人生ではじめて書いた小説

 小学校の授業で「全員が小説を書く」という課題がありました。図書室に行っていろんな本を読みながら、自分でも書いてみるんです。そこで書いた小説が、僕が人生で初めて書いた小説というものでした。


 内容は今考えると「んなアホな」という荒唐無稽なものです。覚えている範囲で紹介します。


 主人公は、家族と一緒にクルージングを楽しんでいました。船の上でパーティをしていると、突然船が沈没。主人公だけが無人島に漂流してしまいます。家族は探しても見つかりません。主人公が持っているのは沈没騒ぎの直前に手にしていた「醤油」だけです。

 主人公は食べ物などを探して冒険し始めます。冒険の過程は正直全く覚えていません。

 冒険の最後に、海賊に襲われるんです。「この島は俺たちのもんだー!」みたいな。ヒャッハーしてる感じの海賊。船長は○ック船長のように、片手だけフックになっています。ギャグっぽいけど絶体絶命の主人公。武器は持っていない。さあこのピンチをどう切り抜ける!?

 主人公は苦肉の策として、手に持っていた醤油を海賊の目に浴びせ、目を潰します。海賊が「目がー!」とうろたえているうちに船を強奪。船に積まれていた食料・飲料などと一緒に、海賊たちを島に置き去りにし、大海原へ! みたいな終わり方だったと思います。結局ギャグじゃないか!


 一応、この小説は結構ちゃんと発想したんですよ。確か、事の発端は「無人島にひとつだけ持っていけるなら何を持っていくか」という話でした。ここから「無人島に漂流し、ただひとつ手に持っていたものを武器に生き抜く」という話を思いついたんじゃなかったかな。

 「沈没する前に近場にあるものを手に取るはずだ」と思ったんです。だけど、船ですることなんて限られています。ましてや小学生の発想できることなんて限られているわけで、「食事をしているのではないか」と。そして、「海だし……魚食べてるんじゃないかな。だったら醤油があったに違いない」ということで、醤油。

 ナイフとかフォークとかにしとけよー! 洋食にしとけよー! 今なら思います。だけどまあ、それだと無難すぎるのか。


 小学生なりに練ったからか、 これが受けたんですよ。「醤油は思いつかんかったわあ」「醤油かあ」「醤油すげえ」感想はたしか、みんな醤油のことばかりだった気がします。

 その「書いたものがウケる」という感覚が面白くて、僕はそれから小説を書くようになりましたね。中学生の頃にも結構書いていた気がします。ただ、中学生の頃に書いた小説はどれも長編で、ただのひとつも完結させられませんでした。それからしばらく小説を書かなくなります。


 だけど、奇しくも、高校三年生の課題研究という授業で再び小説を書くことになったんです。ライトノベル一巻分くらいの文量のある小説でした。軽いSF物だったため、理数系科目を全く選択していなかった自分の馬鹿みたいな頭に科学系の情報を詰め込んだ。選択していなかった、というのは僕の母校が総合学科という「二年からの授業を好きに選べる」という学科だったからです。


 そして、その小説を電子書籍としてAmazonで売ることになります。Kindleダイレクト・パブリッシングという個人出版の場が当時注目されていたんですよ。結構大変だったんですけどね。

 Amazonはアメリカの会社なので、何もしないと二重課税になるんです。そのため、「僕は日本人なのでアメリカの税金は免除してください」という免除申請を、アメリカに送りました。全部英語の書類を全部英語で読んで、書いて。教師に「これで合ってますか」と質問したりして。

 電子書籍化にあたり、当時の友人に表紙も頼みました。正直、小説の中身よりも表紙の方が何十倍も何百倍もすごいです。キャラクターデザインと表紙全て有料で頼んだんですよ。「いくらくらい?」と聞いたら「成果物見て言い値でいいよ」と。僕はお年玉全額・2万円を支払いました。当時の僕に出せる最大金額です。

 それから無事個人出版が完了して、個人出版のまとめサイト的なものにも「現役高校生が個人出版に殴り込み!」みたいに取り扱われたりして……。


 まあ……また書かなくなるわけですけど。


 そして今に至る!


 初めて書いた小説の話から、かなり飛んでしまいましたが、これが僕の小説執筆遍歴です。

 少し変わった遍歴なのかな、と思い、昔に思いを馳せながら語ってみました。

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