人嫌い、満喫する
「やあ高山くん。その顔だと、どういった話か分かってるようだな。」
「どうやらお一人様の僕に、とても気を使っているようですね。」
「そうではないぞ?ただ高山くんと話したいだけだろう。」
「僕は食べに来てるので、話には来てないんですよ。」
「ならば遠慮なく食べると良い、横で勝手に独り言を言うだけにしよう。」
「はあ。」
秀人は宣言通り食事を再開、正子はその横で独り言を言い出す。
「君もだいぶ学校、そして人間関係には慣れたようだな。」
「うま。」
「最初君に会ったのはあのベンチ、気づけば外へ飛び出して食べるようになったものだ。」
「以外と塩もありか。」
「上級生として、最初は君にどうアドバイスしようかと悩んだものだ。」
「後でご飯用意しよ。」
「しかも君と関わり、かけがえなき友もできた。」
「そろそろ網交換してもらお。」
「君は望んでいないだろうが、私は君の腹傷をまだ気にしている。その件も含めて…ありがとう。本当に感謝しかない。」
「…ならおかわりお願いします。あとご飯、それでちょうど良いです。」
「う、うむ!任せてくれ!」
秀人の頼み事を遂行するため、正子は注文のため戻っていった。
「空いた。」
「…主役は向こうだよ。ここは僕一人、のんびりと焼く場所なのさ。」
「そう。」
「だから戻るってのはどう?」
「やだ。」
「めんどくさいなぁ。」
「話す。」
「勝手にどうぞ。」
「先生!注文分届きました!」
「本来は私が渡すのだが…生山くんが譲ってくれなくてな。」
「はいはいどうも。」
「では!」
「次は林くんか。」
「頑張る。」
「いただきます。」
「聞いて。」
「ああ聞いてるから、適当に話して。」
「むう。」
「…やっぱりご飯も良いな。」
秀人は相変わらず、林も諦め一言ずつ紡いでいく。
「楽しい。」
「この集まりが?それは良かったじゃないか、みんなで楽しんできなよ。」
「秀人も。」
「僕も楽しんでるよ?1人でいる時はね。」
「私は、みんなで楽しい。」
「あー聞かないやつね。」
「うん。」
「うわ認めたよ。」
「あっち。」
「向こうの集まりに来いって?ご冗談を、端で一人空間を手に入れてるからこそ僕はいる。」
「知ってる。」
「無茶苦茶言ってると思うけど。」
「伝える、苦手。」
「二言まで進んでるし、そのうち話せるんじゃない?」
「おかげさま。」
「僕の?」
「雨の日から、いろいろ。」
「本当、傘を貸すんじゃなかったと思う。」
「助かった。」
「僕としては逃げの一手だったんだけどね。」
「それでも。」
「はいはい。」
「友達できた。」
「それは何よりだね、その繋がりを大切に。」
「秀人も。」
「そこは外してほしいんだけど。」
「無理。」
「ちっ。まあいいさ、諦めはついてるから。」
「秀人。」
「何さ。」
「これから、よろしく。」
「お断りします。」
林は言いたいことを言い切ったようで、秀人から離れていった。残った秀人は無心で肉を食べ続け、気づけば終了時間になった。
「秀人ーもう帰るよー。」
「あれ、もうそんなに経った?」
「秀人はーお肉にー夢中だったからねー。」
「…いつから隣にいたのさ。」
「んとねーりんりんがー戻ったときからー。」
「ずっと横にいたわけ?」
「そだよーたまにーお皿にお肉ー乗せてたよー。」
「嘘じゃなくて?」
「本当だよー。」
「連続で喋られて、疲れてたんだよ僕も。気づいてたら、脱兎のように逃げ出したのに。」
「でもでもー真剣に焼いてるー秀人の横顔ーおもろかったよー。」
「ああはいはいそうですか。」
「んでねーウチが最後だしー言うことー考えたんだけどー。」
「無理にひねり出さなくても、どうせ他同様感謝でしょ。」
「えーとねー…これからもー仲良くねー。」
「仲良くしたくないんだけど、どうしたらいいかな。」
「そりゃー転校とかー飛行機に乗ってー。」
「つまり逃亡以外、僕とは仲良くするつもりだと。」
「どのみちーバイト先でー会うもんねー。」
「いや、逃げるならバイトも変えるよ。」
「…そだねー。」
「まあバイト先の先輩ってことで、今後は適切な距離をとろうかと。」
「と言うとー?」
「まず敬語でしょ。それに近づきすぎず、ご機嫌を損ねないよう」
「そんなこと考えるー悪い頭はーこれかーうりうりー。」
「分かった止めるから離せ今すぐだ。」
「はーい。」
「先生!そろそろ帰りましょうか!」
「…会計…あるし。」
「ひ、1人3000円だったよね。」
「うむ。この人数だ、1人に渡して任せるとしよう。」
「了解。」
「一応ぴったりあるけれど、お釣りは出ないように気を付けましょう。」
「別にーお釣りで揉めるほどー仲悪くないよーウチらー。」
「まあ、会計を頼んでるし。そこまでの金額じゃなければ、面倒にならないでしょ。」
「…じゃあ…よろ。」
「先生!お願いします!」
「ちょ、ちょうどあるよ。」
「では頼んだぞ高山くん。」
「委託。」
「私たちは外で待っているから。」
「んじゃーよろしくねー。」
「え。」
秀人の手には人数分の現金と伝票、周りには誰もいなかった。
「…行動が早いね。」
受け取ったもので会計も済ませ、外に出た秀人。待っていた麗華たちと合流し、帰宅することになった。
「…それじゃ…またね。」
「皆さん!夜道にお気をつけて!」
「ぼ、僕なんか襲っても無一文だよ…」
「安心すると良い。岸辺くんの方面へは、私と林くんもいる。」
「護衛。」
「じゃあ私は…あなた達とかしら。」
「…行こっか。」
「お任せください!」
「ばいばーい。」
「でもこれでイベント消化したし、休み明けまで何もないよね?会う必要なくな」
「「また今度!」」
「…帰ろ。」
「帰ろっかー。」
「そういえば同じ方面だっけ、忘れてたよ。」
「酷いなー秀人はー。」
「他人の事記憶するより、安売りスーパー覚える方が徳になるからね。」
「んもーちゃんとー守ってよねー。」
「必要ある?」
会話もそこそこに、秀人は途中で心愛と別れ家に着いた。
「ただいま。」
「みゃー。」
「ああごめんね、留守番ありがとう…そうだ猫缶忘れてたよ。」
「みゃー。」
「…ごめん。精神的疲労が凄いから、明日でもいい?」
「みゃー。」
「本当にごめんね、タマもご飯にしようか。」
タマも食べ終え、いつもより長めに風呂に入った秀人は即寝た。そんな秀人のスマホに来ていた通知など、知るよしもない。
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