人嫌い、実家へ帰る

「面倒。」


「にゃー。」


その日秀人はバイトを休み、両親がいる家へ向かっていた。それは昨日電話にて。


「おう秀人。学校の様子とか聞きたいし、タマちゃんと遊びたいから2人でこっち来れるか?」


「嫌だけど。」


「母さんも顔が見たいとさ。」


「僕は本が見たいかな。」


「小遣いやるよ。」


「それを先に言いなよ。」


「じゃあ昼頃、駅に迎えに行くから。」


「仕事じゃないの?」


「休みだっつの。」


こうしてタマと両親のところへ帰ることとなり、炎天下な道を歩いていた。


「全く急だし、こんな暑い日に何で呼ぶかな。」


「みゃー。」 


「タマも無理しないでよ。今ダウンされても、僕自身体力ギリギリだから。」


「みゃー。」


「…これで500円とかだった、今後の付き合い方考えようかな。」


「みゃー。」


家から歩くこと15分。途中給水を挟みながら、秀人たちは最寄り駅に辿り着いた。


「おーい。」


「あれ?」


「みゃー。」


「以外と早かったな。お前の事だから、渋って遅く出るかと思ったのによ。」


「約束は破らないさ。それより駅ってここだったのかい?てっきり家近くの方かと思って、少し早く出たんどけど。」 


「みゃー。」


「よおタマ、前に会ったよな。」


「早く乗せてよね。ただでさえ暑いのに、これ以上日差し浴びたら帰りたくなるから。」


「みゃー。」


「分かった分かった。」


迎えの車に乗り、秀人は冷房のありがたさを体感していた。隣でタマも体を伸ばし、お互い快適な空間で休むとした。


「それじゃ出発するぞ。」


「どうぞ。僕は寝るだろうから、着いたら起こしてもらえるとありがたいよ。」


「みゃー。」


「おう。」


普通迎えに来てもらえば話に花が咲き、まず寝る選択肢は消えるだろう。家族付き合いの気楽さゆえか、歩き疲れたか秀人とタマは寝ることにした。


「あーそうだ秀人。」


「…何さ。」


「お前の事探してて、家に来る可能性がある学生知ってるか?」


「なんの冗談さ。僕に友達がいないことも、訪ねる人がいないことも一番知ってるじゃないか。」


「だよな。いやなに、真面目な委員長って感じとお前の舎弟だって人が来てよ。まあ独り暮らし始めましたっとお伝えしたら、ちょっと寂しそうだったからよ。」


「いや勝手に個人情報流さないでよ…そんなに関わった人物、検討もつかないけどね。」


「お前が無関心だっただけで、相手はそうでもなかったんだろうよ。」


「僕には理解できない部分だよ。」


「みゃー。」


「おおごめんなタマ、秀人の声がうるさくてよ。」


「どっちが。」


「みゃー。」


「怒るなって。久しぶりに会ったことだし、そこそこテンアゲってやつだ。」


「…古くない?それに似合わないけど。」


「みゃー。」


「マジか。会社の新人がそんな言葉だったから、今流行りだと思ったのによ。大変なんだぞ?歳が30も違うと、まるで別言語を聞いてる気分だからな。」


「それはレアケースだと思うけど。」


「みゃー。」


「まあ仕事できるし、最近は何言ってるか分かるから良いけどな。」


「え、普段からテンアゲとか使ってるの。敬語はどこ行ったのさ。」


「みゃー。」


「どこだろうな。ほらいるだろ?外から見れば生意気な態度で、到底信じられない奴。それが内になると憎めないだとか、可愛い奴なんて言われるのさ。」


「見た目が良いからじゃないの。」


「みゃー。」


「…お前それ母さんの前で言うなよ。」


「思ったことを言っただけだし、発言の自由あるから。」


「みゃー。」


「まじで頼むって。若い子が入ってきたなんて話だけでも、不安だなんだって問い詰めて離してくれないんだからさ。」


「親の情事は知らないよ、てか気持ち悪いから。」


「みゃー。」


「いやー愛されてるな俺!」


「そのうち刺されるんじゃない?」


「みゃー。」


「まあ未遂はあったから。」  


「…聞かなかったことにするよ。」


「みゃー。」


「その方が良い。母さんその話になると怖いんだ、しかもその時を思い出して眼が変わるからな。」


「下手なB級ホラーみたいな設定だね、親と思いたくなくなってきたけど。」


「みゃー。」


「諦めろ。どれだけ世間を欺こうが、血縁だけは消せないものだ。もう着くぞ。」


「はぁ、結局話し込んじゃったよ。疲れた。」


「みゃー。」


「…お?あれだ。秀人はいないかって訪ね人。」


「は?」


秀人の実家帰りは始まったばかりだ。

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