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「ふふっ、びっくりした? 前よりちょっぴり美人でしょ!」と微笑む

彼女に頭が真っ白な僕はつい「そ、そうだね」と反射的に答えてしまった。

 すると彼女は「前もキレイだったでしょ」と口を尖らせたがまだこの

現状を僕が理解していないと感じた彼女は真相を語り始めた。


「実はあの日、私、そらちゃんに捨てられたと勘違いして村中を

必死になって捜したの。でも結局見つからずそのうち発熱で頭が

もうろうとしだして気づくと見たことのない大きな長い箱の中で

横たわってて……」

「それって電車のこと?」

「そう、私ビックリしちゃって」

「それで、それで」と焦る僕とは対照的に彼女は落ち着いた様子で

続けた。

「横にいた知らないおばあちゃんが薬飲ませてくれたり看病して

くれたおかげで熱も下がり、すっかり元気になったんだけどそこで

おばあちゃんから不思議なお話を聞いたの」

「まさかループラインの秘密?」

「そうなの、でも当時の私には難しくってね。それでその親切な

おばあちゃんはわざわざ私を再び7番駅まで見送ってくれたんで

お礼の意味も込めて以前そらちゃんからプレゼントされたピンクの

フリース貰ってもらったの、そらちゃんゴメンね」

「い、いいよ、そんなこと」「ところでそのおばあちゃんって、

もしかしてモエさん?」

「そうよ、モエおばあちゃん。そらちゃん知り合い?」

「ま、まあね」

 僕は心からモエさんに感謝しつつも彼女が最後に放った言葉

を思い出した。


『――今度は絶対離しちゃだめよっ!』


 そっか― あの言葉は大切なひなを失い憔悴しきって村を一人

去ってしまった未熟で弱い僕に対する彼女からの最後の忠告だったんだ。


「そらちゃん、大丈夫?」

「えっ! う、うん」「でもどうして僕のところに?」

「私が再び村に戻った時はペナルティーで既に数年が経過して

いたんだけど家の片隅にボロボロになったメモ見つけちゃったの」

「メモ?」

「そらちゃんが残したメモよ」

「私、ホントに嬉しかったのよ、そらちゃんが村に来てくれて。

仲間はずれやいじめにあっても私はしょうがないって諦めてたのに

そらちゃんのおかげで私の日常は一変したわ。

それは以前なら想像もつかないぐらい楽しくウキウキする毎日だったの。

そらちゃんはいつも私に優しくしてくれたし守ってもくれた。

悲しむ私を慰めたり励ましてくれた事もいっぱいあったわ。

どんな時もいつも私に寄り添って笑顔で見守ってくれたのは

そらちゃんだった。

なのに、なのにメモ見るとそらちゃんは自分自身を責めてばっかり。

私、そんなそらちゃんをほおっておけなかったの。

私がなんとかしなきゃって、そう思ったの!」


「ひ、ひな……」僕は涙がこぼれそうになった。


「だめよ、泣いちゃ。これから2人で頑張るんだから」とひなは

震える声でそっと僕の手を取った。

「うん」「うん」と声にならない僕は必死で涙をこらえまともに

ひなを直視出来ないでいたが、心の奥底にあった鉛のような塊が

確実にそして一気に溶けゆくのを感じた。


 ―僕達はその夜、時間を忘れ朝まで語り尽くした。


「そうそうショ―ちゃんが村長になったのよ。世界一幸せな村

にするんだって!」

「ふふっ、ショ―ちゃんらしいね」


「でも良かったな、記憶が甦って。普通は抹消されるって

モエさん言ってたけど」

「そうみたいね。でもラッキーなことに甦っちゃったのよ、

しかもつい最近!」

「えっ! そうなの」

「そう、たまたま夢にそらちゃんが現れたの。そのそらちゃんの

姿があまりにも衝撃的で一気に記憶が戻ったの」

「あっ! あれだな、あのゲンタ達をやっつけたあのシーンだろ」

「違うわよ」

「えっ、違うの…… じゃ、どんなシーンなの?」

「夜中、そらちゃんがレアストーンを床いっぱいに並べて一人

ニヤついてる姿よ」

「え~ そこは普通かっこいいシーンとかじゃないの?」

「知らないわよ、そんなこと」「まっ、それよりそらちゃん、

もっとおじいちゃんになってるって思ってたけど意外に若いんで

ビックリしちゃった」

「ひなも大きくなったな」

「美人が抜けてるわよ!」

「ふふっ!」「ははっ!」

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