第20話 能力開示
俺はなぜか突然ヘルマンに制止される。
「待ちなさい、カズト君。君はニホンジンだったな。」
「………はい。」
どうしたんだ?俺に何か変な事でも有ったのか?
俺は心音が激しくなり、そして苦しくなる。
まさか、何か変な事をされたり言われたりするのではないかという恐怖心が襲う。
「ニホンジンには能力があると聞いたが、君にはどんな能力があるんだろうか?」
「そ、それは俺にも分かりません。調べれるなら調べたいと思いますが。」
「………そうか。なら私が調べてやろう。」
ヘルマンは自分に掌を上にして見せると、ヘルマンの掌が何故かキラキラと白く光始める。
これは魔法の一種なのか?
「では君の身体の一部を分けてここに置いてくれ。」
…………は? 身体の一部だと?おいおい冗談だろっ!?
俺はヘルマンの言葉に困惑を隠せなかった。
「え?じ、冗談を!」
「冗談では無い、早くしろ。」
いやいやいやいやいやいや嘘でしょ!?
というか、真顔でこっちを見ながら身体の一部を要求とかこのエルフ、頭大丈夫か?
いやいや怖すぎる、エルフはレナもフレイヤもそうだが、ヤバい奴しか居ないのか???
「あ、あの手足とかは勘弁して下さい………。」
「はい?」
「て、手足とかはホント、勘弁して下さいっ!!」
俺は強く懇願する。
そりゃそうさ、体の一部を要求してるんだ!拒否するに決まってるだろ!!
そう俺が懇願していると、ヘルマンは何故か溜め息を吐いた。
やはりそんなに俺の体の一部が必要なのか?鬼、悪魔、人でなし!!
「そんな事、俺が要求するかっ!!体の一部と言っても、髪の毛とか爪とか小さい物で良いんだ。」
「あ、なんだよ!びっくりさせやがって、そりゃそうだよな、ハハ。」
ああああああ、良かった!
そうだよな、腕をここで千切るみたいな発言に聞こえたよ………。
俺は胸を撫で下ろし、自分の髪の毛を一本摘まんで引っこ抜き、ヘルマンの光る手に置く。
「解析するぞ、――――解析(アナリューゼ)。」
すると、髪の毛が宙に浮き、ボロボロと粉々になって掌に吸収されていく。
「君は………ニホンジン、というより異世界人で間違いないな。そんで、能力が………。」
「はい………。」
「いろいろ普通の人と比べて大分補正されてるね。あと、生命力。まあ、これは異世界人にはよくあるものだけどね。」
このヘルマンって言う外務大臣はこの世界の日本人に物凄く詳しいな。
「何でそんなに異世界人に詳しいんですか?」
そう俺が言うと、ヘルマンはニヤリと不気味に微笑む。
「ほう、知りたいのか?」
ヘルマンがどうして日本人をそんなに知っている事には気にはなるが、ヘルマンの微笑みに何故か自分の気分が悪くなる。
何か知ってはいけないような感じがする。
そう感じた俺はすぐさま、ヘルマンの言葉を丁重にお断りした。
「いえ、別に良いです………。」
「そう?あ、あともうちょっとで解析終わるからな。」
時間が経つにつれて、ヘルマンの掌の光は明るさが段々と増していく。
突然光がパッと消えて、空中に謎の文字が浮かび上がり、近くの紙に押し当てる。
「解析(アナリューゼ)完了、紙に写したよ。って、まあ文字は読めないと思うから読み上げるぞ。」
俺はそう言われ、耳をすませて静かに聞く。
「………君の経歴は名前と年齢と能力、あと民族以外は判らないな。」
「え、何でですか?」
「さあ?ミスか何かだろう、申し訳ないね。」
魔法にミスって、嘘でしょ。
そんな事があるのか魔法に………。
俺は自分の能力を聞く前に、ちゃんと能力が記録されているのか心配になる。
「まあ、気を取り直して能力を発表する。」
「は、はい、お願いします。」
「君の能力は、瞬発力や攻撃力が高い。チート的な能力も無い感じがするな。」
じゃあ、俺はラノベとかで見られるチートキャラじゃなくてRPGのような王道派なのか。
「多言語聴取能力、魅了、生命力は補正が掛かってる。まあ、これは普通だな。」
前言撤回、ラノベの異世界転生者の良くある事じゃないか。
そういえば魅了とかあるんだ、へぇ………。
普通ってことは魅了ってよくあるのか?
