~AMAZING GRACE~永遠に~
あいる
第1話~彼女とわたし~
彼女は美しかった、誰もが振り返る程の容姿をもつ彼女と、普通過ぎる私がどうして仲良くなったのか不思議だった。
彼女の名前は「純子」職業はモデルだった
こんなに美しい彼女なのだけど、身長があまり高くないのでファッションショーの仕事はまったくないのだといつも嘆いていた
地方のモデルなので小さな仕事ばかりだった。
そんなある日
地元の銀行の広告オーディションで受かった彼女は主要駅に設置された巨大な広告のなかで微笑んでいた。
「凄いね、夢に近づいたね」
私は心からそう彼女に伝えた。
「うん、だといいけどね」
この広告がきっかけとなり某有名コーヒメーカーのCMや某化粧品メーカーのカタログなどにも採用された。
順風満帆のはずだった…
彼女には半同棲中の彼氏がいた、顔は良いが私は苦手な部類の男。
名前は『河村
仕事を転々と変えてお金を無心する男なんてタダのひもだと、何度も別れを勧めていたのだけど彼女は別れようとしなかった。
彼女と悠矢の出会いはスカウト
その頃悠人はモデルクラブでマネージメントの仕事をしていた。
聞こえは良いが、街中で綺麗な女性を見つけて、会社へ報告するだけの仕事
モデルクラブにも色んな会社がありモデルやタレント志望の女性を登録させ、レッスン料を稼ぐ悪質な会社だった。
彼女は幼いころから、美しい容姿をしていたので目立つ存在だったのだけど
本人はそれを一番嫌っていた。
声をかけた悠人は、彼女を自分のものにしたいとまめに連絡をとり、優しい言葉をかけ続ける
その熱意にいつしか恋人関係になった。
ある日彼女から電話が入った
「クレジット会社から凄い額の請求が来た、私使っていないのに」
カードの枠をすべて使ってたのはきっとあの男だと思った
「アイツから連絡は?」
「この1週間まったくない」
「カード渡したの?」
「もちろん渡してない!多分財布から抜かれたんだと思う」
警察に被害届けを出した彼女は、疑いをかけられた、「多いんですよ、紛失したと嘘ついて限度額まで使う人」
警察から疑いを掛けられたが、彼氏には他にも女がいたとわかることになる、その女も同じ被害届けを出してきたのだから…
きっと他にも余罪があるのだろう。
クレジット会社も盗難と認めることになり、支払いはせずにすんだことだけは幸いだった
この事がきっかけでやっと彼との別れを決断した彼女は私からみても晴れやかだった。
*****
日本人離れした容姿を持つ彼女に声を掛ける男性は毎日のように現れた。
でもそのたくさんの中から決まってハズレのクジを引く
そういう私だってハズレくじを引いて結婚2年目に別れてしまったのだから似たようなものだと思うけど
愛し愛されるなんてありえないのでは?と2人で笑いあった
好きになる人には奥さんや恋人がいて、熱烈に言い寄ってくる男には興味が持てない。
恋愛の常套句である
彼女はアメリカへの留学経験があり
英会話が得意だったのでモデル以外に外国人アーティストが来日公演する際に日本人とのコミュニケーションをとるために通訳の仕事もはじめた、でも出会ったのはその有名アーティスト達ではなく、ホテルのBARで演奏するジャズピアニストだった。
名前はジェフ、白人の背の高い男性だった
有名なアルバムにもセッションしたこともあると言っていたが、所詮スタジオミュージシャンなのだ
彼女は彼に恋をした
アメリカ人の男性は優しい
好きになったきっかけは彼が弾いた曲
『AMAZING GRACE』
彼女が一番好きなこの讃美歌を彼は優しいタッチで弾いた、天使が奏でるような優しい音に彼女は恋をした。
日本人の男性によって心を痛められていた彼女はのめり込んだ。
日本に滞在したのは3ヶ月ほど、2人は再会を約束してジェフは母国へ帰っていった。
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