 スーパーコメットと名付けられた理由がこれだった。


「進路クリア。障害物はありません」


 羽里の報告に義一郎が頷く。


「時間が惜しい。最大加速にてワープしろ」


 義一郎が指示を出す。それに知子が答える。


「航路算定は終わっている。ララちゃん確認してね」

「ワカッタ。知子モ仕事ヲシテイルンダナ」

「何時も私の仕事を横取りしてるのはララちゃんですよ」

「スマナイ」


 重加速時やワープ航法に関わる航路算定の仕事は元々知子の仕事であった。しかし、世界最高の空間認識能力を持つ操舵士である黒子を補助するため配置されたアンドロイドのララが特に有能であった為、ララが主に航路算定に携わっていた。


「確認終了。黒子ハコノラインヲトレースシロ」

「了解」

「ブリッジ内、対Gフィールド展開完了。黒子。遠慮なく吹かせ」

「えーい」


 香織の操作でブリッジ内が淡いピンク色の力場に支配される。そして同時に黒子が機関出力を最大へ上昇させる。


 凄まじい加速度で宇宙空間を突き進むスーパーコメット。


「第一ワープ速度に到達」


 黒子の報告に義一郎が頷く。

 

「今から水星軌道の内側へと跳躍する。太陽との距離が非常に近い。厳重に注意しろ」

「了解」

「ワープ開始」

「ワープ開始します」


 義一郎の合図を知子が復唱する。そしてスーパーコメットの船体は虹色の光芒に包まれる。ブリッジ内はも同様に光り輝く。


 数秒後、眩い光芒は消失した。

 

「ワープアウトしました。11時の方向に太陽。小鳥遊は12時方向です」


 羽里の報告に頷く義一郎。続けて指示を出す。


「シールド展開。荷電粒子量に注意せよ」

「了解」


 義一郎の指示に香織が答える。そして香織は通信回線を開いた。


「こちらレスキュー部隊ビューティーファイブだ。輸送艇小鳥遊たかなし。聞こえるか。輸送艇小鳥遊。聞こえたら返事をしろ」

「こちら輸送艇小鳥遊。艇長のマモル・ノーダンです。ビューティーファイブの救助に感謝します」

「私はビューティーファイブ副長の相生あいおいだ。ノーダン艇長。状況の説明を頼む」

「了解しました。しかし、こんなに早く来て下さるとは意外です。ありがとうございます」

「礼は救助が済んでからで良い」

「申し訳ありません」


 謝罪しつつノーダン艇長が状況の説明を行う。


 水星の後方に位置するラグランジュポイントへと観測衛星ソーラーウォッチャーを設置する前に事故が発生した。彗星が残したであろう微細な宇宙塵の塊を避けようとしたが避けきれず衝突した。それは一ミリ以下の微細な粒子であったが、数個が反応炉リアクターに衝突し貫通した。その結果、反応炉リアクターが制御不能となり暴走。推進機の出力を上げ続けている。現状、太陽に向かって暴走中であり、後1時間ほどで耐熱限界を超え船体は爆発する危険性がある。そのような切羽詰まった状況の中、僅か十数分で救助に駆け付けてきたのがビューティーファイブだったのだ。


「ノーダン艇長。聞こえるか。当方の搭載艇であるアースドラゴンをそちらへ接舷する。宇宙服を着用してアースドラゴンへと移動しろ」

「了解しました」

「移動は素早く行え。太陽が近い。遊泳中の被ばく量は半端ないぞ」

「分かっております。準備に5分下さい」

「了解した」


 香織が義一郎の方を向く。

 義一郎が頷きながら指示を出す。


「アースドラゴンへは香織とララが搭乗せよ。危険な任務だ。十分に注意せよ」

「了解」

「ワカッタ」


 香織とララが立ち上がりアースドラゴンの操縦席へと向かう。ララは操縦席。香織は奥側の艇長席へと座った。


「行クゾ」

「任せる」


 スーパーコメットの下腹部に合体しているアースドラゴン。スーパーコメットからパージされ、ララの操縦で輸送艇小鳥遊の側面へと移動する。


「現状の加速度を維持」

「ワカッテイル」


 加速中の輸送艇小鳥遊にぴたりと着ける。アンドロイドであるが、ララの操縦技術はとび抜けている。迷わず、一回の操作でぴったりと合わせてしまうからだ。


「輸送艇小鳥遊。こちら相生だ。救助位置へ固定、さらにエアロックを開放した。急いで移動しろ」

「小鳥遊了解。すぐに移動します。コニー。行くぞ」

「了解」


 輸送艇小鳥遊の操縦席の天井が開き、二名の宇宙飛行士が席を離れようとした瞬間に推進機がさらなる暴走を始めた。二名は小鳥遊から離れることができず、小鳥遊はアースドラゴンからぐんぐん遠ざかっていった。

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