人嫌い、再会する

「…で?」


「みゃー。」


「久しぶりなのに酷いよ高山くん、中学の頃委員長だった僕、五十嵐陽斗いがらしやまとを忘れたの?」


「お久しぶりです兄貴!屋上の不良、赤野胡蝶あかのこちょうです。」


「なかなか個性的な自己紹介じゃないか、ほら秀人も。」


「何よ秀くん、お友達いたのね。」


「いないのはそっちのがよく知ってるくせに、高山秀人。」


「みゃー。」


「そっちの猫ちゃんは?」


「まさか兄貴の舎弟…胡蝶が一番すからね!」


「タマだよ。あと舎弟ってなにさ、承諾した覚えないんだけど。」


「まあまあ秀人…そうだ。後は若いのに任せて、母さんと買い物いってくるよ。その間に話して、誤解もわだかまりも解きなさい。」


「秀ちゃん根は良い子なんだから、途中でいつもの性格出さなきゃ平気よ。」


「アドバイスのふりして傷つけるとはね、誤解も何も押し掛けられて理解が追い付いてないし。」


「あれ、お母様から聞いてないの?」


「胡蝶ら、何回か兄貴を訪ねに来たっす!でも春から引っ越しで…いなくなってたなんて。そんな時にお母様が連絡先を控えてくださり、今日来ることを知れたっす!」


「「…母さん?」」


「悪かったかしらーおほほー。」


「すまない秀人、今回はこっちが悪い。」


「母さんは何がしたいのさ…」


「だって秀ちゃんを訪ねてきた人よ?レアだと思ったし、会わせるのも面白いかなって。」


「殺したい。」


「頼む早まらないでくれ…後で好きなお菓子買っていいから。」


「そのやり方は小学生で終わりだよ。そうだね…タマ用のキャットタワーで良いよ。」


「親子揃って仲良きっす!」


「あらーそうかしら。」


「頭痛いよ。」


「みゃー。」


「懐が寒い。」


秀人の両親は買い物へ出かけ、この場には顔見知りだけが残る展開となった。


「それで?僕に会う理由ってのは、探しても思い当たらないんだけど。」


「みゃー。」


「そうだよね。何せ高山くん、学校でいくら話しかけても上の空だし。」


「兄貴がフラっと屋上へ現れ、胡蝶らをシメたあの日を忘れたことないっすよ!」


「だからこそだよ。委員長とは会話なんてしてないし、君にしたら殴った本人だけど。」


「みゃー。」


「それがさ…今の学校皆が良い生徒なんだよ。」


「はあ。」


「みゃー。」


「良い学校じゃないですか!胡蝶のところは善と悪、ちょうど半々ですから!」


「いやさ、僕お節介が好きなんだ。」


「…雲行きが怪しく感じるけど。」


突然陽斗は立ち上がり、秀人の方を指差しながら語る。


「高山くん!君は僕の委員長生活において、最も手のかかる逸材なんだよ!」


「…そうですか。」


「みゃー。」


「やっぱ兄貴は凄いっすね!」


「普通は委員長が言うなら…とか、そこまで言われたら頑張る、なんて僕の愛らしいキャラで勝ちを取ってきたんだ!」


「まあパッと見女子だし、男受けも女子受けも良いだろうね。」


「みゃー。」


「…え!五十嵐さん男だったんですか!」


「そうなんだよね。僕は見た目を軽んじず、最大限活かしてきたんだよ。でも高山君には一切通じず、卒業まで何も変えれなかった!」


「僕にとって君の顔は覚える対象じゃなかったし、毎度毎度寄ってくる虫だよね。」


「みゃー。」


「カッコいいっす兄貴!」


「そしていつからか頑張りが君には通じず、むしろ邪険に扱われだした。高校で必ず勝つと決めてたのに…いざ進学したら高山くんいないし!」


「個人の自由だからね、何処へ行こうと僕の勝手さ。」


「酷いっすよ兄貴!胡蝶に一言言ってくれたら、ちゃんと追いかけましたよ!」


「いや迷惑。」


「みゃー。」


「それで僕は君を探してたんだ。」


まだ1人目なのに長い。この後2人目の理由を聞く前に、秀人は休憩をとることにした。

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