一口ショートホラー 【怖噺(こばなし)シリーズ】 (一話1000~3500文字前後)

@eleven_nine

1 【第軼(いち)話】 (約700文字) 【なかから】

【一口ショートホラー】

【1 第軼(いち)話】


【なかから】


 ある小学校での話ですけどね。

 やったことある人もいるんじゃないですか。黒板をひっかいて遊ぶこと。そのとき音が出るじゃないですか。

 ギイーッ、って。

 わたしね、苦手なんですよ、あの音。

 ギイーッ、ギイーッ。

 不安な気持ちになるんですよね、なんだか。

 ギイーッ、ギイーッ。

 その日もね。音がしたんですよ。お昼休みに。

 それを聞いた女子がね、少し怒ったような呆れたような口調で言ったんですよ。

 だんしー、やめてよー、こくばんひっかくのー。

 むっとした感じでね、男子が答えたんです。

 なにいってんだよ、だれもそんなことやってねえよ、なあ?

 うんうん、と、その子の周りにいた友達もみんなうなずきました。

 でも音は鳴っている。

 それじゃあ誰が鳴らしているんだろうって、不思議に思ってね。女子も男子も、クラスにいた子たち、みんなが黒板を見たんです。

 鳴ってるんですよ、音。

 誰もいないのに。何もやってないのに。

 音だけが。ひとりでに。鳴ってるんですよね。

 それも。


 こくばんのなかから。


 みんな悲鳴上げてね。かわいそうに。全員教室から逃げ出していっちゃいましたよ。

 怖いですよねえ。いったい何がいたんでしょうねえ。

 あの中に。


 え?

 誰からそんな話を聞いたのかって?

 いえいえ。聞いたわけじゃありませんよ。

 あー、はいはい。そうですそうです。見たんですよ。この目で。

 あれ? どうしたんですか? そんな顔して。

 え?

 わたしですか? どうしてそこにいたのか、って? 学校関係者でもないのに?

 ハハッ。

 いやだなあ。

 最近いろいろと物騒ですからね。

 見守っていたのに決まっているじゃないですか。

 ほら、あの、教室の後ろの方にある。

 掃除用具を入れる。




 ロッカーのなかからね。



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