第22話 オリヴィア

 少し時間をさかのぼって、ここは私が着替えるお部屋。

 私はメイドにドレスを着せてもらっていた。


 「大変お似合いですよ、ヴィルヘルミナ様。」


 メイドのオリヴィアが私のドレス姿を褒める。

 彼女の言葉に私は笑顔で答える。


 「ありがとう、でもヴィルヘルミナ様は止めよう?友達だし、レナで良いわよ二人しか居ないのよ………。」

 「そ、そうですね、ではレナ様は駄目でしょうか。」

 「………まあ、良いわ。」

 「それにしても、頭の包帯は傷が浅く治りかけだったので取りましたが、左腕の包帯はまだ傷があるので最小限残して取りました。姫様、誠においたわしい事です。」

 「貴女が気にする事では無いわ。」


 オリヴィアは従順で可憐な専属メイドで私が帝都で初めて身分を隠して遊びに来た時、小さな貧民街で私は彼女と出会った。

 彼女は城下町の色々な所に連れて行ったり、私と遊んだりしてくれて、私を特別に扱うのではなく他の人と同じくらいに優しく接してくれる事に嬉しかった。

 本当に楽しかったわ、あの時………。


 「どうしました、レナ様?」


 オリヴィアが私の顔を覗き込み心配する。


 「ううん、何でも無いわ。」

 「そうですか、そういえば男性の方と来たという話を聞いたのですが、本当ですか?」


 私は心臓がキュッと縮み、皮膚から冷や汗が溢れ出す。


 「そ、それがどうしたの?」

 「いえ、風の噂で聞いたのですが異世界から来た人、しかも『男』らしいですね?」

 「う、うん………。」

 「まさか、レナ様は彼に惚れたりするなどしませんよね………」


 私は急に胸が苦しくなり始める。

 勿論、カズトを惚れるわけ………エへヘッ。

 ハッ!イヤイヤイヤイヤ、私が彼に惚れる訳無い………かも。

 って!そんな事を思っている場合ではないわ。

 もし、オリヴィアに物凄く仲良くなった事をバレれば何をするか………。


 「そんな訳無いわよ!馬鹿な事を言わないでオリヴィア。」

 「ですよね!ゲルマニアの皇女様ですもの!!でももし、それが本当なら………。」

 「ほ、本当なら………?」


 オリヴィアは不気味にニッコリと微笑む。


 「フフフ、その男を拉致監禁からの拷問をして、レナ様に二度と近付かせないようにしますよ!」


 オリヴィアの微笑に私は鳥肌が立ち、寒気を感じた。

 私は彼女に絶対カズトを鉢合わせしてはいけないと思った。

 何故ならオリヴィアは大の男嫌いだからである。

 勿論、男性と会話したり、接客するのは彼女には出来るが、私に近づこうとした人には厳しい態度をとるのよね………。


 「あっ!」

 

 オリヴィアは突然、大きな声を出す。

 何か問題があったのか?

 

 「な、何?どうしたの。」

 「そういえば私、まだお母様に今日の手紙を書いていません。少しの間だけ筆記具を取りに行くお時間を貰っても宜しいですか?勿論、すぐ戻りますから。」

 「全然急がなくても良いわ、ゆっくり自分の部屋で書いてきなさい。」


 そう言ってオリヴィアは深く一礼をして、部屋を出る。

 私はオリヴィアが部屋を出たのを確認すると、軽く溜め息を吐き、椅子に座る。

 それにしても、この二日間は色々な事があったが、もう二度と体験したくない思い出だわ。

 それにしても私はカズトに出会わなかったら、こんな場所に居なかった。

 彼には感謝の気持ちで一杯だわ。

 でも、オリヴィアは私がカズトに惚れているのではないかと言っていたけど、私は間違いなく彼に惚れているわ。

 でも、なにかが違う感じがする。

 一体何なのだろうか?

 ………ま、気にしない方が良いわね。

 私がそんな些細ささいな事を考えながら鼻唄を唄いながらオリヴィアを待っていると、扉をガチャガチャと開けるような音がする。

 私はビクッと驚いたが、オリヴィアが鍵を持ち出すのを忘れたんだろうと思った。

 溜め息を吐き、椅子から立ち上がり扉の方へと向かう。


 「何であの子は鍵を持って行ってないのよ………ったく仕方無いわね、待ちなさいオリヴィア、私が開けるから………。」


 そう言って私は扉の方へ歩き、開けようとする。

 するとそこに居たのはカズトとあの子だった………。

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