夕立
木魂 歌哉
夕立
その日部活を終えた私は、学校から駅に向かって歩いている
「ややっ、降ってきやがったぞ」
私がそう云って
「まぁ、君は普通の傘を持っているのだから
その時普通の傘を持っていたのは私だけで、ほか二人は折りたたみ傘であった。Mは傘を開いたが、Nは私の傘のなかに入ってきた。
「君の傘大きいから(実際私の傘は父のもので、大人用であったから小柄な私には少し大きすぎるのだった)俺が開く必要はないだろ? かさばるし」
とのことだった。ところが雨は更に強烈になってゆき、この青年Nも折りたたみ傘を出す
一応傘はさしたままであったが、ほとんど意味のない行動ではあった。
そのうち叫ぶことに疲れた私達は、台風時のテレビリポータァの
「えー、こちらスタジオなんですけれども、凄まじい雨の様子が外からも伝わってきます。現場のNリポータァ、そちらの様子はいかがでしょうか」
「…こちら◯◯県××町のNです!凄まじい勢いの雨と風が体に叩きつけられて、立っていることもままなりません!先程からですね、雷の音が何回も聞こえてきております!視界は殆ど激しい雨で見えません!」
その時私は
「?どうかしましたか、専門家の
Mがそう訊いてきた。どうやら一連の真似事の中で私は専門家の地位を獲得したらしい。
「…Nリポータァ、鼻…」
私はどうにかそれだけ云うと(私はこのとき、専門家らしい云い方について考えていた)、Nの鼻の下辺りを指さした。そこには何やら赤黒い液体が…
「げげっ、出てきやがったな」
残念
「えー、現場に問題が起きたようなので、中継を中断させていただきます」
Mはそう云って真似事のリポートを強制的に終わらせると、ふう、とため息をついた。
「本当のリポートなら放送事故モンだぜ、こりゃ。…大丈夫かい?それ」
「できればなにかティッシュのようなものをいただけるかな」
Nが鼻を押さえて云った。
「まぁ止血するだけだからそれで善い」
Nはそう云ってぐしょぐしょになった”それ”を私から受け取り、何枚(?
そこから私達は
気がついたら駅に到着していた。私達は妖怪濡れ女の如く濡れに濡れていたのであるが、周り行く人々も外の状況は
「N、大丈夫か?」
私はその時初めて気づいたかのように
「ああ、もう止まった。服についたのも流されたみたいでな」
見ると確かに服にはかすかにピンク色の
友人と別れ、ホームに
夕立 木魂 歌哉 @kodama-utaya
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