2-9(10)

 いったい何処まで下がるんだろ―。

 もう後戻り出来ない後悔と不安がゴチャゴチャになり次第に動悸が  

高まり変な汗も出だした。

 もうすっかり酔いが醒め、パニック指数がMAXに近づいた頃、

うっすらと地下ホールのようなものが見えてきた。

 全身汗まみれの僕は慎重にエスカレーターから先に見える改札らしき

場所目指した。

 ウソ! こんな所に駅があったんだ。

 辺りは静まりかえり人が乗り降りしてる様子はなく駅員さんらしき人

も見当たらない。

 廃線になったのかな?

 しかしこんな場所にかつて駅があったなんてホント東京は凄いな。

 僕は早速路線図を確認した。

 これって環状線? つまりループラインか……。

 ちなみにこの駅は何だろ?

 僕は目をこらしながら路線図を慎重に確認すると当駅を示す赤文字

で特区と記されていた。

 特区?

 少し不審に感じたがそれだけでなくこの駅以外の環状線上には

駅名らしき名称がなく、代わりに番号が記載されていた。  

 出口番号かな?

 さっぱり意味が分からず再び路線図を確認した。

「特区」の次は29、30、31と99まで続いたあと1に戻り、 

そこから再び2、3、4と順に番号が上がることで一連の  

環状線が形成されてるようだ。

 確かに数字は問題ないがどうして駅名がないんだろ?  

 券売機も設置された形跡がないのも不思議だな。

 そんな独り言を言ってるとかすかにベルの音が……。

「えっ!?」

 改札に向かうと確かに列車の発車音が確認出来た。

 実際に列車をこの目で確認したわけではないが列車が

出発したことはほぼ確実だった。

 廃線ではなかった事実に驚いた僕は出発時間を確認しようと 

時計を見た瞬間血の気が引くのを感じた。

 や、やばいっ、明日会社だ! 帰えらなきゃ!

 突如現実に戻された僕は急いでエスカレーターを駆け上がり

なんとも不思議な駅を後にした。

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