いつもの花は
たいやき
いつもの花は
第二次南北大戦の中、K国はある新型爆弾の開発に成功し、このN国に投下した。投下された新型爆弾はN国一帯の色という色を全て消し去ってしまった。
投下されて30年。今でもいつもだった景色、いつもだった花、いつもだった空から色が消えたままである。
そんな中、A氏は色を取り戻す研究に文字通り人生を捧げていた。
「はあ。どうしたものだろうか」
どうもこうも行き詰まっている。何をやってもダメだ。
気分転換に外へで出てみたものの色のない世界はA氏をさらに虚しくさせるだけだった。
さらに、A氏には妻子がいなかった。
こんな頭の中が虹色なやつについてくる女は今時誰もいなかったのだ。そのこともまた、A氏を虚しくさせていた。
そんな状況の中で、A氏はこのままではいつまでたっても色を取り戻すことは出来ないと思い、助手用に女性のアンドロイドを作った。
名前はカラ。このアンドロイドは実に優秀だった。自分の脳をベースにAIを作ったので話も良く合い、研究においてはお互いに意見を出し合った。
それもあってか研究は順調に進んだ。いつしかA氏はカラに惚れてしまっていた。
「最後の1ピースがどうもわからない。あと少しのところまで来ているのに。」
「ダイジョウブ。キットウマクイキマスヨ・・・。」
こんな会話が30年以上続いた。
いつしかA氏のカラに対する想いは本物になっていき、A氏はカラを心の底から愛するようになっていた。アンドロイドを愛するなど、馬鹿馬鹿しいなどと思うかもしれないが、A氏にとってカラは色の無い世界で唯一の心の拠り所だった。
研究を始めて30年以上経ったある日、遂にA氏は色を取り戻す方法を見つけた。
N国にいつもだった色が戻って来た。いつもだった景色、いつもだった花、いつもだった空が戻って来た。A氏は素晴らしい解放感と達成感に包まれながら叫んだ。
「やった!俺たちは遂にやったんだ!」
カラから返事は来なかった。何度話しかけても、カラは微笑んだままで全く動いてくれなかった。
色鮮やかな世界に包まれながら、灰色の花は散ってしまった。
A氏は
いつもの花は たいやき @taiyaki05
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