まつげの逆襲

 まつげは本来、ごみなどの異物が目の中に入らないようにするためにある。


 だけど、僕のまつげは頻繁に逆襲する。下まつげは内向きに生えており、視線を下に向けると10回に1回くらいは目に刺さる。上まつげも時々目に入るし、寝不足のときは視線を上に向けると全ての上まつげが目に刺さる。


 異物を遮断するためにあるのに、まつげ自体が目を傷つける異物になっているではないか!


 下まつげよ、内向きに生えるんじゃない。内弁慶になるな。外向きに生きろ。外に目を向け、外交的になれ!


 上まつげよ、身を翻すんじゃない。まぶた自体がクルンッとなり全て目に突き刺さるなんて言語道断だ!


 こんな本末転倒なまつげは不要だ!


 しかし、実際に無くなったらそれはそれで困ると思う。


 まつげ以外にも、そういうことは世の中に溢れている。本筋から外れているだけで不要だと決めつけたり、外道だと邪道だと怒ったりする。遠回りをしているだけの政治家に「マニフェスト実現しろ!」と言ってみたり、ゲームで勉強しようとする子供に対し「ゲームを辞めろ! ちゃんと勉強しろ」と言ってみたり…。


 本来の目的だけが目的ではないし、本来の目的から外れているように見えて、実は裏で本来の目的を遂行していることがよくある。


 

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