「魅了ってよくあるんですか?」
俺がヘルマンに対して言うと、ヘルマンは何故かこちらを睨み、そして俺に対して不満をぶつける。
「お前ふざけるなよ、こんなことも知らないのか??異世界人にはよく付いている効果だよ!内面や外見が不細工やグズでもモテるんだ、本当にニホンジンは羨ましいな、クソったれ!!」
先程の頭脳明晰そうな外務大臣のヘルマンとは思えない言動である。
それを見た俺は少しだけ、ヘルマンを幻滅する。
「そ、そうですか………。」
俺の反応を見たのか、ヘルマンは咳払いをする。
「えー、申し訳無い取り乱してしまって、まあ能力は不明なものを除いて、これ位しか分からなかった。」
ヘルマンは持っていた紙を筒状に丸め、俺に渡す。
「ホラ、この紙は大事に持っておけ、それはニホンジンとして自分の証明になるからな。」
俺はその紙を小さく折りたたみ、自分が着ていたコートの胸ポケットに入れる。
すると突然何かを思い出したのか、ヘルマンが「あっ!」と大きな声を出す。
「そういえば、君もエトルリア側にも紹介したいからパーティーに出席すると良い。」
「お、俺がですか?そんな所に俺が来ても大丈夫なんでしょうか?」
俺は心配そうな声でヘルマンに尋ねる。
するとヘルマンはじっと見つめて、そして深い溜め息を吐く。
「安心しろ。異世界人が来ても、嫌かもしれないが会場で好奇な目で見られるだけだ、君には悪さはしないだろう。」
「………わ、分かりました。」
俺はヘルマンの言葉にコクッと軽く頷く。
まあ、仕方無いことだ。
という事は俺は代行だが君主になるのか。
………待てよ、いくらなんでも早すぎるだろぅぅ!!
まだ来て二日で君主は早い。
それに怪しい、怪しすぎる。
政治をやった事が無い高校生の俺より他に出来る人が居るはずなのに………。
まあ、ゲルマニアが混乱しているから仕方無いのだろう。
すると突然、ヘルマンは俺をじっくり見る。
「うむ、やっぱり早く着替えてエトルリア側にも紹介しよう。その身なりでパーティーは………あまりにも不潔だからな。鍵を渡しておこう、1004号室は君用の部屋だ、勿論君のサイズに合うウェストコートを用意している。」
すると、ホテルの鍵をほいっと軽く投げる。
俺は突然投げられたため鍵を床に落としそうになるが、何とか鍵を捕まえる。
「おっと、あ、ありがとうございます!」
俺もヘルマンに言われたことを気にして自分の格好を見る。
まあ、ジープに置いてあった少しボロボロのスーツだもんな。
「失礼しました。」と、そう言って俺はすぐさまその部屋を出る。
扉を開け、前を向くとヴァイスがそこに居た。
ヴァイスは涙目になりながら、こちらに向かって走って来る。
この階の全ての部屋がゲルマニアの外交官達に貸切してるからといって走るなよな………。
俺はそう呆れていると、ヴァイスは俺を見つけたのか、こちらに向かっていきなり俺に抱きつく。
俺はヴァイスの突然の行動に驚きを隠せなかった。
「うわ!?どうしたのヴァイス?」
俺はそう聞くと、ヴァイスは震えながら答える。
「へへへ、変態に襲われてるのですぅうううううう!!!」
「へ、変態だとっ!?」
すると、奥の部屋からゆっくりと誰かが現れ、顔を出す。
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