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「ひな~ 用意できたか~」
「うん! でけた」
「早よおいで、始めるで~」
僕は家から歩いてすぐの川原でハサミとくしを持ちひなを待っていた。
慌てた様子のひなに僕はもう一度確認した。
「ほんまにええんか?」
「ええよ、もう絡まるんイヤやねん」
「よっしゃ! ほんならバッサリいくで~」
僕は腰の辺りまで伸びたひなの髪を大胆に切り始めた。
「ひな、前切ったんいつ?」
「ママがおらんようになってから一回も切ってへんねん」
「そっか~ 長いはずやな」
「ひな、ちょっと聞いてほしいんやけど」
「なに?」
「僕な、食べもん屋しようと思てんねんけど……ひな、どう思う?」
「食べもん屋って何の?」
「例えばこの前ひなが食べた焼き魚やスープ出そう思てんねんけど」
「あの美味しい魚出すん?」
「うん、その他にも調味料いっぱい持ってきてるから甘~い
テリヤキソースで食べても美味しいと思うねん!」
「ひなもそのお店やりたい!」
「ほんまに? ひなも手伝ってくれるの?」
「うん、やりたいけど……、ひなも甘~いの食べれるん?」
「もちろんや! ひなに味見してもらわんと」
「するするいつからするん?」
「これ終わったら始めよか?」
「うん! 早よしよ!」
「よっしゃ! 後ろはこれでOK! 最後前髪揃えよか」
「うん!」
「目ぇつぶって――」
「ん~ こんなもんでええか? ひな、水面見てみ」
ひなは水面写る自身の顔をしばらく見た後突然振り返り
満面の笑みで僕にお礼を言ったかと思うと急に家の方に
向かって走りだした。
「そらちゃ~ん、この辺どう?」
「何が?」
「何がってお店、お店!」
「気ぃ~早いな、ひなは」
「ええよ、ひなに任せるわ!」
「この辺が入り口で……ここがカウンター……ほんでここに
テーブル置いて……あっ! そらちゃん、ひなの首飾り
飾ってかまへん?」
「もちろんええよ、ひなの好きなようにしてええから!」
「ありがとう~ そらちゃん」
(髪切ったかわいいひなを思いっきりホメたろ~思てたけど
タイミング狂るたやんか)
その後も真剣にレイアウトに悩むにひなの素早い行動力に
驚かされ、ひなに引っ張られるように着々とお店オープンに
向けて僕たちは走り出す事となった。
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