2-8(9)

 失意の中僕は駅に向かったがなんとも気持ちが収まらなかった。

「どっか寄ってくか」

 幸いお財布にはデート代が余分に入っていたこともあり居酒屋で 

早めの夕食を取ることにした。

 日曜ということでかなりのお店が既にオープンしており一人でも

飲めそうなお店をチョイスし入店した。

 居酒屋は先日島田課長とごいっしょして以来何かと慣れないが

カウンターの隅でメニューに目をやりビールと串かつ、お刺身、

カラアゲがついたAセットを多少不安ながらもオーダーした。

 1人で飲んでると周りからどう見られてるんだろ? など気にしてた

のは最初だけでお酒がすすむにつれそんな事どうでもよくなり

5杯めの焼酎を頼む頃には時間さえ忘れてる状態に……。

 お店のテレビではバラエティー番組が放送されていて内容が

男女の恋愛話や男女の本音トークで盛り上がってる。 

『男性に求めるものは?』 

『やっぱイケメン!』 

『社会的ステータス!』 

『仕事ができる人!』 

『頼りがいのある人!』 

『やっぱりお金!』 

 そうとう酔っ払った僕はテレビに向かって「何言ってんだ!」と1人

ツッコミを入れながらも今日体験したパーティーを自ら顧みると

「そりゃそうだよな」自身妙に納得してしまった。 

 そう、女性は冷静に僕を判断したんだと。

 ふと時計を見ると時間は7時を過ぎ僕はフラフラ状態ながらなんとか

お会計を済ませ店を出た。

 酔ってるせいで方向すら分からず、フラフラ足任せに進むと急に

バケツをひっくり返したような雨が降って来た。

 ふらついた足取りでとりあえず雨宿りの為辿り着いた先は

古いショッピングセンターのようでなんともレトロな様相で

少し不気味さも感じるがお酒で気が大きくなった僕は奥へ奥へと

進むことにした。

 お店のシャッターがすべて降ろされ人の気配がなく、まるで

ゴーストタウンのようだがちょっとした冒険心が芽生え更に奥へ 

進むと暗がりに下へ向かうエスカレーターを発見した。

 長い間稼動していないのか手すりにはホコリが溜まり、鼻が

ムズムズする中、慎重に周りを気にしながら降りることにした。

 薄暗い空間は想像以上に広くまるで迷路のように複雑に入り組んで

いたが特に変わった様子もなく、引き返そうとした瞬間奇妙な物を 

発見した。

 それはピンク色した高さ30センチほどのカエルの置物でよく見ると

こちらを見て笑っているようにも見える。

 お店の人がしまい忘れたのかな?

 まだあるのかもしれないと多少の期待を込めもう少し歩くことにした。

 すると予想どうり再びカエルを発見したが先ほどのものより若干 

大きく、やはりこちらを見て笑ってる。

 その後も次々とカエルを発見し、最終的にたぶんボスガエルであろう 

巨大なカエルのオブジェに辿り着いた。

 なんとも不思議なそのオブジェを注意深く観察するとカエルの目が 

どうも左下側見ているように感じ目を向けるとなんとそこには  

地下深く潜るかのような小さなエスカレーターが設置してあり、

しかも作動していた。  

 時計に目をやるとちょうど8時……。

「よし! 降りてみるか」 

 僕は地下深く消えていった。








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